活動の見通しやコミュニケーションに課題のある小学1年生への対応事例(インクルDB)

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作成者:福山 浩平 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、「インクルDB(インクルーシブ教育システム構築支援データベース)」の実践事例データベースの内容を引用・加筆させていただいたものです。今回は、「活動の見通しやコミュニケーションに困難さのある小学1年生の児童が、視覚的な支援により意欲的に学習に取り組めた事例」 に掲載されている事例をご紹介します。

※EDUPEDIAには、特別支援に関する記事が他にも多数ございます。ぜひ併せてお読みください。
学習に困難のある子どものテクノロジー活用(日本マイクロソフト)
特別支援教育での活用教材(サイト紹介)
見通しを持つ~視覚化とパターン化~(授業・教材研究・先生の働き方)
視覚に訴える「することマグネットシート」(長谷川隼土先生)

〈事例の概要〉
特別支援学級に在籍し、自閉症、情緒障害、学習障害のあるA児(小学1年生)に対して教科指導や生活指導、保護者支援に取り組んだ事例です。
A児は、就学前に特別支援学級への在籍が検討されており、B小学校では特別支援学級に在籍することとなりました。

活動の見通しが持ちにくく、入学当初は状況を見て集団に合わせて行動することに課題がありました。整列時に列から離れ、自分の興味に固執したり、集中力が続かず離席することがありました。

本事例では合理的配慮協力員による定期的な授業観察と観察後のミーティングを行い、基礎的環境の整備や合理的配慮についてアドバイスを受けました。これにより、特別支援学級の担任、交流学級の担任や管理職がA児に関する共通理解をした上で効果的な支援をすることができました。そのような実践の積み重ねにより、A児も交流学級の中で、意欲的に学習に取り組むことができるようになってきました。

2 児童の実態

A児は、B小学校の特別支援学級に在籍する小学1年生です。発達検査で全体的に1年程度の遅れがあると診断されています。A児の課題は以下のような点にありました。

先への見通しを持つことが苦手なため、入学時には慣れない環境に対して不安を示したり、自分の興味あることだけに注意が集中したりする様子が見られました。また、視線が合わないことや言葉で自分の思いを表現することが難しいという課題もあります。さらに、自分で状況を判断して行動することも難しい状態です。発音も不明瞭で、他の児童との関わりの中でもA児の思いがうまく伝わらないことが多くありました。

皮膚感覚が過敏であり、触れた程度でも痛がる様子が見られました。学習時にも板書を写す作業では鏡文字になったり、似た字に書き間違えたりすることがあることから、A児は思うように字が書けないことにいら立ち、大きな声を出したり泣いたりすることがあります。保護者は、A児が自分の思いを言葉で伝え、コミュニケーションが取れるようになってほしいと思っています

3 本事例に関する基礎的環境整備

B小学校のあるC町では、各校に「自立活動支援教室」を設け、ST(言語聴覚士)、OT(作業療法士)、PT(理学療法士)を派遣しています。

◆個別の教育支援計画を作成するに当たって

  • 保護者と懇談を行った上で、長期目標を設定しています。
  • 目標が本人に合ったものであるかを各学期末に振り返っています。
  • 評価については、個別の指導計画に基づく指導内容と通知表の各教科の評価との整合性を持たせています。

◆その他の基礎的環境整備

  • 感覚を刺激する絵本や漢字の絵本、ひらがなや数字、アルファベットのパズル、知育玩具を学習内容に合わせて活用しています。
  • 個別学習時にはパーティションを活用し、周りからの刺激を減らし学習に集中できるようにしています。
  • 合理的配慮協力員による個別の具体的な合理的配慮の方向性についてアドバイスを聞く機会が、月に2、3回程度設けられています。

4 合意形成のプロセス

A児の小学校入学に当たり、C町の教育委員会と話し合いが行われました。その結果、B小学校の特別支援学級に在籍することとなっています。入学後も学級担任と保護者の間で連絡帳を毎日やりとりし、学校での様子を詳しく伝えるようにしています。また、気になる点についてはその都度電話でやりとりをして、家庭と学校の共通理解と合意のもとA児の支援に当たることにしています。

5 A児童に関する合理的配慮の実際

■学習上の合理的配慮

  • 発表したり書いたりする学習では支援者が聞き取りをし、文章にしたものをA児に確認しながら表現させています。
  • 複数の読み方がある漢字ではA児が混乱しないよう、一つの読み方に一枚の漢字絵カードを作っています。
  • 泣きたくなったときに対処するための、場面ごとの絵と合言葉のカードを作成しました。このカードの合言葉を繰り返すことで、泣きたくなった場面でどうすればよいか自分で考え、実行できるようにしています。

■A児の意欲を引き出すための合理的配慮

  • 学校の1日の流れを意識し見通しを持って過ごせるように、視覚的にわかりやすく提示するようにしました。特に朝の用意では、A児がやるべきことを順番に書いた「朝の用意カード」を手元に用意したほか、黒板にも大きく掲示しています。
  • 一人で朝の準備ができた日のカレンダーに印を押し、印が貯まることを楽しみとして準備を意欲的に進められるようにしました。
  • 授業のねらいを焦点化・視覚化・共有化することを意識した工夫や配慮を行い、A児が授業に意欲的に参加できるようにしています。

その他にも、同じクラスの児童や関わりの多い教員の写真と名前を一覧表にしており、人への関心を持てるようになることを期待しています。

6 本事例の成果と課題

〇成果

合理的配慮協力員からA児の困難さを軽減するための様々な助言をもらい、支援の改善を進めることができました。A児の困難さや不安感を解消する支援を行うことで、A児は落ち着いて意欲的に学習に取り組むことができるようになりました。また、特別支援学級担任が「わかる・できる」喜びを感じる授業の在り方に関する公開授業を行ったことにより、他の教職員の理解も深まりました

〇課題

できる限り一貫した支援ができるよう記録ノートに記入し、A児の情報共有を行うよう配慮したが、細かな部分の支援まで一貫性を持たせることはできませんでした。

7 出典


インクルDB(インクルーシブ教育システム構築支援データベース)
http://inclusive.nise.go.jp/?page_id=13

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が運用するインクルDB(インクルーシブ教育システム構築支援データベース)は、子どもの実態から、どのような基礎的環境整備や合理的配慮が有効かについて、参考となる事例を紹介しています。また、研修会等での事例検討にも活用できます。

インクルDBは、各学校の先生方だけでなく、保護者の方をはじめ、広く一般の方にもご利用いただくことができます。ぜひ、ご活用ください。

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するべきことを視覚で捉えられるようにマグネットシートを使った例を紹介します。

9 編集後記

見通しが立ちにくいことが原因で、様々な課題を抱えてしまっているケースは少なくないのではないかと思います。同じような課題を抱える生徒への合理的配慮にお悩みの先生方のお役に立てれば幸いです。

(編集:EDUPEDIA編集部 福山浩平)

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