学校で伝える多様な性(LGBT)-先生と授業実践を考える

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目次

1 はじめに

この記事では、日頃から情報交換をさせていただいている特定非営利活動法人ReBitが主催する教育関係者向けのイベント(2017年8月20日開催済み)を紹介いたします。

2 知ってほしいLGBTのこと

こちらの写真をご覧ください。

6人の中学生がいます。それでは突然ですが、この6人のうち、同性愛や性同一性障害などの「セクシュアルマイノリティ」と呼ばれる子どもは何人いるかわかりますか?1人でしょうか。2人でしょうか。3人でしょうか。少し考えてみてください。

答えは全員です。予想通りだったでしょうか。それとも、予想よりも多かったでしょうか。性別やセクシュアリティ(性のあり方)は、「見た目でわかりやすい」と思われがちですが、実は見た目だけではわかりません。だからこそ、本当は出会っているのに気づかない。学校やクラスに"いないこと"とされてしまうこともあります。

LGBTの子どもたちの声

  • 中学のときに友達から「おまえホモかよ」って笑われることが増えた。自分に嘘をつきたくなかったから一緒に笑ってごまかしていたけど、自分のことを笑うのはしんどかった。(20代・ゲイ)
  • あの時は言えなかったけど。ずっと自分のこと男の子だと思っていたから、中学校で制服のスカートをはくのがほんとにしんどかった。だから無断でジャージ登校してよく先生に怒られていたけど、反抗したかったわけじゃなかったんです。(20代・トランスジェンダー)
  • 先生が異性愛の人もそうじゃない人もいるよと教えてくれて、私だけじゃないだと安心しました。(20代・バイセクシュアル)

3 LGBTとは

あなたの教室にも、LGBTの子どもが3人はいる

近年では個人の尊厳に深く関わる人権問題の一つとして扱われているLGBT。日本では人口の7.6%(*1)がLGBT 、つまりは約13人に1人と言われています。たとえば、学校の40人クラスであれば約3人はLGBT。日本の未成年者のうち169万人以上はLGBTということになります。

[*1] 2015年電通総研ダイバーシティラボ調べ

約9割の子どもが、正しい知識を得ずにオトナになる

約13人に1人という身近なLGBTにもかかわらず、教育・社会保障・法律など、様々な制度から抜け落ち、日常生活でいないものとされがちです。また、LGBTに関し適切な教育を受けられなかった生徒は約9割(*2)にのぼり、LGBTについて正しい知識を得る機会がないまま大人になります。

[*2] ReBitアンケート結果より

正しい情報にアクセスできない

教職員や保護者に正しい知識を教えてもらえない場合、「自分はおかしいのかな」と不安に感じる子どもがいます。

  • テレビの中でも学校でも男性が好きな男性は笑われる対象だったり、きもいと言われる対象だったから、自分のことを気持ち悪い存在だと思っていた。(20代・ゲイ)

困りごとを相談できない

周りの人に相談できないと感じたり、相談をしても否定される場合もあります。

  • 女子の制服から男子の制服に変えたいと学年主任の先生に話をしたとき「勘違いなんじゃない?そういう“趣味”でルール違反しないで」と否定的な対応を受けた。(20代・トランスジェンダー)

"いないこと"になっている

どの子どもも性別に違和感がなく、異性が好きであることが前提であると、困りやすい子どもがいます。

  • ことあるごとに男子全体に向けての「女の子のことばっかり考えてたらアカンで~」と言う先生がおり、何気ない気持ちで言っていたのだろうけど、異性が恋愛対象ということが前提になっていたことがつらかった。(20代・男性同性愛者)

LGBTの子どもが「ありのままの自分」で生きられない

性同一性障害者の約70%が自殺を考える(*3)等、こうした現状を受けて、内閣府「自殺総合対策大綱」(平成24年)や文部科学省の通知のなかでも性的マイノリティの児童生徒の悩みや不安を受け止める必要性や、教職員の理解を促進していくことが明記されています。
平成29年3月に文部科学省が出した「いじめの防止等のための基本的な方針」のなかでも教職員への正しい理解の促進だけではなく、学校として必要な対応について周知する必要性についても言及されています。しかし、2017年の学習指導要領の改訂にあたり多様な性に関する記述はなく、従来の学習指導要領と同様に思春期の変化として「異性への関心が芽生える」ことが記載されました。

[*3] 新井富士美・中塚幹也他(2008) 性同一性障害の思春期危機について

4 イベント概要(2017年8月20日開催済み)

主催者の思い

多様な性について正しい情報を知ることができず孤立してしまう子どもたちは学校のなかに存在します。子どもたちに対して性は多様であると発達段階に応じて伝えていくことは大切なことです。今回のイベントでは各学校で授業実践を行った小・中・高の先生方に登壇いただき、どのように授業で多様な性について伝えたのか報告をしていただきます。また午前中はReBitによるLGBTに関する基礎講座を実施します。
多様な性についてこれから知りたいと考えている先生方、学校のなかで伝えていこうと考えている先生方は全国にいらっしゃいます。どのように伝えていけるか考えるだけではなく、継続して相談できるネットワークをこのイベントを通してつくっていただけたら幸いです。

詳細情報


■日時:2017年8月20日(日) 9:30‒16:00(開場 9:15)(途中入退出可)
■場所:国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)
■対象:教職員・教職課程履修学生・教育関係者・保護者など、子どもとかかわる大人約100名
■参加費:無料(※要事前申し込み
■主催:特定非営利活動法人ReBit

基調講演

渡辺 大輔 先生

埼玉大学基盤教育研究センター准教授

専門は教育学。『いろいろな性、いろいろな生きかた』(監修、ポプラ社、2016年)、『思春期サバイバル2』(共著、はるか書房、2016年)、ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(共訳、明石書店、2017年)、「学校教育をクィアする教育実践への投企」『現代思想』(2015年10月号、青土社)など。近年は中高の教員と共同で「性の多様性」についての授業実践研究を進めている。

授業実践報告・登壇者

1人目

県立大学附属中学校教諭
子どもの生活にも根づいているジェンダー意識を揺さぶることで、自分らしく生きることの価値を、子ども自身で見いだすことができたらと考え、実践を行いました。単元をとおして当事者のかたや関係者のかたとの出会いを大切にした授業を展開しました。多様な性に関する授業の一つのかたちとして提案させていただけたらと思います。

2人目

都内私立高校・講師/一般社団法人“人間と性”教育研究協議会(性教協)所属・本部幹事

「人間の性と生」の授業を担当し、10年が過ぎました。いろいろな方々の知恵を借りながら、手探りで授業をしています。教科は国語です。

3人目

公立小学生教諭

小学生の児童は、学年によって発達段階が大きく異なります。また、学級の実態や担任と児童との関係も様々です。そこで、今回は1年生から6年生までのいろいろな学年で、性の多様性について授業でどんな取り組みができるのか紹介します。「ちがいを認め合う」とは、どういうことなのか?なぜ、それが必要なのか?子どもたち自身が考えられるような授業の提案ができればと思います。

5 特定非営利活動法人ReBitについて

ReBitはLGBTを含めた全ての子どもが、ありのままの自分で大人になれる社会を目指すNPO法人です。 全国でLGBTに関するワークショップや講演会を行うほか、中学校向けのLGBT教材「Ally Teacher’s Tool Kit (アライ先生キット)」の開発を行っている。団体名には「少しずつ(Bit)」を「何度でも(Re)」繰り返すことにより社会が前進してほしい、という願いが込められ、LGBTの人もLGBTでない人も、大学生や20代の若者、約300名が参加しています。

Rebitホームページ

6 関連図書紹介

渡辺 大輔・監修『いろいろな性ってなんだろう?』

渡辺 大輔・監修『だれもが楽しくすごせる学校』

渡辺 大輔・監修『ありのままでいられる社会』

渡辺 大輔・共著『10代のモヤモヤに答えてみた。—思春期サバイバル〈2〉Q&A編』

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