地域や保護者の方と創り上げる理想の学校教育~先生が魅力的な職業であるために~(先生の幸せ研究所、澤田真由美さんインタビュー)

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作成者: Miyu (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は2020年6月7日に、先生の幸せ研究所にて活動されている澤田真由美さんへのインタビューを記事化したものです。

今回は「先生の働き方改革」という話題を起点にして、地域の方や保護者の方と一緒に創り上げる学校教育についてお話を伺いました。

2 インタビュー

そもそもなぜ先生の働き方改革が必要なのか?

——元は先生として教壇に立っていた澤田さんが先生の働き方改革を掲げる理由は何ですか?

学校や教育を良くしようと考えたときに、働き方を見直さざるを得ない状況にあると考えています。働き方改革は先生にとって「時間を生む」というだけのものではなく、学校改革そのものです。 そのため、仕事量だけを減らせば成功する、というわけではありません。先生たちのやり甲斐・チーム力・ゆとりなど、学校を良くするうえで必要なことは多岐にわたります。そういった全てのことは学校を良くすることに繋がるので、避けては通れないと考えています。

——澤田さんのご著書にもある、「お疲れ先生」「幸せ先生」とは何ですか?

「お疲れ先生」とは先生時代のボロボロだった自分のことをマイルドに表現しています。逆に、「幸せ先生」とは仕事と私生活がうまく循環させられていて、どちらも充実している先生のことをそう呼んでいます。

——現在、多くの先生は仕事にプライベートの時間を侵食されている状態ですが、今後どのような比重になっていくのが理想でしょうか?

「比重」というような考え方はしていません。現在、「ワークライフバランス」という言葉がよく取り沙汰にされますが、仕事とプライベートの考え方はバランスではなくシナジー(ワークとライフの相乗効果)であるべきだと考えています。私生活を豊かに過ごすことの重要性は、完全に仕事と切り離せることではありません。私生活で見聞きしたことや、新しい発見などを学校運営に活かすことのできるような豊かな働き方にシフトしていくことが重要だと考えています。

——それは、休暇中に旅行へ行った際の経験を教室内で活かすということですか?

それもありますが、それだけではなく日々の生活の充実が仕事の質を上げるのです。生活には4つのセクション(頭を磨く時間、体を休める時間、心を喜ばせる時間、生活を整える時間)があると考えており、この4つが全て満たされて初めて、先生は一番良い状態で子どもたちと向き合うことができると考えています。

学校教育の質を上げるための「働き方改革」

——学校コンサルタントとしてもご活躍の澤田さんですが、学校教育の質を上げるためにはどうすることが必要だとお考えですか?

学校教育教育の質を上げる一つの手段が「働き方改革」です。今まで80校くらいの学校にコンサルタントとして年間継続的に関わってきましたが、私が学校にコンサルティングに行った際には、まず学校内の先生で話し合い(対話)をしてもらいます。よくコンサルティングといえば、コンサルタントが一方的に指摘をするものだと考えられがちですが、それでは先生たちが考える力を奪うことになり、コンサルタントがこなくなると元に戻ってしまいます。最終的には、コンサルティングをする人間がいなくなっても自立して先生たちが学校の運営をすることができるのが理想です。

——「対話」とありましたが、具体的にはどのような内容に関して議論するのですか?

一番初めに行うのは先生方がこれまでに考えた学校運営の方法や、仕事に対する小さな不満や改善策を出してもらうことです。また、先生たちが仕事をする中で1日1時間の空き時間を作るとしたら何をするか、という負荷のある問いを考えてもらうこともあります。負荷のある問いを持ちかけることによって、これまで常識だと思っていた枠を超えた話し合いをすることができます。

対話は、組織風土を見直すことにもなります。子どもたちの何を育てたいのかをもう一度考え、そのために何が必要で何が必要ないかを見直してもらうためでもあります。沢山出た意見の中から、学年で1ヶ月以内に取り組むことを決めます。そうすると、先生たちからすると自分たちが出した意見が実際に自分たちの生活に影響して、実際に働き方が少し良くなったという成功体験を積み重ねることができます。今の学校には、自分たちで自分たちの身近な社会である学校組織を良くするという経験が圧倒的に足りません。

実際はこのような施策を決めてもうまくいかないことも多いですので、我流でやっている改革や単発の支援でははじめの壁で止まってしまいます。そのときは、なぜうまくいかなかったかを考えることや「働き方改革」の目的を明確にすることで、壁を乗り越えられたり、他の手段で成功させる方法を思いつくことがあったりします。

保護者の方と理想的な関係を築くには

——コンサルティングをする上で、教育委員会や保護者の方、地域などと連携するメリットは何ですか?

先生が個人でできること、学校でできること、地域でできることはそれぞれ違います。学校の働き方を見直す時に必ず校内から出るのは「改革には保護者の理解が得られないだろう」という声です。そこで、先生と保護者が一堂に会して一緒によりよい教育について考えることが有効です。同じ目的のために一緒に知恵を出し合うパートナーになるためです。学校の先生方と保護者の方は「お客様」ではなくて「一緒に考えるパートナー」として協力関係を築いていくことが大切です。

コンサルティングの場に教育委員会の方をお呼びするのは、「学校だとこのようなことができるけれど、このようなことは教育委員会や行政の現場でなければ対応ができない」ということなどを知ってもらうためです。さらに、なかなか現場に来ることができない教育委員会の方が、学校現場で何が負担となっているのかを知る機会でもあります。たとえば、書類の量への不満かと思いきや、締め切り期限の短さや目的の不明瞭さに不満をもっていることもあります。こうしたことはすぐに改善することができます。
そのほかに行政からの仕事について、国レベルで決められたことなので教育委員会がそれを覆すことが出来ないとわかると先生たちが納得できることもあります。変えられることと変えられないことがわかると、知恵が生まれてきますのでお互いがそう「理解」することが大きなステップになります。

——「保護者の理解」という言葉が出てきましたが、澤田さんはモンスターペアレントについてどうお考えですか?

声の大きい人が「目立つ」だけであり、実際は教育に協力的な人のほうが圧倒的に多いです。逆に「目立たない保護者」は先生の働きすぎを心配してくれていたり、学校を変えることに協力的であったりする場合が多いので、学校の先生はその人たちに協力を仰ぐべきだと思います。

保護者の方からの過度な要望に適切に対応するためには、先生側も自分たちの教育に関する軸が必要です。
「自分は何のためにこれをしているのか」という目的が説明できるなら、クレームを信頼に変えることができます。

自分たちのしている学校教育がどのような意味を持つのか目的がはっきりしていれば、保護者側から理不尽な要求が来たときも、「それをすると教育上逆効果である」であるなどの説明ができます。あるいは「この範囲でなら応えられます」と対応することもできます。先生が保護者の方の要求に対して何でも言いなりになっているのならば、教育のプロとして軸を持ち、悪循環から抜け出さなければいけないと考えています。

——中には、先生の忙しさを知らない保護者の方もいらっしゃいますが、どうすれば理解してもらえるでしょうか?

先生の忙しさや現状を保護者の方に伝えると保護者側も納得していただけることが多いです。先生はトイレにも行けないほど時間に追われて、給食もわずかな時間で食べているという現実を伝えると、かなりの保護者の方が理解を示してくれます。当事者である先生たちからは言いにくいと思うので私のような外部人材を使うといいと思います。多くの保護者の方はこの現実を初めて知るので、「今まで家庭のしつけまで学校に任せていてよくなかった」などと気づきます。

そのような雰囲気の中で子どものためにどうすれば良いかを対話を通して先生と保護者の方で考えると、お互い歩み寄っていけるようになります。また、学校側からは、たとえば連絡帳の長い文章に対して返事を書くことができない日もあるということを伝えることができます。 保護者の方が先生の忙しさを理解すると、保護者側から「忙しいときは返事を書くことを断ってくれても大丈夫ですよ」と言ってくださることもあります。 先生も保護者も、本心ではお互いに先生と良い関係を築くことを望んでいるので、現実を知った上で考えることによって保護者の方と先生の関係をより良いものにし、過剰な品質のサービスを減らすことができます。

放課後の部活動と働き方改革

——放課後の時間を使って部活動の顧問をしなくてはならないというのは、学校の先生の残業時間が助長されるといった意見もありますが、それに関してはどう思われますか?

部活動は多くの人が絡んでいるので複雑ですが、まず、学校は部活動のガイドラインを守ることが大切だと思います。部活動のガイドラインが導入された当初は、学校現場から批判もありました。しかし、導入されてから学校現場にいる先生の声を聞くと、先生たちはガイドラインを守ることで土日にリフレッシュすることができるようになり、ガイドラインに肯定的な声も多くなりました。

それに、練習が過酷なあまりに体を壊すなど子どもの「選手」としての可能性をつぶしてしまうこともあります。工夫して短い練習時間で全国大会に行く学校もあるので、部活動の練習時間を長時間取ることで良い成果が出るとは限りません。部活指導が大好きな先生にはスポーツ科学を勉強したり、短時間で子どもが技術を身につけられる指導法も身につけたりしてもらえると良いと思っています。そうすれば、部活動以外の時間に先生も子どもたちもリフレッシュする時間を十分に取ることができます。
先生にも子どもたちにもリフレッシュする時間や学校以外の時間は大切です。

最後に

——現場の先生に伝えたいことはありますか?

先生がゆとりをもつことは、子どもたちの幸せにつながります。安心して自分自身を大切にして下さい。

3 プロフィール

澤田真由美
学校専門ワークライフバランスコンサルタント
東京都出身。青山学院大学卒業後、東京都と大阪府の小学校教員として約10年間勤務。教師として悩みぬいた自身の経験から、技術も心も豊かな幸せな教育者を増やしたいと、2015年に独立し『先生の幸せ研究所』を設立。「先生のゆとりは子どもの輝きに直結」を広めるべく学校改革から地域・保護者の啓発も手掛ける。
著書は、小室淑恵氏推薦『人生が変わる! 先生のための仕事革命ワークブック! 』(学陽書房)、『「幸せ先生」×「お疲れ先生」の習慣唯々忙しいだけだった教師生活が劇的に充実する40の行動術』(明治図書 他)

■先生の幸せ研究所 概要
合同会社 先生の幸せ研究所
http://www.imetore.com/
単なる業務改善ではなく、大人にも子どもにも学校を楽しくする、生き方改革/働き方改革/学校改革。
幼稚園・保育園・小学校・中学校・高校・特別支援学校・大学・教育行政・地域・保護者におけるコンサルティング・講演等実績は年間200件以上。
本来の仕事である授業の質を上げ、先生自身が豊かな人生を送る姿を子どもたちに見せられる学校を実現することをビジョンとする。
一般向けには、「先生も子どもも幸せになる学校を元気にする方法」を伝授する校内コンサルタント養成講座(http://www.imetore.com/6)開催中。

(2020年7月時点)

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5 関連記事

こちらの記事では学校でのワーク・ライフ・バランス改善の取り組みについて澤田さんにお話いただいています。こちらも併せてご覧ください。

6 編集後記

様々な職種において「働き方改革」が声高に叫ばれる中、オンライン授業が広まったことにより学校教育は大きな転換点を迎えていると感じます。すべての学校の先生が私生活と仕事のシナジーを実現し、子どもたちに一番良い状態で向き合うことのできる環境づくりが大切だと感じました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 甲斐 清川)

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