戦争を想像できない
戦争のことを教師が一生懸命に話してもなかなか子供たちは想像できないことでしょう。
平成31年となった時点で、60歳の教員でも人生における「昭和:平成」の比が「昭和<平成」となり、全員が「平成の人」です。
20~40代の教員は「戦争を知らない子供たちの子供たち」の世代(団塊ジュニア)になっています。令和の学校で、ますます教師が戦争を語り継ぐということは難しくなってゆくのだろうと思います。(この原稿は令和3年時点の状況を書いています)
私も親にはよく戦争の話を聞かされはしましたが、学校の社会科では小中高とも明治維新あたりまでで学習が止まってしまい、そこから先の授業は粗くなってしまう傾向があります。
教師とて勉強不足で実際のところ戦争がいったい何であったのか、よくわかってない場合が少なくないと思います。
時間をかけて教師が話をしたり、子供に調べさせたりすることも必要ですが、「百聞は一見にしかず」で、映像を見せる方がずっとわかりやすいと思います。
以下は、戦争関連で子供に見せる場合に適しているのではないかと思うビデオです。
学年や子供の状況に応じて教師側で補足をしたり編集をしたりして工夫する必要があると思います。たくさんリンクを貼っていますので、クリックしてそちらの記事や映像作品も見てください。
下↓のリンク先は、戦争の伝承が難しくなったことについて、詳しく述べています。
教育現場で戦争を伝える難しさ ~風化する太平洋戦争 | EDUPEDIA
1992年ごろにNHKスペシャルで放映されたもの。実写の記録は圧倒的です。戦争ものはどうしてもイデオロギーが絡んで偏った内容の作品になりがちですが、わりと冷静な視線で戦争を見つめ、渋いナレーションによって淡々と語られています。下は1992年に放映されたシリーズ全編です。下のリンク先の他、6つの動画があります。すべてを見るのはけっこう気合が要りますが、これを見れば太平洋戦争の流れがだいたい分かります。長いので、教師の勉強用に。
[NHKスペシャル]ドキュメント太平洋戦争 第1集 大日本帝国のアキレス腱 ~太平洋・シーレーン作戦~
日本人特有の非科学的・全体主義的ガンバリズムが悪い方向へ作用していく有様がよくわかります。勉強になると思いますので、是非。
小学生にはかなり難しいので、大事な場面をピックアップして、解説をしてあげながら見せてあげるといいと思います。
ネット上でも閲覧が可能に
上のリンク先を含めて、NHKが昔の戦争関連番組を公開しています。アクセスが容易な場所で共有しています。さすがNHKです。偉業だと思います。かなりの量の映像がアップされています。
「番組」「証言」「ニュース映像」などから構成されています。
上で紹介した30年前のNHKスペシャル「ドキュメント太平洋戦争 第1~6集」もアップされています。素晴らしい作品です。
[NHKスペシャル]証言記録 日本人の戦争 第1回 アジア 民衆に包囲された戦場
[NHKスペシャル]証言記録 日本人の戦争 第2回 太平洋 絶望の戦場
は教師の立場としても必見の内容です。
証言映像もたくさんアーカイブされており、必見です。
戦争体験をあまり語ることのなかった戦中派も、語らねばならぬとの想いが強くなってきているのでしょう、当時を知る貴重な資料となっています。
また、太平洋戦争開戦から80年の今年(2021年)から終戦80年の2025年にかけて、NHKではシリーズ「新・ドキュメント太平洋戦争」が放映されるとのことなので、こちらも注目です。
アニメやドラマを通じて
実写映像が残酷であったり、ナレーションや構成が子供たちに分かりにくいと言う意見もあります。ドラマやアニメを通じて戦争を知るというのもいいかもしれません。
【火垂の墓】
火垂るの墓 [ 辰巳努 ]
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野坂昭如さんの小説のアニメ化。野坂さんは実際に妹を戦争で失っておられます。大空襲で母を失った、兄妹が行き場を失って神戸の街をさまよいます。
【さとうきび畑の唄 完全版】
学校では火垂の墓をみせることが多いかもしれませんが、これもなかなか戦争の様子がよくわかります。これなら小学3年生でもわかるかな。やや長いので、3回に区切るぐらいがいいかもしれません。沖縄を舞台にした、平凡な家族の視点から見た戦争の姿を描いています。明石家さんまの主演です。ちょっと軽くて、現実とはかけ離れているのではないかという批判もあるようです。
【はだしのゲン】
漫画本で有名な広島に投下された原爆の話。ドラマ版DVD↓↓↓があるのですが、最近は手に入りにくくなってきているようです。
はだしのゲン 千の風になって ドラマスペシャル [ 中井貴一 ]
昔のビデオ版もありますが、かなり古いです。漫画の方はわけ合って図書館等の公共機関で禁書扱いになってしまっています。名作なのですが、昭和の表現は平成・令和のコードに引っかかるようです。映画の方もかなりリアルな場面がありますが、こちらは放映禁止というわけではありません。作者の中沢啓治さんは亡くなられてしまいましたが、風化させてはいけないと思います。
【少年H】
妹尾河童さんの実体験を基にしたベストセラー小説を実写化した映画。神戸市が空襲されるシーンは緊迫感がります。戦争に対して懐疑的な家族が受ける不条理な仕打ちもよく描かれています。
大人が戦争を知るために
教師も世代交代が進んでおり、戦争は「遠い昔、歴史の話」と考えている層が大勢を占めています。この記事を書いている私も、親が戦中派であるから戦争の話はよく聞かされたために興味がある程度で、本当にその光景や空気を見て感じたわけではありません。
以下に紹介するビデオはあくまで大人向けなので、とても小学生に見せるようなものではないです。見せたら必ずクレームが来ると思います。
大人が見ても苦しくなる人もいるかもしれませんが、戦争の現実について考える上で、教師として観ておくのがいいのではないかと思います。
【プライベートライアン】
冒頭の20分ぐらいの「ノルマンディー上陸作戦」におけるオマハビーチでの戦闘の凄惨さがものすごいです。
【野火】
これもまた強烈な映像です。大岡昇平の小説を塚本晋也監督が映画化。一兵士の過酷な現実が描かれています。戦場に赴いた兵士にとって、戦闘だけが過酷であったわけではないこともよくわかります。
【ひろしま】
私は25歳の頃に、原爆の日に広島の映画館で深夜上映をしているの見ました。被爆した高校生が後遺症で鼻血を出すシーンだけでも怖くて、深く深く心に残っています。小学生には見せられない内容でしょう。1953年に作られたこともあり、製作側の思いの強さがフィルムに刻まれています。歴史的作品として見る価値が高いと思います。
新品としては手に入りにくくなっているようですが、井上梅次監督と主演女優の月丘夢路の娘さんが財団を作ってネット公開までされています。戦争の悲惨さを後世に残したいという強い想いがおありだったのだと思います。
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