知識構成型ジグソー法によるアクティブラーニングの実践

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作成者:Satoshi Arai (Edupedia編集部)さん

この記事は埼玉県立浦和第一女子高等学校国語科の板谷大介先生に執筆いただいたものです。先生は知識構成型ジグソー法に基づく授業を行われており、今回はジグソー法の概要、特長、手順、研究内容などについてご紹介いただきます。

板谷先生の具体的な実践については、以下の記事をご覧ください。
知識構成型ジグソー法による「舞姫」の授業
知識構成型ジグソー法による「永訣の朝」の授業
知識構成型ジグソー法による「入試小論文」の授業

1 知識構成型ジグソー法とは

知識構成型ジグソー法の概要

現在、筆者は知識構成型ジグソー法(以下「ジグソー法」)による授業改善の取り組みを実施しています。ジグソー法とは、故三宅なほみ東京大学名誉教授が提唱した、生徒同士の話し合いを重視した新しい授業スタイルです。今ではわが国のアクティブラーニングの最も有力なメソッドのひとつと考えられています。

詳細は、こちらを参照してください。

ジグソー法の特長

従来の教師が生徒に知識を一方的に教え込む、知識詰め込み型の授業スタイルでは、生徒が受け身の学びになりやすいのが問題でした。それに対し、知識構成型ジグソー法では、生徒同士が対話を通して、主体的、協働的に問題、課題に取り組んでいくことで、学ぶべき内容が真の知識として生徒に定着することを目指します。生徒は対話を通して互いに教え合い学び合いますが、人間は、そのように「教える」ということができるレベルになってこそ、その内容が真の知識として定着すると言えるのです。加えて、思考力、発想力、表現力、コミュニケーション力等、21世紀のグローバル社会で必要とされるさまざまな能力の育成にも効果的です。

また、故三宅なほみ先生もおっしゃっていたように、ジグソー法による授業の醍醐味は、生徒が、特に授業後の問いにおいて、教師の予想を(それは言い換えれば指導要領に基づき教師が設定した規準、基準、等を)はるかにこえる優れた、あるいはユニークな回答を書いてくる場合があることです。こうしたものを教師が十分に受けとめ、評価してこそ、将来、山積する世界の課題を解決して行ける、発想力豊かな人材が育成され得るものと言えるでしょう(三宅なほみ先生はこうした評価を「前向き評価」と名付けておられます)。

知識構成型ジグソー法の手順

以下1~6の部分は、CoREFホームページを基に作成しております。

  1. 教員が問いを設定します。この時、既に知っていることや、3つか4つの知識を部品として組み合わせることで解けるものになるように設定し、その問いを解くのに必要な資料を、知識のパートごとに準備します。
  2. 生徒、児童は、「問い」に対して一人で思いつく答えを書いておきます。
  3. 同じ資料を読み合うグループを作り、その資料に書かれた内容や意味を話し合い、グループで理解を深めます。この活動をエキスパート活動と呼びます。
  4. 次に、違う資料を読んだ人が一人ずついる新しいグループに組み替え、さきほどのエキスパート活動でわかってきた内容を説明し合います。同時に他のメンバーから他の資料についての説明を聞き、自分が担当した資料との関連を考える中で、理解を深めていきます。理解が深まったところで、それぞれのパートの知識を組み合わせ、問いへの答えを作ります。この活動をジグソー学習と呼びます。
  5. 答えが出たら、その根拠も合わせてクラスで発表します。互いの答えと根拠を検討し、その違いを通して、一人ひとりが自分なりのまとめ方を吟味するチャンスが得られ、一人ひとりが納得する過程が生まれます。この活動をクロストークと呼びます。
  6. はじめに立てられた問いに再び向き合い、最後は一人で問いに対する答えを記述してみます。初めの問いと終わりの問い(同じ問い)の解答を比べ、記述の内容が深まったか、記述の分量が増えたかで、授業の評価を行います。

2 埼玉県とCoREFとの連携の取り組みについて

埼玉県は、東京大学大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)と連携し、その指導で、2010年より、県内各教科の担当教員によるジグソー法の教材の研究開発と、その普及の取り組みをしてきました。
詳しくはこちらをご覧ください。
 当初少人数で開始したこの取り組みは県内で年ごとに大きな広がりを見せ、今では非常に多くの意欲ある教員が研究開発員として各学校でジグソー教材の開発に取り組み、全国からも非常に注目されています。
 詳しい内容は こちらを参照ください。

筆者も、事業開始時の2010年(平成22年度)から、本事業に参加しています。参加の理由は、もともと、「授業は生徒と教師の双方向的なものであるべき、なるべく生徒参加型の授業を目指すべき」との考えが持論としてあったことと、「先生がただしゃべっているだけの授業は、もう限界だろう」と感じていたことなどです。

3 筆者の作成した代表的な教材

筆者が作成した教材のうち代表的なものを以下の記事として「授業案」、「振り返りシート」等とともに掲載します。
知識構成型ジグソー法による「舞姫」の授業
知識構成型ジグソー法による「永訣の朝」の授業
知識構成型ジグソー法による「入試小論文」の授業
 ご興味を持ってくださった方は、そのままでも、あるいは各学校の実情に合わせてアレンジしていただいてでも、どのようなかたちでも結構ですので、ぜひ、これらの教材をご利用いただければと存じます。
 または、先生方ご自身がジグソー法の教材を作成する際の参考にして頂いても嬉しいです。

4 著者の参加している研究について

平成28年度の「未来を拓く『学び』プロジェクト」では、筆者をはじめ意欲ある埼玉県内102校の高等学校の先生方が、ジグソー法の授業の現行の学習指導要領にもとづく評価のありかたについて研究を行います。
未来を拓く『学び』プロジェクトについては詳しくはこちらをご覧ください。
 こうした研究を重ね、学習指導要領にもとづくジグソー法の授業の評価の方法を確立してゆけば、全国の先生方にも、より安心してジグソー法の授業を実践していただけるし、このメソードの一層の普及、21世紀型の生徒主体のこの授業スタイルの全国の先生方へのますますの広がりが期待できると考えます。

5 ジグソー法による先生方のネットワークの形成

ジグソー法について、筆者は個人的に注意しなければならない点があると考えています。それは、この方法は飽くまで型=ツールであり、コンテンツではない、ということです。従って、コンテンツの部分、すなわち、われわれが当然身に付けなければならない教科指導についての専門知識は今まで通り、今まで以上に身に付けなければなりません。もしも、内容自体よりもジグソー法で授業を実施する方が優先、ジグソー法で授業を行えばそれでよし、と考えるのであればそれは本末転倒だと思います。われわれは、これからも漱石や鷗外を読んだり、いろいろな評論を読んだり、源氏物語や平家物語を読んだり、論語や孟子を読んだり、更に言えば歌舞伎や文楽を観て感動したり、という国語の指導者として当然に為すべきことを決して怠ってはならない、と思います。
 しかし一方、ジグソー法という型=ツールの持つ驚くべき力も実感しています。なかでも、「ジグソー」という皆に共通の話題があることで、それを通じ勤務校以外のいろいろな人とつながることができる、という点は大きいです。

埼玉県では、ジグソー法の普及を図る研究開発員の先生方が授業デザインをどうするか、どのようなエキスパート資料を用意すべきか、等々、いろいろな相談、報告等をネットコモンズ上でやりとり出来るシステムを構築しています。学校内の閉じた空間から解き放たれ、前向きな意欲ある県内の先生方が地域や年齢の枠組みにとらわれずお互いにネット上で意見や知恵、時に悩みや相談事を出し合い、議論し合い、教材を作り、それをブラッシュアップし、さらに授業実践の結果(うまくいった点も反省点も)も共有できる。これは筆者にとってもとても元気や勇気、モチベーションを与えられるし、他の研究開発員の先生方も同様だと思います。そしてそうした先生方は確実に教科指導力、教師としての力量を向上させるのです。
 また、こうした県内のネットワークとは別に、CoREFが埼玉県や鳥取県、高知県など各都道府県の中学、高校の先生方等を対象に月に1回実施している「本郷学習科学セミナー」では、県外の様々な先生方と教材づくりなどについて顔をつきあわせて議論し合うこともできます。こうして、全国の先生方と連携し、切磋琢磨できるのも、「ジグソー」という共通の型、共通の「言葉」がそこに存在するからです。

戦後70年、日本も世界も大きく情勢が変化しつつあります。そうした世界に対応し、数々の課題を克服してゆく人材を、志を同じくする全国の先生方とともに育成し、わが国の教育を皆で本気で変えていきたいです。

6 著者プロフィール

板谷大介(いたやだいすけ)
1966年、埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部卒。2000年4月より2011年3月まで、母校の埼玉県立浦和高等学校で教鞭を執り、その進学実績向上にも大きく貢献した。
2011年4月より、埼玉県立高校では男子校の浦和高校とともに進学校として並び称される女子校の浦和第一女子高等学校に勤務している。
CoREFとの連携による知識構成型ジグソー法の授業改善の取り組みには2010年より参加している。また、2013年からは一般社団法人日本アスペン研究所との連携で「高校生のためのアスペン古典セミナーin埼玉」のモデレーターも担当している。
著書に『古典が苦手な受験生に捧ぐ 板谷の古典文法』(2007,桐原書店)、『指板プリ古典文法 苦手撲滅108令』(2007,桐原書店)がある。
現在は、明治書院高等学校国語検定教科書編集委員(古文担当)を務めている。


7 引用、参考文献

大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)(2015).『自治体との連携による協調学習の授業づくりプロジェクト 協調学習 授業デザインハンドブック −知識構成型ジグソー法を用いた授業づくり−』
詳しくはこちらをご覧ください。

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