1 はじめに
この記事は、山口県東部にある瀬戸内の島・周防大島で株式会社ジブンノオトを立ち上げ、島でのキャリア教育等に携わっている大野圭司さんへの取材をもとに執筆した連載記事(全4回)の第1回です。
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第2回 教育が島の未来を変える~大野圭司さんインタビュー①~
第3回 教育が島の未来を変える~大野圭司さんインタビュー②~
第4回 地域に開かれた島の教育の仕組み~大島中学校座談会~
第1回では、周防大島町立大島中学校での総合的な学習の時間の授業を紹介します。この授業では大野さんが講師となって「島おこし」をテーマとしたプレゼン大会を行っていました。
2 授業の流れ
今回の授業は2コマ続きで、以下のような流れで行われました。
- 大野さんのプレゼン(15分)
- 班別活動(35分)
- 予選プレゼン(15分)
- 決勝プレゼン(15分)
- 投票・振り返り(20分)
大野さんのプレゼン
最初に全校生徒79名の前で大野さんがプレゼンを行いました。
この先どうなるか分からない社会では自分たちで課題を解決できるようになる必要があること、今回の授業をそのキッカケにしてほしいということを10分程度のプレゼンテーションで伝え、生徒のやる気を引き出していました。
班別活動
今回は、事前に生徒たちが「養蜂」「学習・教育」「行政」「花屋・バラ園」「観光」「デザイン」の6つのテーマから選択して島おこしのアイデアを考えてきていました。実は今回の授業の前にこれらの分野を職業とする地域の方々を招いてワークショップを行っていたようです。この日も、島で養蜂を行っている笠原さんが授業の見学に来ていました。
生徒たちはこのテーマごとにあらかじめ指定されていた12班に分かれて4つの教室(1教室あたり3班)に移動し、意見交換を始めました。縦割りの班なのでそれぞれ3年生が進行役になります。
- 「ショッピングセンターを作ろう」
- 「大島大橋(本州と周防大島を結ぶ橋)をみかん色にしよう」
- 「電動自転車でスポット巡りをするツアーを作ろう」
- 「ゆるキャラを作ろう」
- 「AIで花の管理をしよう」
など生徒たちの出す多様なアイデアに対して、大野さんや先生方、地域の方々は各班を見て回りながら「ショッピングセンターを作ったら人は来るかな?どうしたら成り立つと思う?」「そのゆるキャラは誰向けなの?」と声掛けをしていました。
まとまった意見はワークシートに記入し、各班につき1台ずつ用意されているiPadでそれを撮影しました。そして撮影したワークシートをiPad上に表示しながら、それぞれプレゼンの練習を始めました。ほとんどの班が時間内に終わらなかったため、休憩時間も使って念入りに準備していました。
予選プレゼン
各教室で、iPadとモニターをつなぎ、先ほどのワークシートを大画面に映しながらプレゼンを行いました。各班3分以内で、全員が前に出て説明しました。
各班の発表が終わると、投票に移りました。大人も含めた全員が、自分以外の2班のうちより魅力的なプレゼンをした班の番号とその理由を付箋に書き、前に掲示された表に貼っていきました。ここで一番票数の多かった班が、各教室の代表班に選ばれました。
決勝プレゼン
再び全校生徒が集まり、各代表班が決勝プレゼンを行いました。代表班のテーマは以下の通りでした。
- 5班 花屋・バラ園…インスタ映えする花畑
- 6班 花屋・バラ園…花の遊園地
- 8班 学習・教育…学習塾、大学
- 10班 観光…空き家を利用した体験宿泊施設
投票・振り返り
決勝プレゼン終了後、予選プレゼンと同様に投票が行われました。
結果は、6班が10班に1票差をつけて1位でした。
大野さんは、現実的な案を出した10班に対して絵を使って面白い発表をした6班が勝ったことから、プレゼンの奥義は「笑い」である、とまとめていました。
大野さんと先生方の講評で、この授業は終了しました。投票結果の表は翌日も残しておいたそうです。
3 授業資料
4 編集後記
見学しているだけでとてもワクワクするような授業でした。この授業を通して議論する力、プレゼンする力が身につくのはもちろん、「島おこし」をテーマに考えることで生徒の地域に対する関心が深まるのではないかと感じました。また大人に見てもらえることで生徒たちが張り切っていたことが印象に残りました。
(取材・編集:EDUPEDIA編集部 平原由羽、中澤歩)
5 第2回の記事
第2回の記事はこちらです。
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