『「批評」の言葉をためる』中学校・国語~読解と実践で理解を深める~・授業作成編

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目次

1 はじめに

私が実践した、中学校の論説文『「批評」の言葉をためる』(光村図書 国語3)の授業案について書いている。『「批評」の言葉をためる』は竹田青嗣氏の『中学生からの「超」哲学入門』を書き改めたものだ。本文中に出てくる「批評」や「自己ルール」などの考え方を、本文の読解とグループワークを通した実践で理解する授業にした。

批評の言葉をためる

  • 教科:国語
  • 学年:中学校3年生
  • 単元:『「批評」の言葉をためる』(光村図書 国語3)

2 授業作成段階

①本文を読んで問いを立てる

まず、自分で本文を読みながら問いを作り、それに対して答えを考える。ここでの本文読解の作業が授業の発問にもつながった。『「批評」の言葉をためる』は4つの大段落に分かれていた。私が考えたそれぞれの問いと答えを以下に書いていく。

1.「批判」から「批評」へ

  • Q:「批判の言葉を持ち始める」ことは、なぜ人間の心の「自由」の開始点だといえるのか?
  • A:それまで(中学まで)は、親や先生など周りの大人から褒められるために、もしくは怒られないようにすることが、行動の基準だった。しかし、そういったことに対して、自分の中で批判を持ち始めるということは、少しずつ自分の価値判断が育ち始めているということだから。
  • Q:本文における「批判」の言葉とは何か?
  • A:不平不満の言葉。感情的な好き嫌いの言葉。
  • Q:「批評」の言葉とはどのような言葉なのか?
  • A:好きと嫌いの理由が入っている言葉。⇒理由が入っていることが重要。
  • A:自分なりの価値判断の根拠を明確にして、物事を評価する言葉。
  • Q:『「批判」から「批評」へ』とはどういうことか?「批判」と「批評」の違いは何か?
  • A:単なる好き嫌いの「批判」から、自分なりの好きと嫌いの理由や価値判断の根拠を明確にして、物事を評価する『批評』になること。
  • Q:「自分を理解する」ために、「言葉を『ためる』ことが重要」なのは、なぜか?
  • A:後の大段落に出てくる「自己ルール」の理解につながるから。

2.「言葉のキャッチボール」の中で

  • Q:「言葉のキャッチボール」とはどういうことか?
  • A:会話の中で、それぞれの感じ方をよく聴き取りながら、互いに主張したり、反論したり、納得したりすること。
  • Q:「言葉のキャッチボール」の中で私たちは何をしているのか?
  • A:相手に届くよい言葉を探す努力と、相手の言い分をくみ取れるよい耳の力を育てる努力をしている。⇒それが「批評の言葉をためる」ということ。

3.「自己ルール」を確かめ合う

  • Q:友達どうしの関係がどう変わってくるのか?
  • A:趣味の合う者どうしではなく、趣味の違いを受け入れ合えるような関係になる。
  • Q:「根拠」を別の言葉で言い換えると?
  • A:理由。
  • Q:「自己ルール」とは何か?
  • A:その人がそれまで生きてきた中で身につけている「よい・悪い」の判断や、美意識の価値判断の根拠のこと。
  • Q:「感受性のメガネ」は何を表しているの?
  • A:自己ルール。
  • Q:「メガネをかけている」は何を比喩として表しているの?
  • A:無意識に「自己ルール」という自分自身の価値観をもとに、社会を見ているということ。
  • Q:批評し合うことを通して、私たち自身や私たちの「自己ルール」はどのように変化していくのか。
  • A:さまざまな他者の「自己ルール」と自分の「自己ルール」との違いを少しずつ理解して、自分の「自己ルール」のありようを自覚し、了解する。互いの「自己ルール」を、常によりよい形に編み直していくことができる。

4.言葉の力と感受性

  • Q:自分の感受性を高めていくとはどういうことか?
  • A:物を感じていく力を養うということ。
  • Q:批評の言葉の力を育てていくために必要なことは何か?
  • A:できるだけたくさんの優れた文章や小説に親しむこと。自分の考えをどう伝えるか以上に、人の言葉や言い方をよく聴き取ろうとする気持ちを持つこと。

 

②実際の授業を想定した発問の整理

上記の問いと答えから授業で扱う発問をまとめる。

③語句の抜粋

教科書の下部に掲載されている語句以外にも、大切な語句や生徒の分からなそうな語句を調べておく。

④ネットで指導案を調べる

『「批評」の言葉をためる 指導案』などのキーワードで参考になりそうな指導案を調べる。それぞれのやり方があるので、自分にはない視点も取り入れられる。

⑤授業の目的(生徒に何を学ばせたいか)を考える

教材を通して何を学ばせたいか考える。よく教科「を」教えるのではなく、教科「で」教えるという話を聞く。『「批評」の言葉をためる』では、論説文の読み方に重点を置いて教えるか、内容に重点を置いて教えるか、の2つパターンがあるだろう。『「批評」の言葉をためる』は内容自体に大きな価値があると感じ、教科「を」教える、内容に重点を置いた授業を作ることにした。「批評することの大切さに気づく」「人と言葉のキャッチボールをすることによって、自分の価値観が少しずつ変化したり、固まってくる」ということを学んでもらうことを目的にした。

⑥授業の進め方を考える。

本文の読解をどのように進めるか。今回は内容重視なので、「批判」「批評」「言葉のキャッチボール」「自己ルール」などがどういう意味なのかはしっかり理解させたいと思った。まず読解のためのプリントを作ってみた。それまでは、どのように読解させれば良いか分からなかったが、プリントを作ってみたことで、授業の全体像が見えてきた。

⑦授業の目的に沿ったまとめを考える。

最初は筆者の考えをより理解させるために、本文全体の要約を作らせようと考えていた。ただ、それだけだと面白くないので、「批評」や「言葉のキャッチボール」をある題材を使って実践してみようと考えた。そこから、題材に値する資料をかなり調べた。最終的には、「勉強って?」という朝日新聞の投書欄を使って実践をすることにした。

3 関連記事

⇒指導案や生徒の感想・コメント、授業の振り返りなどを掲載している。

4 編集後記

この実践は、教育実習で行った授業内容だ。これまで単発で国語のオリジナル授業を行ったことは何度もあったが、教科書を使用した授業で本文読解が中心の授業を起こったことはほとんどなかった。教育実習では、「本文を読解して概念や考え方を学び、まとめとして学んだ概念や考え方を別教材を使って実践し、理解を深める」という授業の型ができたのが良かった。EDUPEDIAに投稿して振り返ることができたので、今後教員になった時に、生かしていきたい。

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