コミュニケーション不全症候群

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目次

1 病める社会

「コミュ障」(コミュニケーション障害の略)という言葉がかなり一般的に使われるようになっているようです。この本の題は今の時代を先駆けるようなネーミングだったのではないかと思います。
本書は1995年に発刊された本であり、アマゾンと楽天でチェックをかけると、新書については在庫が切れていました。中古品としてならかなり格安で手に入ります。

公立図書館に行けば、たいてい所蔵されているのではないかと思います。各社、出版事情は難しいものがあるにしても、良書についてはできるだけ版を重ねてほしいものです。ご本人が亡くなられた(2009年)後に、こうした書物が人々に共有され、受け継がれ続けるにはどうやっていけばよいのかは、書籍メディアが抱える課題ですね。特に教育書に関しては、売れる量も限られており、在庫がなくなり、増刷が難しくなるケースは多いようです。

1995年当時、相当社会が病んでいた事を、改めて感じさせられました。そしてそれは現在とも地続き状態であることもまた感じさせられます。

中島さんが事例を挙げて書き進める中盤は事例(JUNE・みどうたつま・拒食症)に詳しくない人や興味のない人にとってはやや読みづらいかもしれませんが、序文と最終章あたりには、共感できる部分がとても多いです。

中島さんは、以下のようにコミュニケーション不全症候群の特徴を書き記しています。

1.他人のことが考えられない、つまり、想像力の欠如。
2.知り合いになるとそれが全く変わってしまう。つまり、自分の視野に入ってくる人間しか「人間」として認められない。
3.様々な不適応の形があるが、基本的にそれは全て人間関係に対する適応過剰ないし適応不能、つまり岸田秀の言うところの対人知覚障害として発現する。

「想像力の欠如」は、村上春樹もよく使っていた言葉です。

周りに壁を張り巡らした狭い世界(あるときは自分ただ1人の世界)にひきこもり、外とはコミュニケーションが取れなくなってしまっている。「互いを思いやる」ということを忘れてしまった貧弱な心のあり方は社会に蔓延してしまっている現代社会について、作者は警鐘を鳴らしています。小学生の間でも、確実にコミュニケーション不全は進んでおり、いかにそうした子供たちに他者との距離感をわからせるようになるかを、教育の場でもじっくりと論議をする必要があると思います。

アマゾンで検索しても、グーグル検索をしても「コミュニケーション不全」と入力するとあまりたくさんの本やサイトは出てきません。どちらかというと、「コミュニケーション障害」という言葉で語られているようです。私は「障害」と言ってしまうより、「不全」を使った方がいいように思います。

中島さんは自分自信も含めて、現代に生きている人は総じて「コミュニケーション不全症候群」であるとも書いていました。作者が本書で書き綴った現代社会の歪を20年が過ぎた今だからこそ、検証してみる価値があるかもしれません。

2 SSTを取り入れる

今では「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」で検索すると多くの本やサイトが発見されます。これらの多くは発達障害に対するトレーニングとして扱われていますが、中島さんのおっしゃる通り、現代に生きている人は総じて「コミュニケーション不全」であると考えて、健常児も含めて日ごろからSSTを取り入れた活動を意識的に導入するようにしていければよいと思います。

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