モチモチの木5 豆太と医者様は同じものを見たか(シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。

http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

豆太と医者が見たモチモチの木は同じなのか議論

 医者様におぶわれた豆太は、モチモチの木に灯がついているのを見ます。同じものを医者様も見ますが、二人の見たものは同じかどうかを検討しました。

そこでこのように問いかけてみました。
「モチモチの木に灯がついている」とありますが、豆太と医者様は同じものを見たのでしょうか。(同じ・違う)

 〈同じ〉と答えた児童は3人、〈違う〉と答えた児童は8人 と人数に差はありましたが、討論ではどちらの意見の児童もがんばり白熱しました。

〈同じ〉 3人

  • 医者様が豆太に光っているわけを教えたから。雪が降っているから明かりがついたように見えるんだべ、と説明している。
  • 医者様は何で光っているか豆太に教えている。同じところを見ているから。

〈違う〉8人

  • 豆太が最初にモチモチの木を見て、そのあとに医者様が見ている。医者様が「あ、ほんとだ」と言うまでに間があるから。
  • 豆太は「灯がついている」と言っているけれど、医者様は「木の後ろにちょうど月が出てきて…」と言っている。言い方が違う。
  • 「勇気のある子どもしか見られない」とあって、医者様は子どもじゃないから。

 〈違う〉派が意見をたくさん出したので、〈同じ〉派が「意見を変えたいんだけど…」と言い始めました。もう少し考えさせたかったので、教師が応援しました。

〈違う〉という意見が多いけれど、モチモチの木は1本しかないんですよ。豆太と医者様は同じ木を見るしかないんじゃないのですか。
 こうして応援をすると〈同じ〉派が元気を取り返しました。

〈同じ〉3人

  • 豆太は「灯がついている」医者様は「灯がついたように見える」と言っている。二人とも灯と言っているから同じ。
  • 医者様は子どものころ勇気のある子どもだったから、モチモチの木に灯がついているのを見たことがある。だから豆太が見えたのと同じように見える。

〈違う〉8人

  • 豆太は医者様が見たモチモチの木とは現象がちがって見えている。
  • 医者様は今夜、灯がつくとかどうかわかんない。豆太はわかっていた。豆太はわかっていたから、モチモチの木に灯がついているのを見ることができた。だから二人は違うものを見たと思う。
  • 医者様と豆太は同じものを見たけど、豆太はじさまから教えてもらっていた。医者様は知らなかったから光っているだけと思った。

再度の話し合いの内容

この日の時間内では決着がつかなかったので、次の時間に再度話し合います。まず〈違う〉派から意見を述べさせました。

〈違う〉8人

  • 豆太は「灯がついている」と言っている。医者様は「まるで、灯がついたようだ」と言っている。灯がついているのは、灯がついているのを本当に見ているけれど、灯がついたようだは「ようだ」だから違う。
  • じさまは「山の神様のお祭りは、一人の子どもしか見ることはできねぇ」と言っている。お祭りを見られるのは、一人しか見られないし、子どもしか見られないから、医者様は見ていない。
  • もし医者様が見ているとおかしい。子どもだけしか見ることができねぇという言い伝えが狂ってしまう。
  • 医者様は「まるで灯がついたようだ。だども、あれは…」と言い訳をしている。後ろにお月様のあることを言っているから見ていないと思う。
  • 豆太には灯がついているように見えているけれど、医者様には灯がついていないように見えているから、違うと思う。

 こうした意見に対して〈同じ〉派も反論しました。

〈同じ〉3人

  • 医者様は「あっ、ほんとだ」と言っているから、同じだと思う。
  • 「灯がついたようだ」というのは、豆太と同じ木を見ていることだから、同じだと思う。

 前回とは反対に〈違う〉の方が優勢になったようです。これ以上意見の変更がなかったので、教師の考えを述べました。

教師の考え

医者様と豆太は確かに同じものを見ていますが、でもその見え方には違いがあります。豆太は「灯がついている」と言っているのに対し、医者様は「灯がついたようだ」と言っています。「ついている」と「ついたようだ」では全然違います。
 また、山の神様のお祭りは「一人の子どもしか」見ることができません。豆太がもう見ているのだから、おじいさんの医者様はもう見ることができません。だから〈違う〉と考えます。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス

1984年創立。

「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。

最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

(2015年1月時点のものです)

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

ただ文章を音読するだけでなく、内容についてみんなで話し合い、考えを共有することで、一歩踏み込んだ国語の学習になると思います。「モチモチの木」のみならず、他の様々な文章でも登場人物の気持ちについてみんなで考える学習方法は有意義なのではないでしょうか。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 桒野彩香)

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