褒め言葉のシャワー2周目の効果③(岡篤先生)

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目次

1 はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「教師の基礎技術~褒め言葉のシャワー追試~805号~814号」から引用・加筆させていただいたものです。
1周目では態度や発言の内容が改善されなかった子へどのような指導を続けていたら効果が得られたのかを書いたものです。
岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。→http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm

2 実践内容

褒められ慣れていない子

褒められ慣れている子どもと褒められ慣れていない子どもによる違いが、褒め言葉のシャワーのときに見られました。
まず、その子は前に出ることを嫌がりました。私は照れているのかと思い再三声をかけると、しぶしぶ体を起こし、足をひきずるように前に出てきました。他の子たちは、自分が前に出て、褒め言葉のシャワーを受けることをたいていは覚えていて、意識しています。うれしそうに出てくるか、恥ずかしそうに出てくるか、あるいは、わざと平気な顔で出てくるかです。そこには、褒め言葉のシャワーを受けることを楽しみにしている様子がうかがえます。ところが、その子の様子だけは違いました。だらだらと前に出てきて、嫌そうな表情で立ちました。いつものように他の子達が順番に褒め言葉を言っていきます。

褒め言葉のシャワーを嫌がる子

他の子と違ったところは褒め言葉を受けている本人だけ明らかに楽しんでいなかった点です。他の子が前に出たときとは、はっきりと表情が違います。本当に前にいて褒め言葉を受けているのが嫌そうでした。褒め言葉が進むにつれ、ますます表情が硬くなり、発表している子をにらみつけるような目になっています。

■普段の言動

その子は普段、わざと相手を怒らせるようなことをよくやっています。そして、相手が怒って向かってきたり、捕まえられたりするときの表情は、うれしそうにしか見えません。それまでいくら注意しても変わらなかった「ちょっかい」を出して相手の気を引くという行為は減っていきました。もちろん、周りの子にも普通に遊びに入るように、誘ってあげるようにと声をかけていました。本人にも、怒らせて相手にしてもらうのではなく、普通に遊びに入れてもらいなさいと言っています。

■褒められた経験が少ない子

これらの行動を見て、この子はちょっかいを出すことでしか相手とのつながりの持ち方がわからないと判断しました。それを指摘し、本人と周りにも指導することで少しずつですが、改善が見られました。相手とのつながりの持ち方を間違って身につけているのと同じように、褒められることを素直に喜ぶことも経験が少なかったのではないかと考えました。だから、他の子にとって心地よいはずの場所が逆にとても居心地が悪く感じられるのかもしれません。逆でないとしても、居心地は悪く、どうしてよいかが分からない可能性も考えられます。もしそうであれば、この子にこそ褒め言葉のシャワーが必要です。

褒め言葉のシャワーの2周目では

この子の2周目の褒め言葉のシャワーにもどります。1周目は、険しい表情でまるでけんかをしているかのようなにらみかたをしていました。2周目はどうなるかと興味を持って見ていました。すると、少なくとも1周目よりは落ち着いた表情をしていました。

■褒められることになれる

1日30人が褒め言葉を言うとして、1周すれば全員で900回の褒め言葉を聞くことになります。その1周目の経験が活きました。他の人の褒め言葉を聞いている様子はほとんどありません。しかし「シャワー」を自然に浴びることで褒め言葉に慣れてきた可能性があります。だからこそ、前に出るときも1周目よりはスムーズに出ることができました。

2周目の子どもの変化

褒め言葉のシャワーを2周することで子どもの変化を確認することができました。前述の子どもの態度がやわらかくなったことは明らかに目に見えての変化の一つです。他に発言の方法としては、

  • 伸びほめ:その子の以前の姿からの伸びをほめる。(1年生のときは話を聞いていなくてよく叱られていましたが、今は話している人を見て集中して聞くようになっていて、変わったなと思います。)
  • からほめ:相手の言動を取り上げて自分のことにつなげる。(~さんが縄跳びをがんばっていたので、私もしんどくなったけど、必死で続けました。)
  • 会話入れ:どのような会話があったか入れるもの。
  • ○つあります:先に何点あるかを述べるもの。

といったものが子どもの中から自然に出てきました。
褒め言葉を受ける子どもには、

  • 発言する子の列の前に移動する
  • 「ありがとう」と言う
  • 発言を取り上げて感想を言う

などがありました。

■課題

一方、気になっていることもあります。「縄跳びが上手です。」といった具体的ではない内容も少なからずあるということです。最初のうちは、何を言ったらよいのか分からないという子も多かったはずです。その頃なら、こういったことがでてきていても当然だったと思われます。しかし、2周目になりいろいろな発言を聞き、それらについての教師からの指摘や指導がくり返しあったにも関わらず、具体的でもなく、特徴的でもない発言が出てくるというのはさびしい気がします。

■発言の内容

最初のうちは、言うことが分からない子が多いだろうと考え、「先に言った子と同じことでもいいです。」と言っていました。慣れるためにはじめのうちは、全員が言えることが大事だと考えたからです。どうやら、話すこと自体は問題なくできるようになってきました。次は内容が求められます。内容がなければ、徐々にだらけていくはずです。それでは、時間と手間をかけて褒め言葉のシャワーに取り組んでいる意味がありません。すでに、書いたように発言の内容も徐々に向上が見られました。ただし、変わらない子もいます。
発表が苦手な子はとにかく発言をこなすことに精一杯で、より改善していこうというところまで意識がまわりません。前に出ることをいやがっていた子も私がなんと言おうと、同じパターンのことをくり返し言い続けていました。

■変わらないと決め込んでいる子

その子は、「これを言っておけば、順番が過ぎる」と決め込んでいるようです。声もぼそぼそだし、待っている間は机にうつぶせたままです。少しでも子ども達の発言内容や態度がよくなるようにと、毎日なんらかの指導を入れています。全体的には、最初よりも明らかに向上が見られます。その子の前での態度もその一つです。しかし、この子も発言に関しては変わらない、と自分で決め込んでいるようです。

子どもの変化

ところがある日の発言で、「佐藤さんは、給食のときにいつも楽しい話をしてくれるのでうれしいです。」と話したのです。佐藤さんは、給食のときに同じグループの女の子です。確かに、いつも笑い声が絶えません。「今までで、一番良かったと思います。」と褒めると自然に、拍手がわきました。発言を変える気が全くないようなそぶりを見せていた男の子が、自分との関わりの中で見つけたことを初めて話してくれました。私は「自分だけが知っていることや自分とのこともいいですね。」とよく言っていました。それが頭にあったのか、他の子の発言を聞いていたのか、具体的なものになりました。一番変化が起きないと思われた子に、褒め言葉の連鎖が起きたのです。

3 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。(2017年8月18日時点のものです)

4 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

5 編集後記 

1周目では見られなかった改善も取り組み続けることによって2周目で改善が見られました。子どもから出た良い褒め方を多く取り上げることで様々な褒め方が紹介されていました。褒め言葉のシャワーを実践する際はぜひお試しください。
(文責・編集 EDUPEDIA編集部 福山浩平)

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