1 はじめに
この記事は、NPO法人ROJE関東中高まなびプロジェクトが、平成30年10月に聖学院高2文系クラスで実施した全8回現代文の授業実践についてまとめたものです。
今回は、太宰治の『待つ』の授業実践をお届けします。
『待つ』を取り扱った理由の1つとして、第5回まで取り扱っていた『山椒魚』の作者である井伏鱒二と、太宰治は師弟関係にあり、比較してみると何か新たな発見が生まれるのではないかと考えたことが挙げられます。主人公には、「孤独」という共通点もあり、多くの解釈をすることができるため良い題材でした。
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2 授業内容
第6回:通読+自分なりに意見を持とう
第7回:作品について意見交換をしよう
①通読
はじめに、太宰治の『待つ』を各自で一度通して読み、ワークシートで
- 主人公「私」について
- 「語り」
- 「待つ」という行為について
の基本情報を埋めていくことで、クラス全体で共通の理解を図りました。
また、そうした基本情報を通して、読み取れることを生徒それぞれが解釈しました。
そして、通読を通して疑問に感じたことを出し合い、次回グループで考える議題を抽出しました。
生徒の反応
文中の、断片的な情報から、想像を膨らませ、自由な解釈を行なっていました。ある生徒は、文章の中で、主人公の語り口調の変化に着目し、その変化には主人公の感情の起伏が現れているのではないかと考えていました。またある生徒は太宰治とキリスト教の繋がりから、この文章の前提にあると指摘していました。キリスト教との繋がりは、大学生は教材研究を通して知ったため、生徒の指摘に驚かされました。
先生からのフィードバックと次回への反省
「心情語などの言葉の裏に込められた筆者の想いを考えてみること、言葉に込められた想いを読み解くこと」が、国語の授業では重要であるとのアドバイスをいただきました。
第7回では、自由な発想の中にも自分なりの解釈に対する根拠を求めることとしました。
【授業案・ワークシート】
5c83587e817b193e06bf9681_第6回授業ワークシート
②「待つ」ことの対象・理由を考える
第6回で生徒たちから出た様々な疑問を受けて、大学生側で1つのテーマを設けました。
自分なりの読みをそれぞれが持った上で、「私」は一体何を、何故待っているのか考えました。
生徒の反応
ただ自由な発想をするだけでなく、生徒それぞれが自分なりの根拠を持って解釈を行なっていました。班員の解釈を聞き、新たな視点を得た生徒もたくさんいました。生徒の記入したワークシートを見ていて最も多かった考えは、「主人公が待っている対象は死である」というものです。大学生は「戦争の終わった平和な世界」と考える人もいたので、私たち自身が解釈の違いに驚きました。
先生からのフィードバックと次回への反省
「大学生が実際に来て、何を伝えたいのか、或いは大学生が作品を読んで何を思うのか、というところをきちんと第8回では伝えてほしい」とのご指摘をいただきました。
第7回では、生徒と大学生の中で大きく異なる解釈をしていた部分があったので、その違い・面白さに触れることができたらよかったと感じました。
第8回では、大学生自身の読みも交え、より多様な読みと触れ合う機会にすることになりました。
【授業案・ワークシート】
5ca1d2b0ceab0e0000603b29_第7回ワークシート
3 関東中高まなびプロジェクトとは
中高まなびプロジェクトでは、中高生に教科学習に限らない幅広い学びを届けるために、大学生が中学校・高校に行き、さまざまな授業実践を行っています。
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