片付けで学校の働き方改革に挑む!? ~ななつめのやつはしさんインタビュー~ Part1

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目次

1 はじめに

この記事は2020年1月に、学校の5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣)に精力的に取り組んでいるななつめのやつはしさんにインタビューさせていただき、それをまとめたものです。ななつめのやつはしさんは職場である学校をきれいにすることを通して、生産性を向上させることを目指して活動している先生です。この記事ではPart1として学校の5Sとは何かお聞きしています。

2 5Sについて

学校の5Sとは

学校の5Sとは整理・整頓・清掃・清潔・習慣のことを指します。そもそも5Sとは大企業のトヨタ自動車株式会社発祥で、効率的に仕事をし生産性を向上させることを目的としたものであり、トヨタ自動車株式会社のものは整理・整頓・清掃・清潔・躾です。しかし、教育界においては特に学校の先生に躾という言葉はそぐわず、みんなで意識して守っていけるよう「習慣」と置き換えました。この「習慣」を持続させることが大切です。また、5Sという言葉は教育界ではあまりなじみがありませんが、私が考えた造語ではなく、建設業界などではかなりなじみ深いものです。世の中に概念としてあるけれども、教育界にはなじまないために取り入れられてこなかったものを取り入れていきたいと思い、取り入れました。

5Sをはじめたきっかけ

日本全国の大部分を占める公立の学校は基本的に古い設備となっていて、管理するのが難しいです。学校の内部は忙しい学校の先生たちが管理しており、人事異動で人が入れ替わるため、乱雑さは基本放置されているという状態です。要は整理整頓されていない状態が結構多くて、そこを解決しないと働きやすくもなりませんし、新しいことを始めることもできません。効率的に働けるように学校現場に5Sを取り入れました。

5Sの具体的なメリット

5Sをすることでモノが減ります。モノが減れば管理する手間も減ります。そしてモノが減ることですっきりします。片付けには精神的効果もあるので、モノがなくなるだけで気持ちがリフレッシュされて、何か新しいことが始められそうな気持ちになります。片付けというと、散らかっているモノを元に戻すというふうに思われがちですが、学校の片付けはそれを通して学校のレイアウト変更までして効率的な職場に変えていく作業を指します。今は学校の容量よりも多くのモノが置かれています。より働きやすい環境にしていくためにはまず全体量を減らす必要があります。それが減っていくとスペースができて、そこにモノを動かしたりレイアウトを変えたりして、効率よくきれいな職場を作り上げることができるという仕組みです。私の場合はモノを1t~3tと捨てていきます。そのため、管理する手間が減り、気持ちがすっきりして新たなことを始められるようになります。

3 5Sの必要性

教員の多忙化問題の解決策としての5S

教員の多忙化には様々な原因があると思います。特に業務量の多さに対して人が少ないという部分が大きいと思います。業務量に関しては人がその分たくさんいればカバーできると思いますが、人がいないというところが大きな問題だと感じています。また、給特法という法律も絡んできていると思います。給特法という難しい法律と教員が持つ真面目さがかけあわされて、こういう現状を生んでいるのだと考えます。子どものためにという気持ちが最上位に来てしまい、自分は労働者であるということを忘れてしまって、教育者という感覚でいるからいつまでも仕事をしてしまうのです。もし労働者であるという意識を常に持っていれば、8時間以上働くことは求められていないということを考えることができるはずです。しかしそれが言えない雰囲気もありますし、そもそもそれを知らない場合もあります。その雰囲気を改善する方法として学校の5Sがあるのです

雰囲気の改善のための5S

モノをなくして整えて、ほしいときにほしいものがとれるような状態にしておくということがとても大事なのですが、こういうことを一つひとつやっていくとみんなの気持ちが変化していきます。断捨離をするときにも方法があります。学校の備品が非常にたくさんある状態から、一度に捨てるのではなくて少しずつ外に出していくのです。外に出した実際の様子が写真のような状態です。さらに出すときに、そのまま出しているだけだと、ただモノを捨てているだけなので、ダイエットという表現を使って捨てたモノの量を数字で可視化します。人間もダイエットするときに何㎏減った、と数字で表すように、学校のモノにもそれを当てはめるのです。このように可視化すると目に見えてモノが減っていっているということがわかります。数字で分かると、気持ちにも変化が出ます。そうすることで他のモノも減らせそうな雰囲気を作るというのがとても大事で職場の雰囲気も作ることができます。何も捨てずに混沌とした職員室の雰囲気のまま何か改善しようとすると難しいです。しかしモノがなくなると職場の雰囲気も劇的に変わるので、他の事項の改善の提案も通りやすいです。モノを捨てていくことで自分と向き合うということができます。また職員室のモノを捨てていくことで職員室と向き合うこともできます。そうした雰囲気を混沌としたものから変えていくのです。

5Sの効果

小学校には特に効果があると思います。小学校は中学校や高校と比べモノの数が多いですし、中学校や高校は専科のシステムなのでそれぞれの教材室があるところもあると思いますが、小学校は全科目教えるので、どうしても混ざってしまいます。小学校にも管理する人はいるのですが、通常業務の片手間に管理しているだけなので限界があります。だから5Sは小学校において特に効果的です。5Sを取り入れることで職員室に変化をもたらすことも可能です。

5Sされた部屋を見た子どもたちの反応

「あ、きれい」と喜びましたね。以前は、子どもが職員室に何かを取りに来るときにいろいろなところにモノがあったので、子どもが職員室の中まで入ってくる必要がありました。それらを全部職員室の入り口の近くに集めると、子どもの作業がそこだけで完結します。子どもも職員室の中で危険な目に遭わずにすみます。結果そういうことにも繋がるので、ただ片付けをしてすっきりするだけではなく、子どもの動線も考えてあげるといいなと思います。

4 プロフィール

ななつめのやつはしさん

「学校の5S」を通して学校の働き方改革に挑む小学校男性教諭。学校を片付けることを通して働き方改革をする方法をTwitter、ブログで発信中。整理収納アドバイザー1級。
(2020年2月現在)

5 著書紹介

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7 編集後記

学校の片付けと聞いても具体的にどのようなことをして何につながるのかイメージが湧いていませんでしたが、ななつめのやつはしさんのお話を聞くことで学校の5Sのすばらしさを学ぶことができました。ななつめのやつはしさんの片付けに対する情熱を感じ、片付けから学校を変えることができるかもしれないと思いました。
(取材:EDUPEDIA編集部 取材:安藝・加古・千葉/文責・編集:千葉)

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