「発達障害支援法」改正 わかりやすく、押さえておきたい7つのポイントまとめ

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目次

1 はじめに

現在、学習障害(LD)注意欠陥多動性障害(ADHD)等、学校教育や学校生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童生徒が、約6.5パーセント程度の割合で通常学級に在籍していると言われています。

2016年5月に改正された「発達障害者支援法」には、先生方などにとって画期的で大切な事が盛り込まれています。まずは法にどのようなことが書かれているのか、その上で子ども達とどう向き合っていくべきなのかを、一緒に考えていきましょう。

※この記事は、LITALICO発達ナビのホームページに掲載されている記事をピックアップし、許諾を得た上でEDUPEDIA向けに再編集して転載したものです。

元記事:「発達障害支援法」改正、押さえておきたい7つのポイントまとめ(→検索)

2 「発達障害支援法」改正−何が・どう・変わったのか

○ようやく本格化した発達障害者支援政策

2016年5月、「発達障害者支援法」が改正されたことをご存知ですか?

元々、この法律が施行されたのは2005年。ほんの10年ちょっと前のことです。「発達障害者支援法」が施行され、発達障害は初めて支援すべき対象とされました。
それまで、発達障害者への支援は、知的障害者施策の一部に過ぎず、支援の対象となるかどうかは知的障害があるかどうかで判断されていました。

つまり、高機能自閉症をはじめ、アスペルガー症候群学習障害(LD)注意欠陥多動性障害(ADHD)など、知的障害を伴わない発達障害は、支援の対象外だったのです。

しかも知的障害を伴わない発達障害は、知的障害を伴う発達障害と区別するために「軽度発達障害」と呼ばれ、「軽度」とつくことで「軽い障害」と誤解されていたことも、支援を難しくした一因かもしれません。

○「発達障害者支援法」、改正して変わったこと

今回の「発達障害者支援法」改正のうち、重要なポイントは、

1.発達障害者の支援は「社会的障壁」を除去するために行う

2. 乳幼児期から高齢期まで切れ目のない支援。教育・福祉・医療・労働などが緊密に連携

3. 司法手続きで意思疎通の手段を確保

4. 国及び都道府県は就労の定着を支援

5. 教育現場において個別支援企画、指導計画の作成を推進

6. 支援センターの増設

7. 都道府県及び政令市に関係機関による協議会を設置

の、7つです。

※法律第六十四号(平二八・六・三) ◎発達障害者支援法の一部を改正する法律(→検索)

○発達障害を支援するのは社会の責任

その中でも1番のポイントは「1.発達障害者への支援は社会的障壁を除去するために行う」という、基本理念が追加されたことだと思います。

「社会的障壁を取り除く」—簡単に言うと、私たちが日ごろから取り組んでいる「環境調整」による支援を社会の責任で行いましょうということです。

原因を発達障害のある人の特性そのものに求めるのではなく、適さない環境に問題があるという捉え方です。

発達障害者が適応できないのは、周囲の工夫や配慮が足りない状況が原因で、それを社会の責任として問題解決を図るという考えです。

また、そのほかにも

・普通級に通う発達障害児も、学校と連携して支援計画や指導計画を作成する

・就労支援だけでなく、就労定着支援を求めていく

と言うような、ライフサイクルによってピンポイントで求められる支援があります。

そして、

・乳幼児から高齢期まで切れ目なく支援が受けられる

・もしものときは、司法手続きを申請できる

など、困ったときのために認識を持っておいたほうが良い支援もあります。

また、自分たちの地域で支援センターは増設されたか?
関係機関による協議会はどんな形で設置され、機能しているのか?

など、行政の問題で、自分たちに直接は関わりがないと思われるような改正点にも、関心を持っておく事が大切かもしれません。

○法律はできた。でも…

しかしながら、法律が施行されたからと言って、劇的に何かが変わるわけではありません。そして同じ法律でも、地域によって捉え方の温度差や格差が生じてしまうという事情もあります。つまり法律が出来ても、それが意味あるものにできるかどうかは、そこに住む人間の課題になるのが現状です。

※改正発達障害者支援法概要(→検索)

私たちにできる最初の一歩は、まず知ること。
法律はできました。そこから先は当事者の権利を守るべく、発達障害に関わる人たちがよりいっそう適切な支援を求め、正しい認知や理解を求めていく事が大切です。

3 転載元プロフィール

LITALICO発達ナビ

LITALICO(りたりこ)発達ナビは、ADHD(注意欠陥・多動性症候群)やアスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)含む広汎性発達障害に分類される発達障害またはLDなどの学習障害、その他の発達障害が気になる子どもの親向けポータルサイトです。

※LITALICO発達ナビ(→検索)

4 編集後記

「発達障害者への支援は社会的障壁を除去するために行う」ことは、「発達障害支援法」改正にあたって抑えておきたいポイントです。特に、社会と発達障害の間に隔てられた障壁の原因は発達障害の特性にあるのではなく、社会における適切な支援と、正しい認知や理解の普及が進んでいないことにあります。
(発達障害に対する認知は自分たちの生活と関わりがない)と思われる方もいるかもしれませんが、皆さんの正しい認知と合理的な配慮が、発達障害者の生活をより豊かにすることを、心に留めてほしいと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 大山 瑞稀)

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↑上記リンク先の記事では、「障害のない社会をつくる」をビジョンに掲げる株式会社LITALICOが主催した、教育実践フォーラム(2016年6月26日)の内容を紹介しています。

(2022年7月25日 タイトルを『「発達障害支援法」改正、押さえておきたい7つのポイントまとめ』より変更)

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