支援ニーズのある子どもの家族支援と環境づくり ~LITALICOジュニア 教育実践フォーラムに参加して~

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作成者:岡本 笑 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事では、教育・医療・福祉関係者など子どもの支援に関わる人を対象に、2016年6月26日に開催されたLITALICOジュニアが主催した教育実践フォーラムの内容を紹介しています。今回は、「家族支援」をテーマに、講演やパネルディスカッションだけでなく、講師が直接参加者からの質問に応えるコーナーもある参加型のフォーラムとなりました。

教員をはじめ、医師などの支援者や保護者の視点も取り入れた内容にもなっています。今回の記事で紹介する実践や子どもを取り巻く環境の作り方など、いま教室で問題に直面している人にもそうでない人にも有益な情報がたくさんつまったフォーラムです。

株式会社LITALICOは、「障害のない社会をつくる」をビジョンに掲げ、社会問題に向き合おうと2005年に創設されました。障害とは人ではなく、社会の側にあるという信念のもと、人々の多様な生き方を実現する環境づくりを行っています。詳しくはこちらをご覧ください。
株式会社LITALICO
LITALICOジュニア

2 フォーラム内容

(  )内は話した方の名前(敬称略)。プロフィールについては3をご覧ください。

インクルーシブ教育と合理的配慮の取り組み(野口)

知っていますか?…障害者差別解消法

2016年4月から障害者差別解消法が施行された。この法律では、共生社会の実現を目指している。共生社会とは、人間の多様性を尊重し、障害の有無にかかわらず社会に参加できるようにすることである。また、大人が共に学ぶことを最大限に追及し、その子どもたちが学び、積極的に参加できるような社会である。

合理的配慮とは

学校教育における合理的配慮とは、どんな子どもであっても学びにアクセスする権利を保証することだ。つまり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの、特性に合わせて特別扱いを正当に認める(学校等に過度の負担を課さないもの)ことである。大切なポイントは合理的配慮以前に基礎的環境整備をすることだ。前提として、学校の中で障害を持つ子どもの教育に対する専門性のある指導体制の構築、ユニバーサルデザインの施設、教材の使用などが必要になってくる。また、それぞれの学校で基礎的環境整備がどれくらい進んでいるのかを把握する必要がある。例えば、うちの自治体はどのくらいのお金があるのか、支援員をどれくらい派遣できるのか、などである。そして、自治体によって基礎的環境整備の状態は異なるため、受けられる合理的配慮も異なってくる。

何はともあれ、一番大切なことは子どもを中心に見据えた支援を行っていくことである。

基調講演・演習「支援ニーズのある子どもの親とのコミュニケーション」(井上)

本人に対する支援だけでなく「家族支援」が重要

支援ニーズのある親と子どもたちの間では、コミュニケーションのずれが生じてしまうことが多い。親が相談機関を訪ねても具体的なアドバイスが得られなかったり、家族の協力が得られなかったりなど、様々な問題がある。本人のニーズも支援のニーズも時期によって変わってくるため、早期の家族支援が重要である。いくつかの特性、特徴はあるが、診断までいかない子も多い。診断の有無では無く、ニーズがあるかどうかで支援を決めるべきだ。「家族支援」は診断有無によらず可能であるため、家族支援を行うことで本人支援が可能になる。

早期家族支援でできること

早期家族支援では個別の領域で支援することも出来る。例えば、障害者の子どもたちを育てた経験のあるペアレントメンターに相談して、悩みを解決することも可能である。この早期家族支援は学校適応が目的ではない。子どもの苦手なことに注目しがちであるが、大事なのは子どもの強みを見てあげることである。子どもたちは得意なことがあると苦手なことも頑張れるようになるからである。

「障害受容」とは

「障害受容」とは、障害を受容しやすい環境をつくることである。障害を受容できない人に対してもその人の心を理解すること、受容されない苦しみを分かってあげることが大事である。

気持ちに寄り添い、相手の意見に耳を傾ける

学校の教員向けの講習は講義を受けるだけではなく、数人のメンターを呼ぶことが必要だ。メンターから体験談を聞くことで、親の気持ちに寄り添っていくことが必要。相手の意見に耳を傾けることで良好な関係を築くことができる。

また、親自身が子どもをうまく守れない状態などのケースは、地域の中で孤立しないように地域社会で支えていくことが重要だ。

問題に関わる人全員で協力すること

担任だけではなく、学年、学校、地域全体で課題解決のために体制を整えることが重要である。

パネルディスカッション「日本の親の支援の現状と課題~多様な視点から」

北欧の「家族支援」(石田)

以下5つは北欧における教育や福祉の特徴である(各国とも日本の県のレベルの人口)。

  • 移民が多く、一人ひとりが違うという考えがある
  • 家族のスタイルが日本よりも多様である
  • 市や学校の裁量による部分が多い
  • 条例、規定として明記されていない場合が多い
  • 実践しその経過を見て、どんどん変えていく

フィンランドではネウボラという子育て支援を行う施設があり、そこに子どもに関する情報が集中するようになっている。小学校の教師や、病院の医師が情報を書き込み、中学校へ、高校へといったようにどんどんデータが蓄積されていく。このように小さい頃からのデータが蓄積されていることで環境づくりが楽になる

北欧では学童保育の先生や小学校の担任など関連のある人で集まり、話し合いが行われる。子どもを取り巻くネットワークの連携が強いと感じる。だが、日本では、教師と保護者、学校と教育委員会のように二方向の連携が多い。

では私たちにできることは何なのか。まずは保護者と支援者が双方の考えを理解し、協力して問題に向かっていくこと。次に、学校や教育委員会を巻き込んでその活動を行っていくこと。大切になるのは、その子がどれだけ「いきいきと生きていけるか」である。

環境づくりとネットワーク(田中)

支援の対象者は当事者の子どもだけではない。その家族や先生も対象者である。大切なのはそういった方たちの「気持ち」をつかむことである。

発達障害支援というのは日々の生活を応援すること。障害とよべる特性を克服する、直すということではなく、特性をどうしたらよく展開できるか。短所を長所に変えていくことである。また、時間を味方につけることも重要。明日どうにかしようではなく、1年かけてみていくという気持ちが必要である。

アメリカの療養システムのつながり(末吉) 

アメリカと日本の診断は大きく違った。アメリカでは、システムがすごく整っている。療育というより、診断されてから成人になるまでのシステムにすごくつながりがある。日本でもこういうところのシステムが整っていると悩みも半減できるのではないかと思う。

学校の情報伝達の壁(井上)

学校という組織で情報を伝達しようとすると、学校間の伝達などにものもすごく壁がある。たとえば、小学校から中学校にあがるときにきちんと情報が伝達されないなど。

情報をオープンにするメリットとデメリット(田中)

クリニックで診断を行っていると、情報をオープンにすることで、子どもが幸せになるという発想がある一方で、障害という事実が広がってしまうという不安を持っている保護者もいて、学校には一切伝えないという場合もある。これらは地域差や子どもの気持ちもあるため、一概には言えないが、それでも少しずつオープンにしていくことで、楽になるということを伝えていくのが第三者の我々の仕事だと思う。
 

親1人で抱え込むということは非常に危険(末吉)

自分一人で抱えている場合は半歩先も見えない状態になり、ストレスがかかってしまう。だからこそ、親一人で抱え込むということは非常に危険性がある。無理な指示を出すのではなく、今できること、今できていることなどを、子どもの成長を一緒に見守るような形で支援する心がけが必要。

3 登壇者紹介

株式会社LITALICO 代表取締役社長 長谷川敦弥

2008年名古屋大学理学部卒。2008年5月、株式会社LITALICOに新卒として入社し、2009年8月に代表取締役社長に就任。

株式会社LITALICO 執行役員 インクルーシブ教育研究者 野口晃菜

小学校講師を経て、2012年12月に株式会社LITALICO入社。2014年4月に執行役員、LITALICOジュニア事業部副部長に就任。現在、筑波大学大学院博士課程に在籍し、インクルーシブ教育の研究を進めている。

鳥取大学大学院教授、LITALICO研究所所長 井上 雅彦先生

応用行動分析学を理論的基盤として障害や不適応状態について「環境」と「個人」両方向からの心理的支援や教育を研究。ペアレント・トレーニングシステムなどの支援プログラムの開発をはじめ、著書も多数。

東京成徳大学 応用心理学部 福祉心理学科 教授 石田 祥代先生

博士(心身障害学)。現在「学齢児の支援システム」「特別ニーズ保育の家庭支援」「デンマークのインクルーシブ教育」等を研究。主な著書は「特別支援教育ハンドブック」(東山書房2014年)など多数。

北海道大学名誉教授、「こころとそだちのクリニック むすびめ」院長 田中 康雄先生

児童精神科医。2016年より株式会社LITALICOのアドバイザーに就任。主な著書は「支援から共生への道」(慶応義塾大学出版会2009年)など多数。

一般社団法人そよ風の手紙 副代表 末吉 景子先生

重度知的障害と自閉症をあわせ持つ17歳の息子をはじめ3人の子を持つ母親。アメリカで本格的なABA療育を学び、帰国後もABAセラピストとしての活動を行う。現在「すまいるスペースそよ風の手紙」で療育を行っている。著書は「えっくんと自閉症」(グラフ社2009年)。

4 編集後記

障害の有無や程度に翻弄されることなく、子ども達が自分らしく生きるためには、合理的配慮が必要であることを学びました。また同時に、自治体の制度によって地域ごとに受け入れられる合理的配慮が異なるため、障がい者に向けられた支援の程度にも地域によって格差が生じるということも知りました。子どもの年齢によって本人のニーズも支援のニーズも変わる中で、子どもとその家族にとって必要な配慮を考えることの難しさを知ったことはとても大きな収穫だと感じています。(EDUPEDIA編集部 大山)

もっと障害を持った子どもに関する認知を広げる必要があると思いました。子どもの特性を生かすためには、LITALICOジュニアでも取り組んでいるように、学校や家庭と連携して子どもを中心としたチームを作る必要があり、学校や家庭の理解・協力が必須だと感じます。(EDUPEDIA編集部 藤田)

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