これから自分が向き合いたい・探究したいテーマ(問い)って何だろう?

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目次

1 はじめに

この授業は、NPO法人ROJE(日本教育再興連盟)の高校学習支援プロジェクトが、佼成学園中学校の3年生(高校0年生)を対象に実践したものです。2016年9月~2017年2月に渡って行った全12回の授業のうち、この記事では第11回目と第12回目をご紹介します。
※佼成学園中学校の「よのなか科」の授業の中では、中高一貫で高校に進学する中学校3年生を、「高校0年生」として捉え、授業を行っています。

2 授業内容

 テーマ

これから自分が向き合いたい・探究したいテーマ(問い)って何だろう?

 テーマ設定の背景

2016年度のよのなか科全体テーマは、『「なんとなく」をなくそう』でした。そして高校生活を生き生きと過ごしてほしい。そこで欠かせないのは、「テーマ(問い)」であると考えました。
 自分が何か好きなものにとことん夢中になるにも、自分を良くしようと思ったり、現状を変えたいと思ったり、部活や行事や勉強や人間関係で悩んだりしたときに向き合うにも、そもそも何がしたいのかに気づくにも、「問い」をもてるかがカギを握るのではないでしょうか。
 今、生徒が何か問い(考えたいこと・違和感や不満・生きづらさ・やりたいこと・意志etc.)をもって生きているかどうか定かでなくとも、それを大事にして日々、今この瞬間を生きていってほしいという想いで、最後2回の授業をデザインしました。

 授業の目的

「なんとなく将来はこんな感じ、で、大学、高校はこんな感じ」から一歩進んで、何かしらの目的意識をもってよのなか科から羽ばたいていくための授業
▽内省的なワークを通して、自分なりの道「テーマ(問い)」を浮かび上がらせる。

 目標

✓ワークシートにある問いに応えていくことで、自分がこれからどんなことに向き合っていきたいかについて気づきを得る。
✓そこからテーマ(問い)を編集する(紡ぎ出す)。
✓自分のテーマ(問い)を理由・想いとともに、発表する。
  ⇓
① 何をするかが明確で、生徒が取り組みやすい状態になっている。
② 最終的に、何かしらのテーマ(問い)を言語化できている。

 評価

①【探求する姿勢】⇒ ワークへの取組の様子を観察する。
 A:集中して自分で考えながらどんどん書き出している。
 B:考えているがなかなか書き出せない模様。要サポート。
 C:何をしていいかよく分からず、あまり考えていない模様。特に要サポート。
②【自己表現の姿勢】⇒ 発表内容に耳を傾ける。適宜質疑応答。Passion重視。
 A:切実感、本気さ、「自分事」感が伝わってくるものになっている。考えや理由等がしっかりある。
 B:テーマは明確だが理由の説得力がイマイチ。/理由はよく考えられているがテーマがイマイチ。
 C:ひとまずテキトーに書いた、という感じ。理由もそれほど考えられていない。

 授業構成

【第11回】
Ⅰ導入:前時以前と本時のつながり、本時のゴールを説明する。
Ⅱワーク(A&B)説明:大学生の例を示す。
Ⅲ個人ワーク(A&B):ワークシートに記入しながら考えさせる。
Ⅳワーク(C)説明:大学生の例、思考の流れや方法を示す。
Ⅴ個人ワーク(C):内省し考え記入させる。
Ⅵ次回予告:次回発表できるように準備しておくことを伝える。
【第12回】
Ⅶ発表準備:最終準備・確認をさせる。
Ⅷ発表:車座になって、自分のテーマ(問い)を発表する。
Ⅸまとめ:これまでのよのなか科のまとめと大学生からの言葉を届ける。

———

具体的な授業構成は、添付資料をご参照ください。

第11&12回よのなか科授業案.pdf

 授業の工夫

生徒の多様な思考特性に対応するべく、過去から探るワークと未来から探るワークの両方を用意し、生徒に選択させる。
 *大学生(授業者)の例をありありと紹介し、生徒を刺激しイメージを膨らませる。何をどのように考える/思い出すのかも分かりやすく明示的に例示する。

3 使用した学習プリント

以下をご参照及びご活用ください。

第11回よのなか科過去版ワークシート.pdf

第11回よのなか科未来版ワークシート.pdf

第11回よのなか科 発表準備シート.pdf

第12回振り返りシート.pdf

4 授業の振り返り(生徒の反応など)

ワーク自体は生徒はとても真剣に取り組んでくれましたが、テーマ(問い)化するところがやはり多くの生徒にとって難しかったようです。具体的な場面や体験から、その何がいいのかを内省し、抽象化(概念化)する知的作業が肝なのですが、その難易度が高いです。そのことを理解した上で、できるだけ分かりやすく、かつ多様な例を示しましたが、あまりうまくいかなかった印象です。しかし、大学生のリアルな例が刺激的で、生徒を真剣にさせた点は評価できるものと考えています。

5 参考資料

藤原和博 氏
社長の[よのなか]科 つなげる力 3分講座
「人生の“棚卸し”──エネルギーカーブを描くことで見えてくるもの」
http://www.nikkeibp.co.jp/atclcsm/15/427068/042700010/

6 編集後記

「佼成よのなか科」は、先述の通り全12回という流れをもったプログラムとして企画しているものです。そこで当然のことながら、これまでの内容や生徒の学びを活かせるまとめになるよう願っていました。しかし実際には、これまでの授業とは関係なく結論の出る授業となってしまいました。(しかしよく言えば、単発でも行えるものになっています。)
 生徒の中で全体の授業と今回の授業が結び付いているのか、意味を理解し、今後につなげていけるものになっているのか等、疑問や悔しさは残りますが、何はともあれ、自分の考えを述べる生徒の姿は頼もしいものでした。
 問いやテーマをもって生きるということがどれほど面白いことか、十分に伝えられたとは思っていませんが、そんな意識をもって高校生活を送り、実りあるものにしてくれることを祈っています。
(編集:山之内康介 協力:NPO法人ROJE高校学習支援プロジェクト、佼成学園中学校)

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