英語嫌いにさせない!TESOLから学ぶ、自然と英語が身につく授業の作り方と先生の心構え

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目次

1 はじめに

新しい指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の視点から授業改善を行う必要性が訴えられています。しかし、生徒主体の授業展開は大切ということはわかっていても、先生中心に教えたほうが楽である時もあります。今回は、カナダ留学でTESOLを取得し、生徒中心のアクティブラーニングを学ばれた二神先生に2回目のインタビューをしてきました。取材をもとに、二神先生がどのように生徒中心の授業づくりを行なっているのか、また授業づくりで大切にされていることをまとめました。
1度目のインタビュー記事はこちら

2 授業づくりで大切にしていること

授業ではどのようなことを意識して教えていますか。

小・中学生の英語の授業では、英語嫌いにさせないということを意識して授業づくりをしています。小学校で英語が教科化すると、英語嫌いが増えてしまうことが予想されますが、やっぱり楽しく学ばせてあげたいと思います。そのために、日常的な英会話を取り入れたり、アクティビティを取り入れたりして、まず「英語は楽しく学べるもの」と思ってもらえるよう工夫しています。授業を通して自然と英単語が身につくような仕組みを作ったり、日常会話や言いたいけど何と言えばいいのかわからないフレーズなどを紹介したりして、身近なものと感じてもらえたらと思っています。しかし、そのような意図に生徒が気が付かぬまま自然と英語が身についたり、興味を持って自分から学んでみたりすることを目指しています。

「自然と身についている」というのはとても難しく、教えてしまったほうが早いと感じる部分もあると思うのですが、そういった部分はどうしていますか。

英語に限らず、生徒の「考える力」を養うことが一番大切だと思います。もちろん英語ができるようになったら良いですが、その子が興味を持って、自分の頭で考えて、やってみて、結果が出るという経験を通して自信をつけさせてあげることが必要です。ですから、英単語や文法を詰め込むだけの授業は決してしません。授業を通して「知る」という最初の経験は、できるだけ生徒に気づかせるようにしています。

3 実際の授業内容

具体的にはどのように教えていますか。例えば、どうしても説明がしたくなってしまうような文法事項はどうしていますか。

導入が肝心です。例えば、不定詞を導入するとき、いきなり英語から入らず、日本語から入ります。「みんな何が好き?」「へー、サッカー好きなんだ〜」と、一見雑談に聞こえるような話ですが、

先生「じゃあサッカー好きってなんていうの?」

生徒「I like soccer.」

先生「サッカー好きって、サッカーの何が好きなの」

生徒「俺はサッカーするのが好きなんだよね」
生徒「私はサッカー見るのが好き」

先生「なるほど、同じサッカーするのが好きでも、するのが好きなのと見るのが好きなの、2種類あるんだ。じゃあこれは英語で何て言えばいいんだろうね、違いはどう言い表すの?単語は?」「watch the soccer gameだよね」「どうやって好きと見るを合わせるんだろう?」

と、話を展開していきます。ここで、子どもたちがそのとき持っている知識で書かせてみると、I like play soccer.などの文が出てくるので、ここでtoを出してその子たちが言いたかったことを例文にして書きます。何か気づいたことがあるか投げかけて、その気づきをまとめます。いかに身近な話題で入るか、で食いつきも記憶への残り方も大きく変わります。

明示的に指導したくなるのは、文法に加えてリスニングや発音の指導などかと思うのですが、それらはどのように教えていますか。

例えばリスニングなら、日本語の早口言葉から入ります。

まずはみんなで日本語の早口言葉を言って、競うなどします。それで、なぜこの早口言葉が言いづらいか、難しいかを口の構造で考えさせます。そうするといろいろな意見が出ます。自分たちが発音するときにベロとかを使ってすぐ動かしたり口をパクパクさせたりするのがすごく苦手だ、なんでだろう?など。そこで、日本語って母音で発音する言語だから、あまり口を使っていないけれど、英語だと違うということを話し、英語の発音の練習をします。

するとなぜ難しいのかと言う原因が見えてくるのです。そのときに、英語の早口言葉を出して一緒に練習します。やってみて、「意識すると発音が上手になる」という成功体験につながると、発音を意識し始めるようになります。その中で、発音への抵抗をなくすことができ、さらに読む機会を増やすことによって無意識のうちにリスニングの力を鍛えるようにしています。人の脳は、自分で言えない音は聴き取れないという性質があるので、一見遠回りですが、音読を通してリスニングの練習をします。

↓こちらは実際に用いられている教材です
早口言葉(日本語)
早口言葉(英語)

4 TESOLで学んだことで役に立ったこと

TESOLで学んだことで、こういうところはぜひ日本の教育現場に導入したらいいのではないか、というのはありますか。

TESOLというのは英語を第2言語として学ぶ人に、英語で英語を教えることができる資格なのですが、実際は教師としての基本を学ぶことができました。例えばinductive teaching(生徒主体のアクティブラーニング)とdeductive teaching(教師主体の従来型のスタイル)の違いや、ジェスチャーの意味、アイスブレークとウォームアップの役割・方法・実践例、先生の発問技術、授業の組み立て方等、基礎的なところです。これが授業を作る上での僕の基盤となっています。

使って面白かった、盛り上がったアクティビティはありますか。

バトルシップという発音・リスニングのためのアクティビティが人気です。

ルールがやや複雑なので、生徒が理解できるように例を見せたり、飲み込めたか質問を投げかけて確認したりなど、当たり前ですが説明1つにとてもこだわっています。これもTESOLを通して学んだことで、当時習ったフレームワークを日本流にアレンジして使っています。

↓こちらは実際に用いられている教材です
Battle Ship

5 まとめ

二神先生にとって、授業とは?

僕は授業は「料理」だと思っています。美味しい料理を作るためには、まず素材が必要です。新人の先生ははじめ「そもそもどうやって授業をすればいいのか」という素材(知識・経験)を学ぶ必要がありますし、ベテランの先生でも「これが自分流!」と固執せず、生徒・保護者の方のニーズや時代に合わせてアップデートしなければなりません。

素材を集めた後は調理です。まずは人のレシピ(授業案)を徹底的に真似し、腕を磨きます。お客さんが満足する料理が出せるようになる(求められている授業ができるようになる)には圧倒的な努力と経験が必要です。そして最後に、先生の個性はスパイスです。スパイスは多すぎたり、強すぎたり、料理に合わなかったりしてはいけません。「適度」であってはじめて、「その先生らしさ」という価値が生まれ、自分にしかできない授業ができていくと思うのです。

6 二神先生のプロフィール

二神大輝(ふたがみだいき)
エイメイ学院英語科教務主任、EIMEI予備校塾長
大手予備校で勤務した後、カナダのバンクーバーに留学。英語が母国語でない人々向けの英語教授法であるTESOL(Teaching English to Speaking of Other Languages)の全過程を修了し、現在はエイメイ学院で小、中、高校生に英語を教えている。
二神先生のTwitterはこちら
(2018年10月31日時点のものです)

7 編集後記

例えば授業の導入は英語でやるほうがよい、と考えている人は多いと思うのですが、二神さんの実践では、特に英語が苦手な子どもたちには、日本語で入るということが画期的だと思いました。言語である英語を教えるにあたっては、このように「自分の言いたいこと」から入るのがすごく大事で、授業において「英語でなんて言えばいいんだろう」を引き出してあげるのは大事だなと改めて実感しました。
(取材・編集:EDUPEDIA編集部 鈴木)

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