校務支援システムの導入と運用

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目次

1 校務支援システムの導入

教員にとって大きな負担になっていることの一つに、あゆみと指導要録の記入作業があります。この2つの難関を上手にクリアしてくれる業者があると助かります。ところが業者と言っても、どこの業者の校務支援システムがすぐれているのかを見分けるのはかなり難しいことです。使い勝手の良さは、導入をしてみないとわからないからです。
業務改善、情報セキュリティーという2つの目的で、校務支援システムの導入が各自治体で進んでいます。導入はしたものの、「使い勝手が悪い」「あまり業務改善になっていない」等の声が聞こえることも多いです。コンピュータを使う際にはけっこう細部でちょっとしたことが負担になることが多いです。改善を要求しても対応してくれる業者と対応してくれない業者があり、後者であれば多くの末端にいる教員がしんどい思いを抱え続けなくてはなりません。
大きい自治体であればとんでもなく大きな予算を動かさなくてはなりませんし、小さな自治体であれば大きな予算を動かすだけの余裕がない場合も多いでしょう。大手企業が提供しているシステムが必ずしも便利かどうかはわかりません。教育委員会のどこか情報関連の部署が業者を選定することになると思いますが、よほど慎重に選ばないと、一般教員が数年間、使い勝手に苦しむ結果になりかねません。先行して導入している自治体へのヒアリングを教育委員会がしっかりとして、本当に使いやすいシステムを導入する必要があります。教育委員会の責任は重いと思います。低価格で細かい改善に応じてくれる業者もありますので、業者の選定は重要です。予算とのバランスも考えて、先行して導入している自治体に評判を確かめてから業者選定を行うべきです。大手の業者に法外に高いシステムの導入をさせられてしまうのもまずいですし、反対に、安いけれど穴がたくさんあるシステムでは困ります。業者選定の際に、ユーザーである教員が使いやすいシステムになるようにカスタマイズに付き合ってくれるかどうかをしっかりと確かめておくことが肝要です。

2 どのように校務支援システムの導入を進めるか

校務支援システムと言っても、その導入状況は自治体によって異なり、システムで取り扱う業務内容の範囲も多様で複雑です。自治体によってはその導入・調達の進め方をどうやってよいのか見当がつかないというケースもあると思います。文部科学省から校務支援システムに関するかなり詳しくてよくわかる資料(平成28年3月・暫定版)が出されています。

校務支援システム導入・運用の手引き

ちなみに神戸市の小中学校では平成28年度に先行導入、平成29年度に第二次先行導入、平成30年度に全校導入と、三段階での導入を試みています。人口の大きな自治体であるため、慎重に機能をチェックしながら導入を進める方針です。システムはサイバーリンクス社が構築しています。教育委員会総務課が業者と打合せを行いながら、システムの改善を進める形をとっています。

サイバーリンクス社

校務支援システム導入時に必要なのは、導入によっていかに現場が業務改善されるかどうかをPDCAサイクルで回していくことです。下手な導入をすると教員の負担増にもつながりかねません。現場からの使い勝手に関する声が業者に届く形を作るために、計画段階から教職員組合もかんで導入を進めていくことが肝要です。上記、文科省の運用の手引きで推進組織について書かれている部分には「教職員組合」は入っていません。何らかの形で導入推進組織に現場からの声を聞き入れる窓口は絶対に必要です。また、導入による効果測定も大切であると思います。

3 押印文化を省く

要録を保存する時には、「電子保存」とするのがよいと思います。押印は省き、その代わりに書き換えや保存の権限を厳格にすればよいと思います。いつ・誰が・何のために書き換えたのか、紙で排出したのかを記録しておく機能があれば、事故は起きにくいと思います。法的に押印をせねばならない規則があるわけではないので、あゆみにしても、指導要録にしても、押印する文化はそろそろやめにしてもいいのではないかと思います。
文科省もサーバーに保存する際に、管理職が決済をすれば、それを押印に替えることにできるという判断を出しています。

表簿・指導要録等の電子化に係る基本的な考え方等について

4 エクセルからのデータ入出力

ウエブ画面からのデータ入力をするシステムも結構あると思います。ウエブへちまちまと入出力するのは、画面の切り替えにボタンを押すなどの作業が多くなります。ことのきに、ウエブ画面からだけではなく、エクセルで作ったデータをアップロードできるようにしておいてもらえると便利だと思います。つまり、下ごしらえの細かい作業はエクセルでしておいて、出来上がったところで校務支援システムにアップロードするということです。この時、気を付けなくてはならないのは、データのずれです。転出や転入があると、出席番号がずれてしまう場合があります。これを防ぐには、データは学籍番号で管理をするという方法です。転出した番号は欠番にしておき、転入生の番号は、最後につけるという要録の学籍番号と一致させておけば、ずれは防ぐことができます。また、エクセルファイルを取り込む際のエクセルの形式を決めておいて、名前ごとアップロードをするようにし、名前がシステム側と食い違った時にはシステムが取り込みを拒否するような仕様にしておくと事故が防げます。

5 大きな予算を動かしにくい場合

自治体によっては、単独で、大きな予算を動かすことが難しい場合もあるでしょう。そんな場合は、他の自治体と共同で校務支援システムの導入を進めてみる(パブリッククラウド・共同調達・・・文科省の手引き参照)のもいいと思います。あるいは、もう成功している自治体にくっつく形で導入するのもいいかもしれません。いずれにしても、校務支援システムの導入の成功は、大きな業務改善になります。是非、現場からも声をあげてもらって、導入を進めていってほしいと思います。

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