ICTを活用した授業は難しい?

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作成者: 永野 直さん

1 ICT活用は難しいか

授業でICTを活用するとき良く聞かれるのが先生方の「難しい」「できない」「わからない」といった言葉である。

千葉県立袖ヶ浦高等学校の情報コミュニケーション科では生徒が一人1台のiPadを所有し,さまざまな授業で利用している。外部の先生からは,「先生方が指導できるのか?」「教員の研修はどのくらいやっているのか?」などの問い合わせが多い。この科がスタートして3年が経つが,「それほど心配することはない」というのが実感である。

これまでのICT活用では,PCの操作,設定,プロジェクタなどの外部機器との接続など,ある程度コンピュータに詳しい知識がないとなかなか利用することが難しかった。また,教室までの持ち運びなど,準備に手間と労力がかかることが多かった。

iPadなどのタブレット型コンピュータは主に画面を直接指で触ることで操作を行う。これまでのICT機器よりも操作が直観的であると言え,詳しい知識や技能は必要がない。

同様の理由から,生徒が各自の端末を利用するにあたって,教員が一操作ごとにやり方を説明する必要がない。生徒はすぐに使い方を覚えてしまうからである。

たとえそうではあっても,「教員が使いこなせないのはまずいのではないか」との心配も良く聞く。しかし,これまで行ってきた様々な授業を見ると,iPadを使った素晴らしい授業を実践した先生と機器操作の知識と習熟度は全く関連がないと言ってよい。中には,教員はiPadを全く触れずに,素晴らしいICT活用授業を行っている先生もいる。

「ICT機器を使うために,どんな授業にするか」と考えてはならない。つまり,ICT活用は「ICT機器を使う」ことにあるのではなく,その「授業のねらい」に沿って,生徒に「どんな活動をさせ」,「どんな力をつけさせるのか」が重要なのである。それらのねらいを達成しようとするとき,ICTが役に立つ場面があるのであれば,使えばよいのである。

iPad活用の例

以下は本校でiPadを用いて行った授業の例である。

1.家庭科

裁縫など実習を行う手順を説明する際,動きがないために針の動きや布の動かし方などを説明することは難しい。動画教材を作るにしても,これまではビデオカメラで撮影し,コンピュータに接続して動画を取り込み,動画編集ソフトで編集を行う必要があった。これらの操作はかなりハードルが高いと言え,コンピュータ操作に詳しい一部の教員しかやれなかったと言って良いだろう。

しかし,本校の家庭科の教員は,コンピュータに詳しいわけではないにもかかわらず,iPadを購入してすぐに,自作の動画教材を作成し,生徒各自に閲覧させることができたのである。この動画を見てから実習を行ってみると,生徒は手順をよく理解しており,課題のできもよく,また実習にかかった時間も短かった。生徒にとってもわかりやすく,学校や家でもいつでも見ることができるため,事前学習に大変効果があった。

生徒にとっても有効な教材であったが,その作成にあたっても,細かな知識は必要とせず,内蔵カメラとアプリ(iMovie),(Dropbox)を使って撮影,編集,インターネットへのアップロード,生徒への配布が実現できたのである。それらの操作はほぼ画面をタッチするのみであり,全く難しいことはない。

このように,これまで難関であったことが,デバイスの変化によって簡単に実現できるようになったことは,生徒,教員ともにとって,大きな意味を持つといえる。

2.古典

漢詩の作品を学習したのち,まとめとして「作品のあらわす情景を,写真を使って表現する」という授業があった。この授業では,教員は一切iPadを使っていない。ただ,指示をし,生徒に課題を作らせ,電子黒板に各自の課題を表示させる。(ミラーリングの操作も生徒各自が行う)

教員は,課題のねらいを説明し,出来上がったものに対して問いかけながら生徒に発表させ,クラスの中で作品を批評し合う場面を作るのである。つまり,生徒はiPadを使ってはいるが,そこには,「生徒が作品を鑑賞する中で感じ取った情景を,視覚的に表現し,他者に対して言葉で説明する」という明確なねらいがある。教員はその流れをつくり,問いかけ,「作ってね」,「画面に映してね」,「説明してね」などと促しながら授業をコントロールしていく。そこにICTの知識などは全く必要がないのである。

「生徒の感じた情景を視覚的に表現させる」ことは,かつての授業では難しかった。その解決としてICTを「道具」として使ったわけであり,生徒の個性,創造性をうまく授業に取り入れている。

教科のICT活用とは

つまり教科のICTで必要なことは,機器操作に対する知識技術ではなく,生徒にどんな学習活動をさせ,その中のどんな場面でICTが効果的に活用できるか,というイメージが明確に持てるかどうかの問題であろう。
 ICTが効果的に使える場面はたくさんある。文部科学省でも『学力向上ICT活用指導ハンドブック』
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/07/08070107.htm
が公開されている。以下に例を挙げる。

1「写真や図表を大きく提示して指示を明確にします」

<実践事例の例>
教師の動きを繰り返して見せる(小学校 国語(書写))【本体P5】

2「見せながら話して、わかりやすく説明やまとめをします」

<実践事例の例>
動画を見せて理解を深めさせる(小学校 理科)【本体P7】

3「身近に感じる教材を使って関心や意欲を高めます」

<実践事例の例>
生徒が自分たちで考えた教材を活用させる(中学校 外国語)【本体P9】

4「学習教材やソフトウェアで知識や技能を定着させます」

<実践事例の例>
グラフ作成ソフトで理解を促進させる(高等学校 数学)【本体P11】

5「インターネットを使って最新情報を収集したり、その便利な機能を利用します」

<実践事例の例>
地図サイトでリアリティのある地形を確認させる(小学校 社会)【本体P13】

このほかにも,Web上にもさまざまな実践が上がっている。このような情報を効果的に活用して,ICTを目的でなく「手段」,「道具」として扱った素晴らしい教育実践が蓄積されていくことを期待したい。

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