学校には、食物アレルギーを持っている子どもたちが多く通っています。なかには、日本語を母語としない海外にルーツを持つ子どもが、食物アレルギーを持っている場合もあります。海外ルーツの子どもや保護者とコミュニケーションを取りながら食物アレルギーの対策をするにはどうしたらよいのでしょうか。
この記事では、海外ルーツの子どもが持つ食物アレルギーの不安や困りごとについてお伝えします。また先生が海外ルーツの保護者と連携する際のポイントについても解説します。
海外ルーツの子どもが持つ食物アレルギーの不安・困りごと
海外ルーツの子どもや保護者が持つ食物アレルギーの不安・困りごとには、以下のようなものがあります。
- 食物アレルギーを把握できていない
- 給食に馴染みがない
- アレルギー対応のための手続きが難しい
- 自分の意志を正しく伝えられない可能性がある
食物アレルギーを把握できていない
海外ルーツの子どもは、日本で提供される食事に慣れていない場合があります。
そのため、まだ子どもや保護者が気づいていない新規のアレルギー原因食物があったり、給食で出されると思っていなかった食材でアレルギー症状が出たりする恐れがあります。子どもや保護者から「食物アレルギーはない」と伝えられた場合でも注意が必要です。
給食に馴染みがない
世界には、お昼ご飯を自宅から持っていく国や地域が多く存在します。
そのため、海外ルーツの子どもや保護者は給食に馴染みがなく、食物アレルギーの情報を学校に提供する習慣がないかもしれません。子どもや保護者からの申し出がなくても、先生の側から食物アレルギーの有無を確認するのが大切です。
アレルギー対応のための手続きが難しい
食物アレルギーに対応した給食にするための手続きは、海外ルーツの保護者にとっては大きな負担になっている場合があります。
資料や書類に書かれている言語が分からないと、正しく手続きをすることができません。そのため、ふりがなを振る、一緒に読み合わせをするなどして、手続きのサポートをできるとよいです。
自分の意志を正しく伝えられない可能性がある
日本語に不慣れな家庭であれば、自分の意志を正確に伝えられない可能性があります。使う言葉が違ったことによって認識の齟齬が生まれれば、子どもアレルギーを持っている食物を誤って食べる結果につながりかねません。
食物アレルギーの食材を正しく把握することは、子どもの命や健康を守るために大切です。食物アレルギーについては、イラストや翻訳を使いながら、複数の方法で意思確認することが重要です。
先生が海外ルーツの保護者と連携する際のコツ
先生が、海外ルーツの保護者と食物アレルギーの対応を連携する際のポイントには、以下のようなものがあります。
- 保護者の母語を使ってコミュニケーションを取る
- 食物アレルギーの原因食物のイラストを見せる
- 「やさしい日本語」で書かれたサイトを活用する
保護者の母語を使ってコミュニケーションを取る
海外ルーツの保護者の母語や得意な言語を使えば、意思疎通がしやすくなります。
自治体によっては通訳をできる人材の派遣を行っているため、必要に応じて活用しましょう。またWebサイト上にも、多言語で食物アレルギーについて紹介しているページがあります。
たとえば群馬県が提供している「ぐんま食の安全・安心ポータルサイト」では、6つの言語(英語、中国語、ポルトガル語、ベトナム語、スペイン語、ネパール語)で表示された食物アレルギーガイドをダウンロードできます。
食物アレルギーの原因食物のイラストを見せる
日本語を使い慣れていない海外ルーツの保護者であっても、イラストを見せればコミュニケーションしやすくなります。
食物アレルギーの原因食物が描かれたイラストを見せ、指さしで意志を確認するのもおすすめです。また日本語や他の言語で食物アレルギーの原因食物についてやり取りしたあとに、イラストで再度確認する方法もあります。
「やさしい日本語」で書かれたサイトを活用する
海外ルーツの保護者の中には、簡単な語彙や文法で書かれた「やさしい日本語」であれば理解できる人がいます。
そのため、「やさしい日本語」で書かれたWebサイトを一緒に確認しながら、学校生活と食物アレルギーに対しての理解を深めるのは有効です。
認定NPO法人キッズドアが提供している情報サービス「ことこと」では、「やさしい日本語」で食物アレルギーについて解説しています。
おわりに
海外ルーツの子どもや保護者は、日本語や日本での生活に慣れていない場合が多い傾向があります。そのため先生は、コミュニケーションを取るために多くの工夫をする必要があるのです。
特に食物アレルギーについて正しく確認することは、子どもの命や健康を守るためにとても大切です。
海外ルーツの子どもの食物アレルギー対策を確実に行えるよう、自治体や企業、団体のサービスやWebサイト上の資料も活用してみてください。
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