はじめに
本記事は【読み優先の漢字教育】シリーズ全4記事の総論部分になります。関連記事も是非ご参照ください。
子どもの主体を起こし、文章で行う【読み優先の漢字教育】① 「総論」(教材) | EDUPEDIA (本記事)



「②③④」の記事は単独で読んでいただいても十分に役に立つ内容ですし、下記リンク↓↓↓の教材提供サイトを開き、単独で利用いただくのも結構かと思います。
しかし、本当は「②③④」の教材を統合して利用していただきたいと思っています。それによって、子供たちの語彙力や文章力を大きく伸ばすことができます。ひいては主体を起こして子供たちが認め合いながら学習を進めてゆくことができます。本記事では総論として、「②③④」を利用することによって漢字学習をいかに充実させ、子供たち・学級集団の力を伸ばしてゆくのかについて記述してゆきます。下記リンク↓↓↓のサイト「楽しく学べる漢字の部屋」の再生部をクリックしていただくとそれぞれの説明等も入っていますが、ここでは全体の構成を説明しています。
「楽しく学べる漢字の部屋」 flat-ohita-5712.thick.jp/index.html ←こちらに教材・説明があります
総 論
1.子どもの主体を起こす
今、学校で行われている漢字の一般的な学習方法は反復書き練習です。「漢字学習はそれしかない」と多くの教師は思い込んでいます。しかし、子どもの側、とりわけ学びにくさのある子にとってはとてもしんどい学習法です。高学年になっても低学年の漢字しか習得できていない子というのは、誤った学習法による犠牲者と見るべきです。
【読み優先の漢字教育】は、子どもたちが「これはおもしろい」「これならできる。やってみよう」と内なる主体を引き起こします。「一日一漢字」「漢字音読名人」「漢字書き名人」からなる主要3教材を活用し、漢字の読み・意味理解・文の音読に習熟させながら指導を進めます。

一日一漢字で成り立ちを探り、文作りを楽しむ活動、漢字音読名人で仲間と聞き合う活動、書き名人での創作文づくりの交流など、学びにくさのある子も含め全ての子が確実に学びに向かうようになります。
2.文章で行う
今、学校で行われている一般的な漢字学習の評価は50問テスト等で、穴埋めの漢字が書ければ習得できたとみなしています。単漢字(熟語)さえ書ければ、文章の読解も作文も自由にできるようになるのでしょうか?否、です。漢字は文章の文脈の中に置いてこそ正しく読め、正しい使い方が理解できるのです。また、文章を十分に読みこなしていく中で正しい漢字の書き方・使い方も定着していくのです。
本記事で提案する漢字教育は「文章を基礎として読み・書きの力を育てる」ことを学びの主軸に置いています。
「一日一漢字」から「漢字音読名人」「漢字書き名人」に至るまで、同一の文章を繰り返し読み、書く中で、また漢字を使った文作りに取り組む中で「文章を読む」「文章を書く」力が着実に育っていきます。

3.読み優先
重い脳障害で、5才になっても全くひらがなが理解できなかった子が「莓」という漢字をたった一度見ただけで「いちご」と読めるようになったというエピソードがあります。身近な言葉を全てルビ付き漢字で見せていったら、一年生で平均数百字の漢字が読めるようになったという大正時代の実践もあります。子どもは、一年生段階で約6000語の言葉を獲得しており、獲得している言葉と漢字が結びつけばたやすく読めるようになるのです。
今、学校で行われている一般的な漢字学習は、「読み書き同時進行」むしろ「書き優先指導」であり、子どもたちにとっては学びにくい形なのです。
【読み優先の漢字教育】は、「漢字音読名人」で読みの習熟を図り、その上で「書き名人」で書きの定着を図るという子どもたちが学び易い学習過程になっています。
4.漢字教育
本記事で提案する漢字教育は一日一漢字、漢字音読名人、漢字書き名人、すべて一貫して「子ども同士」を主軸に置いて行います。子ども同士の対等な一対一の関係で自由に伸びやかに学び合うことで、どの子もが教室を自分の居場所として実感し、自己肯定感をもつようになっていきます。
「漢字指導」や「漢字学習」ではなく、「漢字教育」を【読み優先の漢字教育】シリーズ全4記事で提案してゆきます。 冒頭(はじめに)の関連4記事を是非ご参照ください。
FAQ(この漢字教育について、よくある質問)
Q:この漢字教育の良さは分かりますが、現状では時間的な余裕が無く、取り入れることが難しいのですが。
A:例えば、国語の時間、新出漢字の学習で「一日一漢字」を使って見る、すきま時間に「漢字音読名人」を試してみる、漢字ノートに創作文作りのスペースを設けるなど、現状で取り入れられそうなところからやってみましょう。
Q:チェックをすぐにもらえる子供となかなかもらえない子供がいます。子供たちの間に進度の差が出てくることにはどう対処すればよいですか。進度が遅れがちな子供にはどのような支援をすればいいですか?
A:漢字音読名人の取組は、競争ではなく、その子のペースで進めば良いのです。 「君はこの一週間でどこまで読めるようになりたい?」とその子なりの目標を立てさせ、「じゃ、そこまでがんばってみよう」という声かけをしましょう。 また、いつも聞き合い活動である必要は無く、みんなで音読練習をする時間にしてもいいのです。みんなが自由に音読練習しているときに、「読むのが難しい子はおいで、先生と一緒にやろう」という形をとるのもいいでしょう。
Q:5年生の担任をしています。前年度までの漢字学習がしっかりとできておらず、学力が3年生や2年生のレベルの子供がけっこうな人数います。そんな中で「一日一漢字」を進めてもよいのでしょうか。
A:「一日一漢字」は未知の漢字との出合いですから、レディネスが無くてもやれます。また、例文の中には1年~4年の既習漢字がたくさん用いられており、それらを全てルビ付きで先生と一緒に読む練習をします。そのため、下学年の漢字も5年生漢字を扱う中で読めるようになります。(音読名人を併用されると更にその効果は高まるでしょう)。学習を進める中で、繰り返し復習の機会が生まれるのが「一日一漢字」の教材の良さでもあります。ですから、5年生であれば5年生の漢字を一日一漢字ずつ、進めていただければよいと思います。
Q:ぜひ学校全体で取り組みたいと考えていますが、4月の職員会で提案する前に児童費の予算で漢字ドリルがあがってしまいそうでなかなか難しそうです。あまり乗り気でもない職員もいます。うまく学校全体に広げる手立てはないでしょうか。
A:まずは先生方にこの漢字教育をを知ってもらうことからから始めましょう。現行の漢字指導に疑問を感じている先生ならきっと共感してくれるでしょう。
そして、新出漢字の指導に「一日一漢字」を使ってみる、教科書の音読練習の代わりに「漢字音読名人」を使ってみる、漢字ドリルの使い方をこの漢字教育の考え方に沿って少し変えてみなど、現状でできそうなところを試してもらう、という提案をしてはどうでしょうか。手応えを感じる先生が増えてくれば、全校的な取組の提案も可能になるでしょう。
Q:評価のためのまとめのテストはどのようにするとよいですか。
A:5問ずつの確認小テストも作成しています。週に一度は小テストで確認するというのも有効です。答え合わせは、隣同士で交換してチェックする形にすれば、教師の負担はありません。
Q:朝、15分ぐらいを漢字学習に充てることができそうなのですが、「一日一漢字」「漢字音読名人」「漢字書き名人」それぞれに、何分ずつぐらいを費やすといいでしょうか。ペース配分をお教えください。
A:15分で3教材全部扱おうとすると上滑りになり成果も得られにくくなります。
朝の15分は、
①一日一漢字(10分)
※1日2漢字扱う場合はコンパクトに1漢字5分で
②漢字書き名人(5分)
※音読で習熟し字の形もイメージできるようになっている漢字(3日~1週間前に習った漢字)。筆順確認と単漢字練習を行い、残りは家庭学習とする。
★漢字音読名人は、毎日の家庭での音読練習10分と、週3回程度国語の時間5分を使って聞き合い活動、という形で行う。
プロフィール
井上知子
臨床心理士
大津少年センター心理相談員
上野芳樹
滋賀県の小学校元校長。
~子どもの主体を起こし、文章で行う~読み優先の漢字教育研究会のメンバーが「白川漢字教育賞」最優秀賞 「弘済会しが教育賞」県教育長賞等、受賞
滋賀県下20校以上で実践中・京都府でも実践校が生まれています。


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