授業支援システム「スクールタクト」から見る新しい授業のカタチ

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目次

1 はじめに

この記事は株式会社コードタクト代表取締役の後藤正樹さんへの取材をもとに執筆したものです。株式会社コードタクトは、総務省先導的教育システム実証事業に採択され3万人以上のユーザーに利用されている「スクールタクト」という授業支援システムを開発しています。本記事では、その機能や込められた思いをご紹介します。
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2 スクールタクトの主な機能

教材の配布・作成・共有機能

授業中生徒に解いてもらう課題のテンプレートが約5千種類用意されており、それを印刷することなくボタン一つで生徒の端末に送ることができます。また、既存のテンプレートをカスタマイズしたり、白紙からオリジナルの教材を作ったりすることもでき、こうして作った教材を学校内でシェアする機能もあります。デジタル教材特有の「動く教材」も簡単に作ることができます。

生徒の解答一覧機能

上記のようにして配布した教材を生徒が解いている様子を、先生は自身の端末上でクイズ番組のようにリアルタイムで見ることができます。机間巡視をすると恥ずかしがって答案を隠してしまうような生徒に対しても、適切な指導を行いやすくなるのです。

協働学習機能

先生はワンクリックで生徒に互いのノートの閲覧・編集を許可できます。また、生徒は他の生徒のノートにコメントや「いいね」を送ることができ、先生はその記録を後から見ることができます。

ポートフォリオ機能

生徒が、今まで自分がスクールタクト上で行った学習の記録を時系列で見ることができます。

3 開発者の思い

スクールタクトを開発された後藤さんに、スクールタクトの活用の方向性や先生に伝えたいことを伺いました。

スクールタクトの二つのコンセプト

柔軟な授業スタイルへ

現在、学校教育の場で行われている授業のほとんどが一斉授業だと思います。確かに、先生にとって一斉授業は自分でコントロールできる割合が高く、比較的安心して授業を進められるのでしょう。しかし、私は一斉授業をとても難しい授業スタイルだと考えています。能力も関心も違う40人の生徒を一つの方法で効率的に教えられるのは、生徒を魅きつける、ある種芸人的なスキルを持つ一部の先生だけだと思うのです。実際、一人の生徒が当てられている間、他の生徒が思考停止してしまっている、といった授業も多いのではないでしょうか。

また、今の授業環境では一つの授業スタイルから他のスタイルに切り替えるのもなかなか大変です。例えば、黒板に先生が板書をして生徒がノートをとる一斉授業からお互いの意見を見合う協働学習にスイッチするには、黒板に全員が意見を書くか生徒のノートを全て印刷する必要があります。

スクールタクトであれば、生徒間のコメントやノートへの書き込みを把握しやすいので、より安心して協働学習を取り入れることができます。さらに、一斉学習、協働学習、個別学習や反転授業といった様々な授業スタイルの切り替えをワンクリックで行えます。ですから、スクールタクトを導入することで、より柔軟に授業を行うことができるのです。

ログの活用

生徒がそれぞれ自分のノートに問題を解いている現状では、生徒の学習のログはノートの持ち主である生徒にしか残らず、先生がアクセスできる記録は限られています。その結果、生徒の学習状況の把握はどうしても先生の勘に頼ることになり、成功事例や指導のコツを先生間で共有しづらくなっています。

しかし、スクールタクト上で問題を解けば、その記録をサーバーで解析して先生にお返しすることができ、生徒の学習状況を可視化して把握できます。また、生徒同士が送った「いいね」やコメントの状況も見ることができ、このデータを長いスパンで分析していけば人間関係の把握にも役立つと考えています。

先生へのメッセージ

時代が変わり学力観も変わっていく中で、真剣に新しい授業をやらねばならないと考えている先生方が増えているように感じます。私もITと教育の連携の可能性について先生方にもっと考えていただけるよう頑張りますし、これから先生になる方々にも、自分が教わった方法に拘泥せず、ぜひ新しいやり方を見つけ出していただけると良いと思います。

4 プロフィール紹介

後藤正樹(ごとう まさき)さん
エンジニア/IPA認定スーパークリエータ/コンダクター
東京大学大学院総合文化研究科、洗足学園大学指揮研究所を卒業。
大学院在学中より代々木ゼミナール物理科講師やNPO法人FTEXTにおいて検定外数学教科書の開発に参加し、その後サイボウズ、ベストティーチャーを経て、現在、株式会社コードタクト代表取締役、総務省先導的教育システム実証事業プロジェクトマネージャー、株式会社スタディラボ取締役、日本デジタル教科書学会の役員などを務める。
慶應義塾大学特任招聘教授 夏野剛氏のもと、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「未踏IT人材発掘・育成事業」において未踏スーパークリエータに認定、日本e-Learning大賞奨励賞。
一方、オーケストラ指揮者としても活動しており、琉球フィルハーモニックチェンバーオーケストラ”イオ”指揮者、那覇ジュニアオーケストラ指揮者、アレグレット交響楽団常任指揮者などを務める。

5 編集後記

一昔前の教育現場では考えられない魔法のようなICT教材ですが、あくまで道具である、という後藤さんの姿勢が印象的でした。本当に大切なのは、これまでのあり方に批判的でありつつ建設的なアイデアを提案し続けることであり、その成果物の一つとしてのICT教材を、これから運用していく学校現場のあり方が問われていると感じました。
(取材・編集:EDUPEDIA編集部 横田和也)

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