「教育の不易と流行」から教師の未来を考える~10年後、教師に仕事はあるのか〜 (Teacher’s Lab)

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目次

1 はじめに

本記事は、2018年7月30日に開催されたイベント『~10年後、教師に仕事はあるのか~ 「教育の不易と流行」から教師の未来を考える』(主催:Teacher's Lab)の内容を編集・記事化したものです。

2 イントロダクション

本日のテーマは「10年後、教師に仕事はあるのか」です。

教師という仕事がなくなるとは思わないのですが、私は大きなことを考える方が好きで、10年後は一体どうなっているのかな……と考えています。

大雨や地震などの自然災害から、子どもたちの身の周りまで、私たち大人も遭遇したことのない問題が日々起こるようになってきたと思います。日々9歳や10歳の子どもたちと接するなかで、彼らが大人になったときにどんな世界が待っているのか、結構まじめに考えています。そして、それは保護者さんも同じです。

今日のテーマは「深い学び」です。時代背景や必要になってくるスキルの紹介なども交え、皆さんと学んでいけたらと思います。参考資料として田村学さんの『深い学び』を活用していきます。

3 「●●ではなく、□□である」

子どもたちに「●●ではなく、□□である」という表現を使わせるようにすると、学びが深まるように思います。

「●●」の部分には「表面的な理解」、□□の部分には「深い理解」が入るのです。

「□□である」だけを空欄にすると、子どもたちは何となく写して終わりということになりがちですが、「●●ではなく、□□である」という形で授業のまとめなどをさせると、子どもたちは考えだします

4 教材研究へのアプローチ

算数的な見方で世界を見るとこう見えるよね、理科的な見方で世界を見えるとこう見えるよね、という発想は「深い学び」の授業デザインに繋がります。

いま授業で「お米」を扱っているのですが、

  • 植物として見たお米
  • 稲作から見たお米
  • 栄養から見たお米

など、さまざまな観点からのアプローチができます。こうしたアプローチを通して、「ものを作ることは環境を作ることである」というセントラル・アイデアに向けた探究を、2ヶ月かけてやっています。

5 ワークショップ

★ワークショップでは、深い学びが求められる背景(Why)について、班でディスカッションしていきました。ここでは各班の発表内容を簡単に紹介します。★

1.どんな時、子どもたちが情報化していると感じますか?

①「情報化」の定義がそもそも難しい。ICT化と情報化はイコールではないと思う。ツールを使うだけのICT化でなく、情報の収集・発信までできるのが情報化ではないか。

②プレゼンという言葉も知らない小学生が、「スティーブ・ジョブズみたいなことをしたい」という風に言い出したことがあった。iPadを活用して、90秒位のプレゼンを作り上げた子どもたちの順応性の高はすごい。

③先生の側よりも子どもたちの方がメディア・リテラシーがあるかもしれない。デジタルネイティブ世代の子どもたちの方が、情報機器を使いこなせているように感じる。

④SNSで「言った」「言わない」のやり取り、写真から住所を特定されてしまうなど、情報化にはリスクもある。簡単に情報を調べられる時代だが、一番上にヒットする情報だけを鵜呑みにしてしまうなど、かえって意見が画一化してしまうようなこともあるのではないか。

⑤これまでと違い、SNSという繋がり方そのものが子どもにとって当たり前になっている。情報化の負の側面として、紙媒体を使って調べるのがなかなかできなくなってきている。スマホ以外での検索のやり方、情報の選び方が身についていない可能性がある。

野口先生:情報によって考える力が落ちている、というのは私も感じる。開智望小学校は発展途上の「2.5」の学校。子どもたちは評価に敏感で、先生を「試してくる」子が気になる。

2.これは「深くないな」と思う授業、先輩からの説教などあれば教えてください。

①「でもこれは~だからできるんでしょ」という言い回しが気になる。中学校だから、進学校だから、IB校だから……とできない理由を探してしまっている。

②一斉講義はダメというイメージがあるが、本当にダメなのか。ダメなのは一斉講義ではなく、「視点の偏り」「手段の目的化」ではないか。アクティブラーニングをするためのアクティブラーニングはよくない。

3.『深い学び』(田村学・著)と重松先生の実践を読んで、自分の実践につなげよう。

①知識を発展させていく過程でどう提案するかが教師の役割ではないか。 ②具体例から因果関係を考えていく、帰納的推論が大事。

③日々の行動を「手続き的な知識」につなげていく。自分のクセもある意味で「手続き的な知識」、パターン化してしまっていることをメタ認知しよう。

④「筆者の考えを探す前に、接続詞を見てまずそのまま読んでみよう」という読み方は国語と英語で共通なのではないか。他教科とつなげていくことが必要。

⑤学びに向かう力をどう引き出していくかをデザインしたい。

6 まとめ

深い学びというのは、AとBをつなげる練習をすることで、子どもたちが接したことのない問題を解決できるようになることだと思います。いままでの学びはそこが弱いのです。

最後によい授業の5つの要素を紹介します。100年前に初めて社会科の指導要領を書いた重松先生と、国際バカロレアが目指すものは非常に似通っていて、教育にも「不易」はあるのだと実感しました。

私には先生たちのコミュニティを作っていくという大きな夢があります。5年、10年と続くものにできたらと思うので、またお時間のあるときにお会いしましょう。

7 講師プロフィール

Shingo Noguchi 先生(開智望小学校教務主任)

曾祖父、祖父、父すべて教員の4代目。茨城県守谷にある私立小学校の教員。大学ではデンマークやフィンランドの教育システムを研究。キャリア教育や生涯学習に興味を持つ。

NPOカタリバに参加し、30校以上の高校へ行き、3000人以上の高校生と接する。
大学卒業後コンサルティング会社に入社。人材開発領域のプロジェクトに多数参加。新入社員育成やOJTの仕組み構築などを経験。その後独立し個人事業主としてネットショップ経営、個人コンサルティングなどを経験。通信教育で小学校教諭一種免許状を取得。

開智学園総合部に勤務後、開智望小学校開校準備室にて業務を行う。2018年4月現在は開校4年目を迎えた開智望小学校で教務主任と3年生主任を担当。学校外では、菊池省三先生や沼田晶弘先生、コーチングセミナーや教員サークルに頻繁に参加。公立の教員の知り合いが多く、積極的に交流を図っている。

趣味は読書で1日1冊は本を読む。累計読破数は4,000冊以上。

開智望小学校 HP 開智望小学校 Blog

8 Teacher's Schoolについて

Teacher’s Schoolは、下の3つの価値を大切にしながら、学校の先生と共に様々な社会資源を活用し「学びたい先生が主体的に学べる環境」「挑戦したい先生が自分のやりたい事に挑戦できる環境」の創造を目指しています。

Teacher's School 3つの価値

  1. つくることで学ぶ「生成的な学び」
  2. ふりかえることで学ぶ「内省的な学び」
  3. つづけることで学ぶ「継続的な学び」

失敗を気にせず自由に試行錯誤して、自分の想いを「学び」のプログラムにすることができるのが特長です。

詳しくはこちら↓

HP:teacherslabFacebook

HP:Teacher’s School

Mail:info@teachers-lab.org

9 野口先生の年間講座

全12回(事前カリキュラム2回+12回)のコンテンツ内容は以下となっております。詳細は上記HPよりご確認ください。(第4日曜日の13:00~15:00)

8月『目標と評価の一体化~逆向き設計』

9月『単元全体・学期全体・学年全体・小学校全体で探究をデザインするには?』

10月『どうしても主体的にならない子をどうやってサポートするか?』

11月『対話が苦手な子をどうやってサポートするか?』

12月『形式だけのアクティブラーニングを脱して深い学びを実現するには?』

1月 『超実践的シンキングツールの使い方』

2月 『教科融合の仕方:国語×理科×社会の実践例』

3月 『リフレクション~教員としての成長を振り返る・職員室の交渉』

10 編集後記

様々な校種の先生、民間の教育関係者の方、大学院生など様々な参加者がいらっしゃいましたが、それぞれの経験を生かした活発なディスカッションが行われていたのが印象的でした。

Teacher's Labさんは定期的にさまざまなイベントを開催されているので、ぜひ一度足を運ばれてはいかがでしょうか?

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 中澤歩)

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