農家のしごと(前編)「社会・3年生」(シリウス)

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作成者:Mana Tanaka (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

お茶農家のしごと1~朝市の見学に行こう~

スーパーマーケットの学習では、主に販売や流通のことについて学んだ。この単元ではその商品である農産物の生産について学習する。スーパーで当たり前のように売られている商品には、さまざまな工夫や努力があることを学ばせたい。
 
学校隣の農協で朝市をやっているので、この朝市の見学から授業を始めた。

「農協の朝市を見に行こう」

朝市には、農産物はじめ洋服、茶碗、農機具など様々な物を売っている。その中でも、特に農産物に限ってどんなもの売っているのかを見学した。

「売っていた野菜を見て思ったこと・ハテナ?」

〈思ったこと〉
* スーパーより安い。スーパーより3倍安い。
* 安いものは台の下に置いてあって、高い物は台の上にあった。
* 人の数が、スーパーより何倍も違う。
* スーパーは高いけれど、ここは安い。
〈ハテナ?〉
* なんでスーパーより安いのだろうか。自分で作ったものだろうか。
* スーパーの3倍はすごい(安い)。なんで安いのかな。
* 野菜はなんで数が少ないのか。
* なんで葉っぱのついた野菜がいっぱい売っているのだろう。
* 100円が多くて安かった。でも、お茶が高かった(1500円)のはなぜか。
* なぜこんなところで売っているのか。
* 野菜はどうやって運んでくるのか。

お茶農家のしごと2~どんな仕事をしているのだろう~

朝市の見学に出かけて気づいたことの一つに、お茶は他の野菜に比べてとても高いということであった。これを学習問題にすることにした。

「お茶は1500円で高かった。お茶を作るためにどんな仕事をしていると思いますか?」

子どもたちは思いつくものをあげていった。するとこのような仕事が出された。

  • つるを取る。
  • 虫が来ないように薬をまく。
  • お茶の葉を刈る。
  • お茶の葉を摘む。木を刈る。
  • 毎日世話をしている。
  • 声をかけてあげる。茶畑を平らなところに作る。
  • 虫よけスプレーをかける。
  • 雑草を抜いてあげる。
  • お茶の木に網をかける。
  • 肥料をまく。

内容を整理し、疑問に思うこと出させた。
「出てきた意見の中で、おや?と思うことはありますか。」

虫については〈虫を捕る〉〈虫よけスプレー〉〈網をかける〉の3つの方法が出ていた。どれが本当なのか、今の時点ではわからないので、見学に行って質問をすることにした。そのほかに、おや?とよくわからないものとして、

  • 虫はどうやって防いでいるのか。〈取る〉〈スプレー〉〈網〉のどれか。
  • 雨水以外にも水をまくのか。雨の水だけで十分のような気がする。
  • お茶畑は山と平らなところと、どちらの方がよいのか。
  • 草取りは本当にするのか。草の生えるところが多いので、取りきれないのではないか。
  • お茶の木に声をかけているのか。別に声をかけなくても育っているように思う。
  • 網をかければつるが生えてこないから、つる取りはしていないのか。
  • お茶づくりで、大切なことは何だろう。

お茶農家のしごと3~お茶畑に行こう~

お茶を作るためにどんな仕事があるのか想像するなかで、いくつかの疑問が生まれた。そこで、お茶農家のKさんの家に出かけて、茶畑の見学やお茶づくりについて話を聞くことにした。

Kさんからお茶づくりについての話を聞こう。

Kさんからお茶を作るための作業にはどんなものがあるのか、使っている機械や薬についてお話を聞かせていただいた。子どもたちは話の後に、お茶畑を見学させてもらったり、お茶の機械を触らせてもらったりした。

次にお茶づくりの仕事の疑問について質問をした。

クラスではよくわからなかった疑問について、Kさんに質問をして答えを教えてもらおう。

Q1 虫はどのように防いでいますか。〈とる〉〈スプレー〉〈網〉のどれか。
ほとんどは農薬。20日間経てば飲んでもいい(害のなくなる)薬など使っています。
Q2 草取りは本当にしていますか。
雑草が小さいうちに、草枯らし(農薬)を使っています。大きくなると取るのが大変になる。
Q3 雨水以外にも水をまきますか。
普通はまきませんが、夏など雨が降らずに日照りのときには水をまきます。水をまくのは重労働です。
Q4 お茶の木に声をかけていますか。
なんでもそうだけれど、愛情をもって育てるとおいしいものができます。どうでもいいと思って作ると、そんなお茶しかできません。話しかけながらお茶を育てています。
Q5 山と平なところでは、どちらがよいですか。
山のお茶は山のお茶の特徴があります。山は日当りが少ないので、葉肉が薄く、平地は日が一日中あたるので、葉肉が厚いです。できた場所によって色や味が違ってきます。
Q6 お茶の木に網をかければ、つるは生えませんか。
網は防霜ファンの代わりに使っていて、つるを生やさないためではありません。網をかけた方がお茶の成長が早いです。
Q7 お茶づくりで大切なことはなんですか。
お茶の気持ちを分かってやって、お茶を作ることです。そろそろ病気が出そうだぞ、とお茶のことをよく見え守ってあげること。

見学して気がついたこと、ハテナ?

  • お茶の土の中に虫がいると分かった。機械でどんなことをしているのかが分からない。お茶の木は横に長いと分かった。
  • お茶畑のお茶はもう花ができている。機械は大きいのと小さいのがある。機械で上に大きくなるのを防いでいる。お茶畑はなんで横にのびるのか。
  • 花が枯れたり落ちている。大きいのや小さいお茶刈り機がある。消毒の機械がある。木が大きくならないように、機械でくいとめている。
  • お茶畑に模様がある。葉の大きさが違う。

Kさんが「よいものをとってみんなに提供し、いいお茶になったなぁと言ってもらたい」と、おっしゃったことがとても心に残った。

お茶農家のしごと4~お茶の栽培カレンダーをつくろう~

お茶畑を見学させてもらって、たくさんのことが分かった。お話をもとに1年を通してどのような仕事があるのか。表にまとめてみることにした。

お茶には〈土づくり〉〈消毒〉〈木の世話〉〈つみ取り〉の仕事がある。子どもたちにわかりやすいように、何月に何の仕事をするのかの表を作り、それをもとにお茶の栽培カレンダーを作った。

お茶の栽培カレンダーを作ろう。

表にしてみるとわかるのだが、こんなにもたくさんの仕事がある。お茶は摘み取りの頃だけしか仕事をやっていないように見えるが、そんなことはない。1年中ずっと世話をしている。Kさんが「お茶を見に行かなければ、そんな風なお茶しかできない。」と言ったことがよくわかる。そういえば、朝市でもお茶だけは1500円で売っていた。

お茶の栽培カレンダーを作って、分かったこと・思ったこと。

  • お茶を育てるのに、週に3回くらい仕事をやっていると思う。いっぱい仕事をしていて、薬とかをまいている。薬とか機械でお金を使っていると思った。
  • 朝市でお茶だけは1500円でした。お茶は薬とか機械とかお金がいります。思ったより多かったです。肥料とか消毒もかかるのでしょうね。
  • 朝市でお茶が1500円で、なぜかというと、お茶は肥料とか、お金がかかるから。
  • 1年に仕事を21回もやっていました。朝市のお茶は1500円もしました。僕はこう思いました。1年に21回の仕事をしてお茶になったから、1500円もすると思います。お茶畑は、ほったらかしに見えるけれど、ほったらかしじゃないし、機械を使って精一杯育てていると思う。
  • 薬代とか機械も高いのに、そんなにお茶がやりたいのかな。大変な仕事なのに。お茶を心から愛しているのかなと思いました。いろいろな仕事をして、お茶ができるんだな。

お茶畑の見学と並行して、お茶畑マップを作った。

お茶畑が学区のどこにあるのか、お茶畑マップを作ろう。

前期に作った学区の地図にお茶畑をつけたしていった。こうして、お茶畑マップを作ってみると、平らなところにあったり山にあったりすることがわかる。

山と平らなところにある。山と平らなところではどっちがよいのか

という疑問が出てきた。

お茶農家のしごと5~問題づくりをしよう~

社会では、見たこと聞いたこと調べたことをもとに、不思議に思ったこと(ハテナ?)を問題に取り上げる授業形態が合っている。お茶畑の見学をして問題づくりに取り組んだ。

お茶畑を見てハテナ?を作ろう。

  • 高い扇風機みたいので、何をしているのかな。なんで肥料をまくのか、何で大きな機械があるのか。
  • なぜお茶に花ができるのか。なぜお茶の上に扇風機があるか。なぜお茶の列は真っ直ぐなのか。
  • すごい数のお茶は同じ日に作るのか。お金は何円かかったか。切れる機械は切れ味が違うか。

こうしてたくさんの疑問が出された。次にこれらの問題を精選していった。

班ごとハテナ?を出し合って、わかる問題は班ごと解いていこう。

こうすることで、簡単な問題は答えが分かり、子どもにとってよい問いが残っていく。

Q お茶はなんで横にのびるのか。
機械で上に伸びているのを防いでいるから。
Q お茶畑は、なんて緑色なのだろう。
植物だから。
Q なんで機械を使っているのか。
機械を使うと、早くておいしいお茶ができるから。
Q 機械は一つではいけないのだろうか。
それぞれに専用の(目的の)機械だから。
Q なぜ1年に21回もいろいろな仕事をしているのだろう。
おいしくしたいから。

このように、自分たちの力である程度の疑問を解いていった。ある程度問題が解けたところで

班の人で話し合ってもわからなかった問題を出してみよう。

こうして残った問題を出してみると、どの班も似たような問題が残った。〈お茶畑の形〉〈防霜ファン〉〈機械〉である。このことについて学習を進めていくことにした。

〈お茶畑の形〉について
* なんてお茶畑はかまぼこ型なのか。
* お茶畑はなんで横に長いのか。

〈防霜ファン〉について
* 扇風機は何のためにあるのか。
* 扇風機で何をしているのか。
* なんで大きな扇風機があるのか。

〈機械〉について
* 機械は3つで何円したか。
* どうして機械を使うのか。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

教室内での学びだけでなく、朝市やお茶農家を実際に訪れて学べるところがとても魅力的だと感じました。解決できる疑問は自己解決し、解決できなかった疑問を3つに残すという流れが良かったです。子どもたちの疑問を精選することで、質の高い学びができると思いました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 田中真奈)

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