【妹尾昌俊氏基調講演】ROJE関西教育フォーラム2020「先生はどう働き、子どもはどう学ぶか ― コロナ禍で問う学校のあり方 ―」

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作成者:徳田 美妃 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2020年11月29日にYouTubeでライブ配信されたROJE関西教育フォーラム「先生はどう働き、子どもはどう学ぶか — コロナ禍で問う学校のあり方 —」内で行われた、妹尾先生の基調講演『「子どものため」は本当に「子どものため」になっているのか?』を記事化したものです。基調講演内では、妹尾氏に学校の過酷な現実と先生の役割として重要なことについてお話いただきました。 
※本フォーラムでは、新型コロナウイルスの感染拡大を予防するため、適切な対策を講じています。

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2 基調講演

学校の過酷な現実とコロナ禍における忙しさ

2016年に行われた教員勤務実態調査に、教員が他の職種に比べて残業時間が多いというデータがあります。

石川県教育委員会が出している月80時間を超える教員の割合を示す調査からは、4、5月は学校が休校のため、8月は夏休みのためその割合が低くなっていることが分かります。しかし、7、9月では例年並みの割合に戻っています。新型コロナウイルス感染症の流行前には働き方改革も騒がれていましたが、元の割合に戻っていることが伺えます。また、横浜市教育委員会が調査した時間外勤務月80時間越えの教職員の割合からも、同じようなことが言えます。その割合は、6月には5.8%でしたが、9月には15.2%に増加しています。

学校再開後の5、6月はコロナ禍での検温や消毒等の対応が増えていることは言えますが、四六時中そうした対応をしているわけではありません。現在でもこれだけの方が過重労働していることから、コロナ対応だけでない別の原因があると考えます。授業準備や部活動、学校ごと地域ごとで様々な理由があります。

       

先生の当たり前を見つめ直す

私の講演や研修では、これから話すような問いかけを先生方にして当たり前を見つめ直してもらうワークを行っています。その問いかけの題材がこちらです。次の言葉はある中学校(または高校)の先生のものです。「生徒が『もっと強くなりたい』と言っています。だから土日も練習試合を組むなどして頑張っています。生徒は簡単にはあきらめないこと、そしてチームワークを学びます。引退試合などは感動です。部活動を通じて、生徒は見違えるように成長します、教師冥利につきます。これのどこがイケナイのでしょうか?」

この意見に対しては、色々なご意見があってもよいと思いますし、部活動が悪いと言いたいわけでもありません。しかし、いくつか考えなければならない事があると思います。

子どもたちが練習したいと言っていたとしても、やりすぎると怪我をしたり、場合によっては中学校のときに全力を尽くして高校で飽きてしまったりします。そのようになってしまうと、生涯にわたってスポーツや文化を楽しむ子どもの数を減らしてしまうことになります。もしくは、部活動に多くの時間を割くことで、友達や家族との時間、勉強の時間が減ってしまうことも考えられます。つまり、子どもたちのことを思えばこそ一部制限をかけなければならないこともあると思います。そのような経緯でガイドラインを作成したこともありました。

本当に子どもたちのためになっているのか?

先生は子どもたちのために一生懸命働かれていて、それは素晴らしいことだと思います。ただ、私が皆さんに問いかけたいのは、「それが本当に子どもたちのためになっているのでしょうか?」ということです。

例えば、GIGAスクール構想では、小中学生一人ひとりに、一台ずつタブレット端末を拡充する予定になっています。しかし、勉強に関心を示さない生徒への動機づけをできているかを中学校の先生にOECDが調査したところ、日本と同じく学力が上位層の国と比べたときに、日本はその割合が低いという結果がでています。いくら端末があっても、動機づけや適切なフィードバックができていないとあまり効果が出ないかと思います。今の授業や学びなど、よかれと思い皆さんがされていることが、それで本当によいのかということを、皆さんには考えていただきたいですし、そのような授業の質をよくする授業準備に時間を割くためにも、先生方の有限な時間を効率的に使っていくことができる環境づくりも考えていかなくてはなりません。

これからの教師の役割

これから、教師としての役割が変わってくると思います。「学びの動機づけ」や、福祉的な部分を担っている「セーフティネット」、子どもたちと一緒に探究していく「共同探究者」という役割を担うことも必要になってくるかと思います。

3 登壇者のプロフィール

妹尾 昌俊 氏
教育研究家、合同会社ライフ&ワーク代表

徳島県出身。野村総合研究所を経て、2016年から独立。
全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。
中教審「学校における働き方改革特別部会」委員、スポーツ庁、文化庁において部活動のあり方に関するガイドラインをつくる有識者会議の委員なども務めた。
ヤフーニュースオーサー、教育新聞特任解説委員。
主な著書に『教師崩壊』、『「忙しいのは当たり前」への挑戦』、『学校をおもしろくする思考法』など多数。5人の子育て中。

Yahoo! ニュース 妹尾氏オーサー記事一覧

『教師崩壊』

『「忙しいのは当たり前」への挑戦』

『学校をおもしろくする思考法』

(プロフィールは全て2020年11月時点のものです)

4 編集後記

先生が当たり前にしていることを見直してみるきっかけとなるような基調講演でした。働き方改革が進められている中で、コロナ禍の影響もあり労働時間が減ったときもありましたが、全体としてはもとに戻っていることにも課題だと考えました。「子どものため」を考える時間を確保するためにも、先生の環境の見直しも必要であると改めて感じました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 徳田美妃)

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