【関西教育フォーラム2017】鈴木寛先生インタビュー

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目次

1 はじめに

この記事は、2017年11月26日(日)に京都大学で開催された「関西教育フォーラム2017 AIとともに君はどう生きたいか?~現代の魔法使い・落合陽一と考える21世紀の大学の役割~」の後に、登壇者の鈴木寛先生(文部科学大臣補佐官)にお話しいただいた内容を編集・記事化したものです。

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関西教育フォーラムについては→こちら

2 インタビュー

ディスカッションでは、「没入」や「没頭」というキーワードがよく出てきたと思います。しかし、没入してその能力を開花させるということが今の日本の教育ではなかなかできていません。好きなことに没入してその学びを深めていくということを、学校でできるようにするには、どのような改革が必要だとお考えですか。

いまや中学生の7割が塾に行っています。昔の子どもは、学校で勉強をして、家に帰り好きなことに没入するということができましたが、現在ではできません。僕は、学校教育というのは、家庭教育、社会教育、民間教育あるいはNPOによる教育といったメディア教育では学べない大事なことを学ぶところだと思います。家庭教育や民間教育を制御することは難しいです。もちろん塾に行っていない3割の子どものことは別に考えなければなりませんが、これだけ塾がはびこってくると、学校は時間割のない時間、あるいはテーマや教育目的のない授業を意図的に作りだすことが大事になってくると思います。

基礎学力やその養成も大事ですが、その過程や休み時間の子どもの使い方が変わってきたのも個々の役割が変化したのだと思いますか。

そうだと思います。今までは工業社会で反復作業をミスなく高速に正確にやれることが必要でした。しかし、社会が変化しているので、そういうものはAIにとって代わられます。そうしたときに人間の役割は何だろうと考えてみたら、それは自由意志だと思います。
 また、意図的に「没入」できる時間や「没入」という科目を作ることが大切です。あるいは高校3年間の間で3か月くらいは「没入」の時間をとることができるようにするなど、授業の一環として組み込んでいくと良いと思います。やはり、「意図的に生徒のための時間と空間を組み込んで」いかないといけないと思います。

学校で自分の考えや世界観を表現する言語活動を高めるためには、どのようなことをすればよいとお考えですか。

行う事は難しいですが、「正解忖度教育」をやめることですね。やめることはできないけど、減らすことです。正解忖度をしなくても大丈夫だという安心感を与えなければならないです。みんな口では自由にやれと言っていますが、その自由の確保ができていないのです。

正解忖度しないようにするためにはどのようにすればよいとお考えですか。

最初は、正解忖度主義に染まった子どもたちは、何もしないと思います。しかし、何もしない間を先生や保護者が待つことが重要です。人間はやらない自由が溜まるとやり始めます。何もしていない時間は無駄ではありません。アートのように期限のない時間が必要です。

鈴木先生は国立と私立の大学で教鞭をとられていますが、国立大学の自立化は今後進んでいくのでしょうか。

進んでいくと思います。ただし、この自立が消極的自立なのか積極的自立なのか捉え直していかなければならないです。国のコミットが減っただけの消極的な自立ではなく、「国そのものからの拘束から自立するのだ」という強い意思を持った自立が大切だと思います。

最後に、本日来場できなかった人も含めてみなさんにメッセージをお願いします。

学校教育の役割や必要性が根本から変わっていくと思います。そのことをみんな考えてほしいですね。教育とは人と人が織り成すアートです。唯一無二の存在が集まって、一期一会でこの世に1つしかないものを作ります。工業化の頃の考えから離れ、全てにおいて自由を確保することが大切ですね。

3 鈴木寛先生プロフィール


鈴木寛(文部科学大臣補佐官・東京大学教授・慶応義塾大学教授)
1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、通商産業省(現:経済産業省)に入省。慶応義塾大学助教授を経て、2001年参議院議員初当選(東京都)。文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化・情報を中心に活動。2014年2月より、東京大学教授、慶応義塾大学に同時就任、日本初の私立・国立大学のクロスアポイントメント。2014年10月より文部科学省参与、2015年2月より文部科学大臣補佐官就任。また、NPO法人日本教育再興連盟代表理事、大阪大学招聘教授、中央大学客員教授、日本サッカー協会理事、社会創発塾塾長なども務める。
(2017年11月26日現在のものです)

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