割り箸で社会の変化を捉えようー考え、意見を言える授業ー(立命館小学校 柳沼孝一先生)

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目次

1 はじめに

2014年10月18日、「立命館小学校社会科授業研究会」に参加し、柳沼孝一先生の3年生社会の授業を見学しました。コンビニ弁当の割り箸という身近な題材を使って森林や環境の問題にまで踏み込み、子どもたちの「考える」をとことん引き出す授業を紹介します。

2 実践内容

①実践のアイデア

「変わるわたしたちのくらし」という単元で通常行われる、「昔の道具」の学習への疑問がこの実践のきっかけです。昔の道具は自分たちの生活とあまりにもかけ離れているが、くらしの変化を考える題材としてふさわしいだろうか。より身近に「わたしたちのくらし」を考えるため、コンビニ弁当の割り箸を題材にした今回の実践のアイデアが生まれました。

②指導案(本時1/10)

■本時のねらい

「コンビニ弁当付属割り箸が10数年前からなくなった社会的な事象から、自然環境とのつながりでわたしたちのくらしの様子が変わってきていることをとらえることができる。」

ものが変わるには、必ず環境とのかかわりや社会背景があります。ものが変化したということだけでなく、「なぜ変わったのか」という原因を考える視点を持ち自然環境とのつながりでくらしの変化を捉えることが大切です。

■本時の学習展開

③授業の流れ・ポイント

1、20年前のコンビニ弁当は、割り箸がラッピングで付属されていた事実を知る。(5分)

*今日のテーマ「20年間のくらしの変化を考えよう!」を確認。
*朝買ったコンビニ弁当を取り出す。「20年前風のお弁当に加工してきました!」
【ポイント】実際にお弁当を用意して子どもたちの興味を惹く。
*「何が20年前風かな?」を子どもたちに考えさせる→子ども「お弁当の中に割り箸が入っている。」
*「今はどうなの?」を確認。→子ども「お箸は、いりますかって聞かれるんだよ。」
【ポイント】授業のテーマである「変化」について、子どもたちに考えさせることで、それを意識させる。

2、コンビニ弁当に割り箸を付けるべきかどうかの意見を交流する。(10分)

*意見を聞く:「お箸は、いりますか?」と子どもたち一人ずつに聞いて回る。
理由を聞く:「『いりません』の人、起立!理由を言ってみよう。」
・エコ
・木がもったいない(捨てる)
・虫や動物たちに悪い
理由を聞く:「ハイ!の人はどうして?理由を聞いてみよう」
・使った方がエコ
・便利
・タダ
・また使える
【ポイント】子どもたちの考えを聞き出し、問題意識を高める。
*「お箸は木からできている」ことを確認。
*「木は原料で、工場に出荷する。それを加工して店に出荷する。」という流れを確認。
【ポイント】「原料」「出荷」「加工」という言葉など、社会科で必要な基礎知識の定着を図る。

3、2つのグラフと写真から「割り箸」の生産の現状と森林保護・育成を考える。(25分)

*資料への導入:「このまま議論していても進まないから、先生が2つ資料を持ってきたよ。それを使って考えてみよう。」
*グラフへの導入:「割り箸工場は全国にどれくらいあるかな?」
・200くらい
・昔は300くらいだが、今は減っていると思う
→「本当に減っているのかな?グラフを見てみよう。」
【ポイント】先に予想させることでグラフに興味を持たせる。

<グラフ①割り箸工場数の変化>
*題名の確認:「グラフの題名、みんなで読んでみよう」
*指標の確認:「縦軸は何かな?」「横軸は何かな?」
【ポイント】グラフの読み取りの基礎知識を確認する。
*グラフの読み取り:割り箸工場が減っていることを確認。「一番多かったのは何年で、いくつ?」「今はいくつ?」
グラフの読み取り:「このグラフでわかること(どうして減っているのか)をノートに書いてみよう。」
・木がなくなって工場が減っている。
・いらない人がいるから作るのも少なめにしている。
発問:「では日本人は割り箸を使わなくなったのかな?」
…子どもの意見に対して事実を確認。
→割り箸の消費量は今も昔も20億膳である。
「今は、何膳だと思う?」「20億膳だよ」
「では20年前は?」「実は、20年前も20億膳なんだよ」
発問:「使う量は変わらないのに工場の数が減っているのはどうしてかな?」
・作るスピードが速くなった。
・工場の大きさが大きくなった
*事実の提示:「実は97%が外国のお箸なんだ。」
*「木がなくなって、ってさっき言ってくれていたよね。」
*グラフ②への導入:「では日本の木がなくなっているから外国から97%輸入しているのかな?」

<グラフ②日本の森林蓄積量の変化>
*題名の確認:「題名をみんなで読んでみましょう」
*言葉の確認:「ちく積の意味を辞書で調べてみましょう。」
【ポイント】言葉の確認など、社会以外の基礎知識の定着も図る
*グラフの読み取り:「木の量は、増えてるんだね」
発問:「工場は減っているのに、木の量が増えいてるのはなぜかな?」
*意見の発表:意見がある人は起立させ、みんなに言わせる。
*予想させる:「木の量はこのまま増えていくのかな?」「この後減るのかな?」
*挙手させる:「このまま増えていくと思う人?」「減ると思う人?」「変わらないと思う人?」
発問:「今までのことを考えた時、割り箸はどんどん作ってコンビニ弁当につけた方がいいと思う人?」「コンビニ弁当にはつけないで、できるだけ作らない方がいいと思う人?」
【ポイント】子どもたち全員に自分の意見を持たせる。
*教師の立場の表明:「先生は、割り箸を使った方がいいと思います」
【ポイント】教師の立場・意見を明確に提示する。子どもたちが再考するきっかけをつくる。
*次の資料への導入:「それはなぜかというと、最後にこの資料を見てみましょう。」

<森林の写真>
*発問:「ABどちらが健康な森林でしょう?」
A:木が生い茂っている森林
B:木が間伐されてまばらに生えている森林
*挙手させる:「Aだと思う人?」「Bだと思う人?」
*回答:「Aはこうなります」「Bはこうなります」
A:放置され荒廃した森林
B:間伐され健康的な森林
*発問:「さぁこれはどういうことでしょう?」

4、コンビニ弁当の割り箸をどうすべきか再考する。

発問:「環境を考えて木を切らないというのは本当によいことなのだろうか?」
発問:「本当にお弁当にお箸をつけないのがよいのか?」

3 子どもに資料を持ってこさせる

この授業の最後に、「次の時間、割り箸を付けた方がいいのかどうかについての資料を持ってきたい人は持ってきてください」と言います。授業の最後に先生が子どもたちの意見を確認すると、ほとんどが「割り箸を付けない方がいい」と答えました。しかし、先生は「割り箸を付けた方がいいと思います」と言います。すると、「先生はどうしてつけた方がいいというのか」「先生の言うことは正しいのか」子どもたちは気になって、資料を持ってくるのです。実際、「先生は日本の木の量が増えているといっていたけど本当にそうなのか」、日本の森林状態について調べてくる子どもや、「世界の森林の破壊全図」を持ってくる子どもがいたそうです。この取り組みによって、子どもたちに「追究する姿勢」を育てることが出来ます。

4 実践者プロフィール

柳沼孝一先生
立命館小学校教諭
著書に、『授業の工夫がひと目でわかる!小学校社会科板書モデル60』がある。

5 編集後記

はじめコンビニ弁当が先生のカバンから出てきたときから、ぐっと授業に引き込まれました。子どもたちがいきいきと楽しそうに「考え」、「自分の意見を言う」様子が印象的でした。そんな議論の活発な授業の中でも、グラフを正確に読み取り、「根拠をもって意見を言う」練習の要素が組み込まれていたと思います。「変化がなぜ、環境とのどういうつながりで起きたのか」を考えるこの授業は、これからの社会の変化の在り方を考えることにもつながっていく、非常に有意義な学習だと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 森七恵)

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