1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
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2 実践内容
もしかしたら自分は加害者ではなかったか?」と自分を振り返りました。
松谷みよ子さんの絵本に『わたしのいもうと』(偕成社)がある。実話をもとにして書かれた作品である。この作品をもとにいじめについて考えた。
わたしのいもうと (新編・絵本平和のために) 松谷みよ子・文 味戸ケイコ・絵
「『わたしのいもうと』という絵本を読みます。松谷みよ子さんという人が書きました。」と絵本の紹介をした。最後までは読まずに、妹が学校に行かなくなるところまで読んだ。
話が進んでこの後、妹にどうなってほしいですか?
- 元気になった。
- また学校へ行くようになった。
いじめた友達はこの後どうなったと思いますか?
- いじめをしなくなった。
- また仲良くなった。
このように予想してから物語の後半を読んだ。結果は子どもの願いとは全く違ったものであった。妹は自殺し、いじめっ子は笑いながら元気いっぱい。あまりの結果に教室は重い空気に包まれた。
このいじめた子たちにどうしてほしいですか?
- 妹に花をあげてほしい。
- 妹のお葬式に出てほしい。
- 妹に謝ってほしい。
- お墓参りをしてほしい。
このような考え方がほとんどであった。でも妹はもう死んでしまったのである。
謝ればすむ問題ですか?花をあげれば許される問題ですか?
- すまない
- 許されない
という返事がすぐに返ってきた。
次にこの絵本のテーマについて迫った。
松谷さんは絵本の最後にこう書いてあります。( )の中にはどんな言葉が入ると思いますか?
あなたにとっては( 1 )のつもりでも、私にとっては( 2 )の問題なのです。
- 冗談、遊び
- 命
子ども達はすぐに正解を言い当てた。松谷さんは言う。「遊びのつもりでも私にとっては命の問題なのです」
ここでいじめの定義について考えてみることにした。
いじめかどうかを決めるのは誰だと思いますか?
(先生や親・やっている人・やられている人)
全員が〈やられている人〉だと考えた。理由は、
- やられている人はやられている人だからわかる。やっている人はやっていてもわからない。
- やっている人は遊びと思っていても、やられている人は痛みを感じているから。
- やられている人は本当にやられているから、その痛さや悲しさを味わっている。
いじめというのは、やられている側の問題である。やられている人がいじめられていると思ったら、もうそれはいじめである。自分ではやっていないと思っていても、相手にとってはいじめになる場合があることを確認した。
ここで自分のことを振り返った。
あなたはいじめをしたことが(ある・ない・あるかも)、それはどんなことですか?
よく考えてみれば、知らず知らずのうちに人を傷つけてしまうことは誰にでもある。
全員が〈ある〉〈あるかもしれない〉に○をつけた。
今までにいじめをしたことがあるかもしれないと思う人は立ちましょう。
13人が立った。
「よく立ちましたね。勇気がいったことでしょう。正直者はこれから伸びていける人です。昨日までの嫌な自分と「さよなら」をするチャンスです」
こういうと全員が立った。一体どんなことをしたのか話してもらいました。
- 友達に「キモイ」って言ってしまった。
- 追いかけたり「電気ショック」とか言って、おなかをくすぐったり「地球投げ」っていって振り回したりした。
- 妹とケンカをして、押し合いをして泣かせてしまった。
- 友達の話を聞いてあげない。上靴とかを隠しちゃったことがある。
幼かったころのことも含め、いろいろな内容が出てきた。では今はどうなのであろう。
今、このクラスにいじめはあると思いますか?
(ある・ない・ちょっとだけある)
〈ない〉に○をつけた子は一人もいなかった。では一体、何があると感じているのだろう。思い当たることを書かせた。
- 地球投げっていって地面にたたきつけたりした。
- 人の悪口を人といっしょに言っている。
- 仲間はずれにする。
- たたいたり追いかけたり倒したりいやなことを言うこと。
いくつか思い当たることが見つかった。
いじめは、やられている人が「いやだ」と感じるかどうかです。その人のところに行って、嫌だったかどうか聞いてみなさい。
「いやだ」と思っている場合があることがわかった。いじめがないと言い切れないことがわかった。どんなにいいクラスでもいじめの芽は起きること、すばらしいクラスとそうでないクラスの違いは、その問題を自分たちの力で解決していけることを話した。
これからの私たちにできることは何でしょう。
- 皆で仲良く遊ぶ。
- いじめや「いやだ」と思うことはやらない。
- 自分は遊びでも、やられている人はすごくイヤだから、その気持ちを考えた方がいいとわかった。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
松谷みよ子さんの『わたしのいもうと』という本を題材に、いじめについて考える学習です。自分はいじめをしたつもりがなくても、相手が嫌な思いをしていたらいじめなんだよ、ということを痛感させられる授業です。素直に自分の過ちを認めて謝ることはなかなか難しいと思いますが、子どもたちが立ち上がって自分の経験を話し、向き合ったことに驚きました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 内藤かおり)
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