片付けで学校の働き方改革に挑む!? ~ななつめのやつはしさんインタビュー~ Part2

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目次

1 はじめに

この記事は2020年1月に、学校の5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣)に精力的に取り組んでいるななつめのやつはしさんにインタビューさせていただき、それをまとめたものです。ななつめのやつはしさんは職場である学校をきれいにすることを通して、生産性を向上させることを目指して活動している先生です。この記事ではPart2としてななつめのやつはしさんが実践してきた事例・学校の5Sの懸念点についてお聞きしています。

2 ななつめのやつはしさんご自身の事例

衛生推進者になる

衛生推進者というのは講習を受ければ資格を取ることができます。学期が始まって14日以内に校長に衛生推進者として職場の健康を管理させてほしいと伝えると、校長からの任命と資格があれば誰でもなることができます。資格がない場合には養護の先生や体育専科の先生が持っていることが多いのでその人たちに任せてチームの中でやっていくことも可能です。しかし衛生推進者は校長にも知られていないことが多く、校長は早く帰るように促すくらいしか先生の健康について関与しません。給特法の影響で、学校の先生は時間の制限なく働くようになってしまいました。また、労働基準法や労働安全衛生法を正しく運用できている学校はなかなかありません。

しかし職場で労働安全衛生法がないとどんなふうに働かせてもよくなってしまうので、労働安全衛生法が必要になってきます。この法律は学校の先生が健康で快適に働いていけるような職場を作っていかなければならないと定めた法律で、これを大事にするのがよいと私は思っています。逆に言うとここが大事にされてこなかったから子どものために働くことが優先順位の上位にきてしまってバランスが崩れてしまっています。子どものためも大事だけど先生のためも大事だということを私たちが学校の先生に伝えていかなければなりません。先生自身を大事にすることがひいては子どものためになります。

実際に取り組んだ方法

私がやった方法としては、校長に相談をして、学校の中を片付けて、職員が働きやすいような職場にしていきたいという話をしました。ただ話すだけだと説得力がないので資料におこして見せました。またKPTボード(Keep:保留, Problem:問題, Try:実行の頭文字をとってKPT)というものを使います。これは、目に見えない片付けも進めていくもので、増えすぎていた業務を書き出して一つずつみんなで考えていくということをします。そして「タスク管理ツールを使って増えすぎた業務を一つひとつみんなで解決していきましょう」というのを最初に伝えて、目指すゴールをあらかじめ作っておきました。実際にやるときは大部分を夏休みに行い、平日も週残業時間45時間というところをめどに活動しました。汚かった教材室を夏休みの間に片付けてみると、写真のような状態まで持っていくことができることが分かりました。ここまできれいにできるとは自分でも思いませんでした。それを分かったうえで、今の教材室はこの状態だからそれを職員室の中にも導入したいとプレゼンしました。「整理整頓されているのを保った状態、高い棚の上にモノがない状態といった細かいところまで全部職員室の中で再現します」と伝え、その状態をゴールに設定し、写真のような資料を見せました。次に何をしていくのかということを決めて「最初はこれだけやっていきますからその前に準備段階で体制を職員会議の時にお話しします」と伝えました。校長に見通しをもってもらえれば安心して認められることが多いので、プレゼン資料を作って校長に伝えるというのが一番いいと思います。そして、学校全体で片付けを進めれば、それほど時間のかかることではないと思います。

無駄を削減する時間を確保できない学校

夏休みを使えば大枠解決すると思うのですが、学校の環境を保つことは学校の先生の業務です。業務を遂行するにあたり、時間がないという言い訳は通用しないと私は思っています。日本の学校の先生の場合は、先生として採用された後から仕事が降ってきます。だから学校の先生という職業ではありますが、入ってみないとどんな仕事があるか分からないというのが今の日本の学校の先生の仕組みなのに対して、海外では施設を管理する人と学校に教科を教えに来る人がきちんと分かれているので学校の先生は先生として授業の準備をすればいいのです。日本は施設管理の役割も全て学校の先生が担っていますから、学校の先生がやらないと学校の環境改善はできません。汚い環境の中で新しい教育は絶対できないと思っています。いつかは誰かがやらなければいけないんですよね。

5Sをしたことでの変化

私がやっているのは片付けなのですがその目的は空気を作ることです。職員室で定時で帰ってもいいのに帰らない先生、勤務時間を過ぎているので断ればいいはずの部活顧問を断らない先生が非常に多いです。なぜかというと、「空気」がそうさせていると私は考えています。長時間労働を助長するような空気があったのでその空気を改善しましょうということで片付けを始めました。片付けをしていくことで働きやすい職場になりますが、それに加えてだんだん改善してもいいんだという空気になってきます。そういうタイミングでKPTボードを設置するのです。片付けを通して捨てていくことに慣れることが一番大事になります。目に見えるモノをなくすことにみんなが慣れてきたら、目に見えないモノをなくす提案をしやすくなります。

モノをなくす「空気」の中だと提案も通りやすいです。いきなりKPTボードによる実践をやるのではなくて、片付けを通して捨てていくことに慣れて、慣れたらこれを提案すると周りの先生が承認してくれる可能性が上がります。

3 プロフィール

ななつめのやつはしさん

「学校の5S」を通して学校の働き方改革に挑む小学校男性教諭。学校を片付けることを通して働き方改革をする方法をTwitter、ブログで発信中。整理収納アドバイザー1級。
(2020年2月現在)

4 著書紹介

5 関連記事

6 編集後記

ななつめのやつはしさんが実際に学校の雰囲気を変えるために取り組んできたことは、今までの学校改革とは全く違うものだということが分かりました。また、この実践は学校だけにとどまらず、さまざまな場で応用が可能だと感じました。学校の5Sは学校改善の一つのヒントになると改めて思いました。
(取材:EDUPEDIA編集部 取材:安藝・加古・千葉/文責・編集:千葉)

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