早稲田アカデミー教師力養成塾 表現力講座

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目次

1 掲載の経緯

2010年12月、早稲田アカデミーの教師力養成塾「冬期集中講座」に参加させていただきました。

講師の牛嶋先生は、早稲田アカデミーで勤務をされ、ここ数年は「先生の先生」としてご活躍されています。社内の研修はもちろん、小・中学校・高等学校での校内研修や公開授業、現役教師・教員志望者向けの講座なども担当していらっしゃいます。

教師力養成塾の実施実績は、
【公立】港区、足立区、杉並区、千代田区、市川市、木更津市、大阪府、岡山県井原市
【私立】淑徳学園、佼成学園、錦城学園、淑徳巣鴨、取手聖徳、早稲田渋谷シンガポール、他多数

大阪府立砂川高等学校 公開授業での牛嶋先生のご活躍のご様子です。ご覧ください。

教師力養成塾の詳細については、こちらをご覧ください。

http://www.waseda-ac.co.jp/wis/training/teacher.html

2 テーマ:「学習する空間づくり」

~さらに「生徒のやる気を引き出し、成績を上げる授業」を行うために。~

第1回「オリエンテーション、表現力」
講師:早稲田アカデミー 教師力養成塾 牛嶋孝輔様
文責:EDUPEDIA学生メンバー 西島宗直

(参考動画)学習する空間づくり 授業開始時3分間の重要性
この記事のエッセンスの詰まった5分程度の動画です。合わせてご覧ください。

第1回

牛嶋先生の略歴紹介…現在は大人向けの指導がメイン。先生の先生をやっている。

●今回の研修の目的

マジックナンバー3、マジックナンバー7というのが、教育心理学的にもよく言われる。
3つというのが分かりやすいので、3つに絞る。

  1. 研修意識の向上
  2. 研修技術の習得
  3. 授業開始時、3分間の運営技術の向上…初めに決まる。

→月謝から逆算すると、授業一コマ(120分)あたり1,800円程度。
→大人に映画をみせるつもりで。

●研修の実施にあたって

  1. 批評…「この人は話が上手い」「下手だ」などと批評します。
  2. 理解…話者が何を言っているのかを理解します。
  3. 判断…「これは使える」「あれは環境の違う話だ」などと判断します。=============(研修の限界)=====================
  4. 模倣…研修が終わった後、実行しようとしてみます。(TTP:徹底的にパクル)
  5. 実行…計画するだけでなく、行動に移してみます。
  6. 反省…上手くいかなくても終わりにせず、反省・改善をします。
  7. 確立…自分なりのノウハウを確立します。
  8. 指導…他者に自分の成功ノウハウを指導できるようになります。

ミュージシャンも最初はコピーから始めるように、生徒も先生が教えたことを真似して、他の生徒に教えられるようになる(先生の視点に立てるようになる)と学力が伸びていく。
~

●授業基礎~学習する空間づくり~

初頭効果というのをご存じですか? 
最初に与えられた情報が後から追加された情報に優越する、というものです。
第一印象の重要性にもつながってきますね。

○学習する空間づくりの3要素

◎児童・生徒との縦の近い関係

  • 挨拶の徹底・・・このことは武道やスポーツでも当たり前
  • ルールの設定と運用…ルールは明確に
  • 叱る勇気・褒める演技…ピグマリオン効果

◎児童・生徒の行動をコントロール

  • 単指示の徹底・・・指示はひとつ。動作が完了してから次の指示を出す。
  • レディネスの活用…教育の適宜性、準備性。次にどのような行動を取ればよいかわかる。

◎児童・生徒へ「教師のやる気」を表現

  • 発声・・・大きな声で、明るく元気よく。高さの抑揚やスピードの抑揚、間も大切。
  • 視線・・・表情や身振りとあわせて。
  • 体の向き・・・常に正面を向いて話すよう心がける。~

●ケーススタディ

授業開始までの状況
(参考動画)表現力 before/after (約4分)(2012年3月12日更新)

〈A〉悪い例をインストラクターが実演
「指示の感覚が短すぎる」
「表情が暗い」
「視線が合わない」
「服装が乱れている」
など、ネガティブな意見が多数挙がりました。

〈B〉よい例をインストラクターが実演
(A)の事例と比較しながら、
「指示が短くはっきりしている」
「表情が明るく元気」
「視線がよくあう」
「服装も立ち姿も凛としている」
など、ポジティブな意見が多かったです。

●発声・発音のトレーニング

大きい声で、はっきりと、通る声で!

  • 全身を使って、「はい」と大きな声で発声しましょう。
  • 「アイウエオ」を口を大きく開けて、一音ずつハッキリと大きい声で発声しましょう。
  • 滑舌のトレーニング。


アイウエオ
 イウエオア
  ウエオアイ
   エオアイウ
    オアイウエ

●「学習する空間づくり」の実践

(参考動画)授業開始時の挨拶・模範例 (約3分)(2012年3月12日更新)

○授業開始時の動き…最初の3分で授業は決まる!

〈あいさつの意味〉

  • コミュニケーションの第一歩。
  • 生徒の気持ちを切り替える。
  • 縦の近い関係。
  • 最初の、強制力を持った指示。…暗黙のルールを作る。

○授業実践

〈3分間のシナリオ〉

  1. 入室から行動4原則(大きい声で、キビキビ行動、明るい笑顔、自分から挨拶)を実践。
  2. 生徒を魅了する「役者」。
  3. 生徒のやる気を引き出す。
  4. あいさつをする。
  5. 着席後、単指示で「学習する空間」をつくる。
  6. 生徒の目を見て出席を取る
  7. 自己紹介(名前を板書して)。
  8. 授業時のルールを説明。

3 詳細

1. 入室から行動4原則を実践

大きい声で、キビキビと、ドアを素早く開け、明るい笑顔で、
自分から「こんにちは」とあいさつします。
視線を生徒に合わせることも忘れずに。

2. 生徒を魅了する「役者」。

たいてい、生徒の返事は元気がありません。
「役者」としてすぐに生徒を魅了しましょう。
生徒全員と視線を合わせながら、
「元気がないぞ!もう一回!」と、
さっきより大きな声で、「おはようございます!」と呼びかけます。
生徒がつられて、もっと大きな声で「おはようございます!」と返して来たら成功です。

3. 生徒のやる気を引き出す。

生徒のやる気を引き出す一言をかけましょう。
(例:「いよいよ新学期。元気の良い挨拶で授業を始めましょう。」)
生徒とのコミュニケーションを図り、生徒との距離感を縮めます。
教師からの声かけは、想像以上に生徒のやる気を左右します。
これから授業が始まるという意識・時間の切り替えを行います。

4. あいさつをする。

起立→気をつけ→礼→着席

声のボリュームは「礼」で最大

  • 上記4つの動作は機敏に行わせます。

(特に「気をつけ」→「礼」は、全員が「気をつけ」の姿勢が取れてから「礼」をすること。)
* 「礼」で決めなければ、締まった雰囲気になりません。
生徒の声が小さいときにはやり直しをさせること。

* 生徒全員が「礼」をしたのを見届けた後、「はい、よろしく」とあいさつを返します。

~これは最初の強制力を持った指示となります。挨拶の目的は「授業の始まりを意識させるため」と、「教師と生徒の師弟関係(縦の関係)をはっきりさせるため」の2点です。
~生徒との関係が単なる友人関係(横の関係)になってしまうと、授業中の指示の徹底や勉強させることが困難になります。


5、 着席後、単指示で「学習する空間」をつくる。
「着席」の号令の後で、放っておくと初めて見る先生の珍しさもあって、生徒がざわついてしまいます。そこで、すぐに「椅子を引いて」「はい、顔を上げて」などと単指示を出し、指示が教室全体に行き渡っているかどうかを確認します。支持をさらに浸透させるために、机間指導をしてみるのも一つの方法です。単指示は「ノート出したら、手は膝の上」などのように応用すると、生徒の状況を見分けやすく、生徒管理に重宝します。


6、 生徒の目を見て出席を取る。
・早稲田アカデミーでは生徒の苗字を呼び捨てにします。
・教師は一人ひとりと目を合わせて返事を受け取ります。
・返事が小さい場合はやり直しをさせます。


7、 自己紹介
  例:「今日からこのクラスで国語を担当する牛嶋です。」
氏名を半身で板書する。読みづらい漢字にはふりがなをつけます。
自己紹介の目的は、「自分を呼ぶときになんと呼べばよいのかを示すため」と「生徒に名前を覚えてもらうため」の2点です。また、これにより、クラス内に質問しやすい雰囲気を作ることもできます。

8、授業時のルールの説明
通常3~4つのルールを決めます。
・簡単な言葉(画数の少ない漢字で文字数を少なく)にします。
・ルールを守ることと引き換えに、成績を上げて合格させる期待感を持たせます。
→これがなければルールを守らない、これを守らなかった場合は叱られる、というルールを予め設定することで、生徒が叱られても「自分がルールを破ったのだから、しょうがない」と、叱られてたことを納得し反省することができます。また上記にあるように、「なぜこのルールを守らなくてはいけないのか」というところに、「このルールを守ることにより成績が上がる」という期待感がなければいけません。ルールの説明をするうえで、その点を意識しながら話をしていく必要があります。

○ルールを設定するうえでの注意事項

・ルールはわかりやすく簡潔にする。
・「~してはいけない。」という禁止ワードを避ける。
 (例)「忘れ物をしてはいけない」→「忘れ物をしないように前日に確認しよう。」など
・ルールの数は増やさない。
→ルールは数が増えるほど、生徒は混乱しやすくなります。
・ルールを破ったときの対処を厳格にする。
・押さえつけるためのルールではなく、「信頼して交わす約束」として設定する。

○授業実践の評価基準

・発声・正対・視線…いかに良い第一印象を与えられるか。
・単指示…分かりやすく、必要な単指示を出せるか。
・板書…生徒の方を向いたまま書けるか。
・説明…今回はカット

○授業力をつけるための3つのポイント

・自分の授業を見てもらう
・良い授業を見に行く
→プレゼンテーションも練習を重ねる。(アップルのジョブズ、米オバマ大統領など)

授業開始時3分間のシュミレーションとその撮影。
それを見て振り返り。
(感想)
自分の姿を客観視することの重要性を共有できた。
また、他の人の様子をみることで、自分の姿を再確認できた。

4 第一回講座「表現力」のまとめ

(1)話す力は「魅せる力」

→必要なことを必要なタイミングで、かつ、効果的に印象付ける。
〈ポイント〉
・速さの抑揚
・高低の抑揚
・話の「間」

高い×早い=「勢い・乗せる・巻き込む」のイメージ
低い×遅い=「重み・落ち着かせる・傾聴」のイメージ

(2)教師のやる気を伝えるために

・声の大きさに変化をつける
・大きな身振りで強調する。
・生徒に目線を移しながら話す。
・少しオーバーな表情を作る。
→アルバート・メラビアンの法則というのをご存じですか?
メラビアンの法則とは、あいまいな情報を受け取ったときに、判断に影響する情報の内訳が言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%、となる法則のこと。
→「非言語コミュニケーション(身振り・表情・視線)の力」の重要性を示している。

(3)生徒に伝わるような情報量、表現力、そして何よりも「情熱」

5 編集後記

この一講座だけ受けてみても、本論と雑談とのバランス、理解しやすい実例、たとえ話、有名人のエピソードを持ち出す、など学ぶべきところが多かったです。
「プレゼンテーションも練習した分だけよいものになる!」と仰っているとおり、入念な準備がうかがわれました。
個人的には、自分に訪れる様々な機会を「緊張する嫌な場」と受け取るのではなく、「ちゃんと準備をしていけば、自分の価値も上がり、相手も幸せにできるチャンスになる」と考える前向きさを見習いたいと思いました。
「ここ数年、また学びなおしているんです。学生や先生方に指導しながら、こちらが教わることが多いのです。」
学びに貪欲な牛嶋先生の益々のご活躍をお祈りしております。

最後になりましたが、学びの多い機会「学習する空間づくり」に参加させていただき、ありがとうございました。

6 講師プロフィール

牛嶋孝輔 (うしじま こうすけ)

早稲田アカデミーで25年間勤務。教育事業推進部事業推進課上席専門職「教師力養成塾」チーフインストラクター。授業開始時3分間の重要性を「学習する空間づくり」という形で、小・中・ 高・大や私塾での指導に力を注いでいる。社内外の研修、講演活動等を担当。NPO法人Teach For Japan 研修開発部顧問。


教師力養成塾e-講座(http://youseijuku.jp/) 

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〜2014年度年主な協働の履歴〜

東京都足立区初任者教員研修年間サポート(http://bit.ly/19gImkH
東京都その他の区でも初任者教員夏期宿泊研修や校内研修を担当

大阪市スキルアップ講座(http://bit.ly/1EpnH7d

大阪府立佐野高等学校校内研修(http://bit.ly/19gH9tr

沖縄女子短期大学教育方法論(特別講義)(http://bit.ly/1DKvkEX

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