「無人スタンド」で社会連帯について考える(坂本哲彦先生)

1、はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://p.tl/a-TK-

2、概要

対象

中学校1年生。
ただし、小学校高学年以上ならどの学年でも可。

目標

「無人スタンド」の話者「わたし」の思いについて話し合うことを通して、社会連帯の大切さに気付き、よりよい(地域)社会の実現に努めようとする心情を高める。

授業のポイント

(1)話者の釈然としない気持ち

  • 少年の過った行動とその理由
  • 注意できなかった自分
  • 野菜を出店している奥さんの願い

(2)社会連帯のよさの気付き(自己評価観点)

  • 一人一人が共に手を携え協力しだれもが安心して生活できる社会(互助互譲の社会)をつくることのよさ。
  • 今までの自分の生活を振り返り、今後の自分の生活につなげる。

資料

「無人スタンド」『中学道徳1 明日をひらく』(平成19年度版 東京書籍)

『中学校 読み物資料とその利用(4)』所収で、東京書籍の中学校1年の副読本教材にも掲載されている話。
生徒も教師もともに考えを深めるのにふさわしい内容だと思います。

(以下あらすじ)
「わたし」は野菜の無人スタンドで三百円の代金のうち百円しか置いていかなかった少年を見かける。後日、その無人スタンドをやっている奥さんにそのことを話すと、彼女は「そんなことで近所の人とがたがたしたくないし、あんまり角を立てない方がいいわよ。」と言う。「わたし」は、少年に何も言わなかったことと、奥さんのことばを重ね合わせて釈然としないものを感じた。

3、授業指導案(50分授業)

①無人スタンドについて(10分)

※写真を示して、導入の発問。


※「これが何か知っていますか?」「使ったことはありますか?」「便利だと思いますか?」などと発問。
※「無人であること」、「一束百円程度であること」等を確認して、「今日は、この無人スタンドについて書かれた資料で、自分たちの『地域社会』について考えてみましょう」と次へ。

②資料を読んで話し合う 1(20分)

一度に全ての資料を読み聞かせる。
発問1:「少年が百円で三束の野菜を持っていったのは、どんな気持ち(理由)からだと思いますか?」
※内容理解のための発問なので、特にプリントに自分の考えを書いたりグループで考えを交流したりなどの時間をとらない。
(1)少年は百円でいくつでも自由に持っていってもよいと考えていた。
(2)少年は母親から三百円もらったのだけど、百円だけ入れて、残りの二百円は自分のものにしようと考えていた。
以上の2つの考えが提示された事を確認。

問い返しとして、
「十歳になっているのに、百円で何束持っていってもいいなどと思うだろうか?仕組みを理解できないような十歳でいいのだろうか?」
「お小遣いのお金を猫ばばしようとするなら、入れるふりだけをして一円も入れないとか、大人に見られているのを気にするなら二百円入れるとかすることもできる(複数の硬貨なら二百円か三百円か聞き分けがつかない)けどなあ?」
などと投げかける。
「少し戸惑いの表情を見せた」という記述にこだわる子どももいるだろうが、国語ではないので、確認する程度。

教師は、「全くの他人である話者が、十分な事情も分からないまま、声をかけることができない点」について強調(この点はとても重要)して次へ。
発問2:「話者が注意しようとしたと言ったときに、奥さんが、『やめて。そんなことで近所の人とがたがたしたくないし、あんまり角を立てないほうがいい』と言ったのは、どんな気持ち(理由)からだと思いますか?」

奥さんの気持ちに共感するのは、とても難しい。少年は疑われても仕方のない行動をしていることを発問1で確認しているからである。

そこで、ノートに書かせてもいいし、グループで交流させてもいいので少し時間を確保してから、話し合いをする。

(1)本当に少年が百円で何束持っていってもいいと思っていたとするなら、その子どもに罪はない。
(2)仮に猫ばばしようとしていたとしても、相手は少年である。
(3)どちらにしても、確たる証拠がない以上、注意すれば、少年も、話者も気分を害すだけである。特に疑われた方はとても気分を悪くする(その親はもっと気分を悪くして、かなり問題が大きくなるはず…)。
(4)無人スタンドにしていること自体(店番がいない)にも、責任がある。
(5)お金儲けをしようとしているのではない。
などが発表されるはず。

誰のどの意見に自分考えが似ているのか、そして、発表を聴いている間に、自分の意見はどの考えに近くなっていったのか、また、友達の意見で理解できないものはないか、などを問い返しながら板書上で整理する。特に、(2)、(4)の意見は分かりにくいかも知れない。
※発問1・2で考えた内容を板書上で「対立的に配置」し、話者の心が「ごちゃごちゃして、どう考えたらいいか分からなくなった」ことに共感させる

ここで、時間があれば、「あなたなら、ここまで理解した上で、どうしたらよかったと思いますか」と再度検討させることも可能である。

③資料を読んで話し合う 2(10分)

発問2に対する反応(5)に着目させ、「この点については、奥さんの気持ちが今ひとつよく分からない」として、「もう少し考えてみましょう」と投げかける。②でこのようなことを言う子どもがいれば、それを捕まえておいて、ここで示す。それが、最も流れとしてはいい。

そして、発問3。これが、本時の気付き(知的理解)を引き出す発問となる。
発問3:「『お金儲けをしようとしているのではない』とは、どういう意味でしょうか?(お金儲けのためでないとすれば、奥さんは、どうして無人スタンドを開いているのか?)」
(1)農協などに出荷できない野菜、試しにつくった野菜(つまり、十分な商品価値のない野菜)を無駄にしないためなど、効率や無駄を省くため。
(2)人に新鮮な野菜を食べてもらいたいという願いを実現するため。
(3)特に「近所(地域)の人」に、おいしい野菜を提供するため。
などに類別。

(1)はすぐに理解されるはず。しかし、たとえ自分が損をしても近所の人に野菜を提供したい、とか、近所の人に喜んでもらいたいとする(3)の考えに生徒たちだけで共感することは難しい。

そこで、教師から少し補説し、
地域社会の役にたちたいという『願い』(目的)が、無人野菜スタンド(という『形』(手段))になっているんだね
とまとめた後、
「だから、この無人スタンドが原因で、地域の人々が気持ちを害するようなことになってしまっては、そもそもの初めの願いに反することになるわけだ。」とつなげる。(子どもがそれを言えればそれに超したことはない)
※「このように『一人一人が共に手を携え協力し、だれもが安心して生活できる社会(互助互譲の社会)をつくりたいという気持ち』のことを『社会連帯の心』『互助互譲の心』と言うんです」と本時で獲得させたい見方・考え方の理解を促す。
発問4:「社会連帯の心を発揮している活動にはその他にどんなものがあると思いますか?」

※「自治会」「子供会」「老人会」「各種PTA」「おやじの会」「スポーツ少年団や地域のスポーツクラブ」など、幾つか例を出す。どれも、自分がお金儲けをしたり、得をしたりするためにしている活動ではないことに理解を促す。

④自分の生活を振りかえる(10分)

発問5:「みなさんは、地域などでどんなことに役立とうとしていますか?また、今後、どんなことができるといいでしょうか。少し時間をとるので、プリントに書いてみましょう。書けなければ、考えるだけでも構いませんよ。」

※保護者の中で、社会的な活動をしていらっしゃる方を招いて、話をしてもらうのもいい。クラスに何人かはいらっしゃるはず…。

引用元、参考

坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり 「無人スタンド」で社会連帯について考える( http://p.tl/gxT3-
文部科学省 道徳教育関係資料( http://p.tl/A6xq-
中学校読み物資料とその利用( http://p.tl/U5jD-

【編集後記】

道徳教材として手元にある資料を使用しているため、すぐに応用することができると思います。

都会でマンション住まいなどしていると、なかなか地域社会との連帯を感じられないものですが、意識されていないだけで生徒たちの身の回りでも何かしらの活動はあることでしょう。「無人スタンド」の話をきっかけに、生徒たちが連帯に気づき積極的に活動に参加していくこと、その輪が広がって社会全体に暖かい結び付きが生まれることを願います 。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 高橋遼)

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