文法なら教科横断できる

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目次

1 はじめに

この記事は二部構成の後半です。
まだ前半をご覧になっていない方は、こちらからどうぞ。
『英語からとりくむ国語との教科連携』→クリックして検索

2 英文法にアクセスしやすくなる〈学習用の新しい国文法〉とは?

〇国英連携授業

国英連携を意識した授業を展開するためには、欲を言えば、

国語の先生でも英語との接点が分かる
  英語の先生でも母語のことが分かる

というような、文法的アプローチに長けた国語の先生、英語の先生が理想です。

国英連携を意識した授業をするためには、実際に教える先生も英語だけではなく日本語(母語)に気付いている必要があります。必要最低限のことでも良いので、断片的にでも母語を学んで、国英の連携を意識した授業をすると、それまでとは打って変わった授業になるはずです。

例①「国語で何を学んできたの!」

英語の先生:「主語ってこうでしょう、目的語ってこうでしょう。」

英語の先生は、生徒に分詞構文の話をするために、国語で学習する基礎的な文法を教えるプロセスを踏んでいます。本来は、国語の先生がしてくださるはずのことかも……。

英語の先生:「いったい今まで国語で何を学んできたの!」

しかし、国語では現代文や古典などの読解が中心で、文法(母語の構造への学び)をめざした時間をつくる余裕が十分ありませんでした。

ですから、どうしても英語の先生が、「主語」とは・「述語」とは・「修飾」とは、といったことをイチから再び教えることに……。

(……英語の先生方、ゴメンなさいね。今までの国語科を許してあげて。(_ _) (須田先生より)

ですが、文法の骨格になる事項は、普遍性が高い(国英に共通!)ものなのです。
そこで、国英の共通性に気づけるような新しい学習文法が必要なのです。従来の学習用の国文法と英文法とはリンクしていませんでした。それぞれ独立した編纂意図がありましたから。

例② 「〈完了〉って、〈過去〉とどう違うんですか?」

こうした深い学びにつながる質問を拾い上げていくためにも、日本語の〈完了〉と英語の〈完了〉、同様にそれらの〈過去〉と〈過去〉とが学びの過程でリンクできる学習文法を用意してあげたい。日本語の仮定法ってこういうことかな、分詞って、関係詞って、こういうもののことかも、と気づいていければ、その気づきがどんなにか外国語の文法事項が腑に落ちるのを助けることになるか、ということです。

また、小学校の英語科では、こうした文法的な用語を用いないで、いかに気づきを促していくか、ということが重要になります。それには、和語をベースにした記述方法によって、ニックネーム(動詞 → ウゴキ単語、修飾語 → カザリ部分)で呼ぶことで、知識ではなく気づきにフォーカスできるように配慮していきます。

〇「国文法」とは?

「国文法」とはつまり「日本語文法」のことですが、これまでの学習用国文法がそのまま英文法に連動できるわけではありません。むしろ国・英の違いばかりが目立つことになるでしょう。必要なのは、共通点に気づける国文法なのです。

国英連携に用いる新しい国文法には、通常の国文法より抽象度を高めたり、省いたり、同じグループに入れたり、という作業があるため、国文法に詳しい方から見ると、粗野な文法と捉えられることにもなりかねません。デフォルメや簡略化は、現状の教科書の国文法の単元にも度々見受けられます。それは英文法でも例外ではありません。学習用文法の定め、なのですね。

しかし、国英を連携させるには、双方の共通点を手がかりに橋渡ししてあげられる学習文法があれば、可能なはずだと考えました。

そのため現在、英語などの外国語文法にアクセスしやすくなる〈学習用の新しい国文法〉の開発に取り組んでいます。

〇学習文法に選択肢を!

今までの学習国文法が不要だというのではありません。現状の学校国文法は別の観点から学習用としての価値が高いものなので、

チャンネルを二つにしてもらえないかというように考えています。

例えば、

Ⅰ.中学・高校・大学受験などで古文まで学ぶ生徒→従来の国文法
Ⅱ.外国語へのアクセスを高めたい生徒→国英連携の文法

このように生徒の必要に応じて上記のような2つのチャンネルを設け、
文法(ことばの構造)の学習に、多様性と選択肢を与えられたらすばらしいことだ、と考えています。言語能力の向上を大目標にする点では、どちらのチャンネルもルートは違うが頂上は同じものになるでしょう。

〇活動の原点と問題意識

須田先生がこの活動を始めたきっかけ

これは5年ほど前に始めた活動なのです。東日本大震災の影響で、私も何か役に立つことはできないかと思っていた当時、小学校(学校評議員など)の仕事に少し関わっていて、そこで子どもたちが使っていた国語のドリルを見たことが転機になりました。小学校では国文法を学習する時間が限られてしまうというのは承知していたのですが、そのドリルの「主語・述語」の単元が

「何が・どうする」「何が・どんなだ」

みたいな話で終わっていたのです。それは文法屋から見るととても奇異なもので、

「何が・どうする」「何が・どんなだ」「何が・なんだ」

という、この3本で考えないと、一般に「主語・述語」の関係は示せないからです。

普段、文法の研究をやって、難しいことを言ったりして学生に教えているのに、「小学校の現場ではこれか」と衝撃を受けたのが原体験です。

私は古典国文法の専門で30年ほど研究してきた中で、基本的に古文も外国語のように見ているので、その経験を活かして、英語とのつながり、橋の掛け方を考えることはできるだろうと思い、

(これなら、僕にもなにかできるんじゃないか。)

そう思ったことが、文法授業づくりネットワークとしての活動のきっかけです。

3 須田先生のご紹介とお言葉

愛知大学教授を経て、2016年度より専修大学文学部日本語学科へ移籍となり、現在にいたります。(須田研究室公式サイト→クリックして検索) 

専門は、実は古典日本語の文法理論。奈良時代の「動名詞」や「分詞」などを研究してきました。ただ所属する学派が、日本の古典語をいわば「外国語」として分析する形態論学派だったことで、母国語を外国語にリンクさせることには抵抗感はありませんでした。

外国語(英文法)に橋渡しするための母語文法(国英連携文法プログラムと称しています)》の開発は、ここ数年研究テーマとして注力しています。
いわば「国語文法第二」(ラジオ体操第二ならぬ)として選んでもらえるように、生徒らに実際に使ってもらえるところまでが開発者サイドの責任だと思って、仲間( 文法授業づくりネットワーク )を募って進めています。

情操の学びと相まって、母語そのものを学ぶ教科でもある国語科は、他のあらゆる教科のセンターになり得るもの、と考えています。私たちは日本語で考え、日本語で話し合うからです。しかし、身近すぎるために最も気づきにくいものが、日本語。自分たちの言語に気づく、そのためには特別な手立てが必要です。そして、気づくことさえできれば、それが古典語や外国語を理解するための指標となってくれるのです。

プラットフォームとしての日本語”。これが新指導要領を成功させるために提案している私たちからのキーコンセプトです。

4 記事内容に関連する須田先生の主な編著書 

『日本語の文法』.ひつじ書房.(共著)
※『日本語の文法』は現在、6刷版となり、現代日本語文法学の入門書のスタンダードに?

『日本語形態の諸問題』.ひつじ書房.(共著)

『日本語文法入門 —形態論の輪郭— 』.財団法人亜細亜技術協力会

5 関連ページ

↓「文法授業づくりネットワーク」の公式ホームページはこちらから。
文法授業づくりネットワーク公式ホームページ

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