民話「やまんばのにしき」で関連づけ読解法を鍛える

1、はじめに

この指導案は、興津洋男先生が第60回読売教育賞を受賞した際の論文「『読書』こそ、国語力の礎 ~『読書』する楽しさを求めて~」の、別資料から転載したものです。論文とあわせてご覧ください。→ http://p.tl/njdy- (part1)

2、概要

教材

「やまんばのにしき」

ちょうふくやまの「やまんば」に子どもが生まれたということで、みんなで餅をついたものの、やまんばを恐れて届ける者がいない。あかざばんば・だだはち・ねぎそべの3人で行くことになるが、だだはちとねぎそべは途中で怖くなって帰ってしまう。残されたあかざばんばのとった行動と、その理由を読み取る。

対象

小学校3年生

目標

(①~⑤は以降の項目にも対応します。)

①「読む」
民話の語調に親しみ、場面の推移に注意しながら登場人物の性格や気持ち、情景を想像力豊かに読み取る。
民話の語調に慣れ、そのリズムを感じながら情景を想像して、音読できる。

②「書く」
分かりにくい語句・表現を見つけ、自分なりの意見や感想をまとめる。

③「話す・聞く」
必要なことをメモしながら、話の中心に注意して質問・意見・感想を交流し合う。

④「自己評価活動・書く」
ひとまとまりごとの自分の学習をふり返り、語句や文にまとめる。(新たに分かったこと・友達の意見から学んだこと等をワークシートやノート等に記述)

⑤「関心・意欲」
様々な民話を読み、読んだ民話の楽しさを友達に伝えようとする。

指導目標関連の評価規準

①人物の様子を表す語句に立ち止まり、そこから気持ちやその変容をつかもうとしているか。
場面の様子を表す中心語句や文から、場面の情景を想像できるか。
「、」や「。」に注意し、人物の様子を表す語句・場面の様子を表す中心的語句を想像力豊かに音読できるか。

②語句表現について、疑問・意見・感想が自分なりに書けるか。

③話し合い活動中の話題の中心を念頭に、質問・意見・感想が出せるか。

④ひとコマごとの自分の学習を、語句や文で振り返られるか。

⑤他の民話の良さについて、話したり書いたりしながら友達に紹介できるか。

【楽しく読み合うための支援】

①各場面における様々な登場人物一人ひとりの心情を豊かに想像させるために、人物同士の「やりとり」に焦点を当てる。
→「心象カード」(下図)を使用し、一人ひとりの読みを大切にしながら、互いに交換して対比させ合う。

②ワークシートを活用し、「分かりにくい」語句・表現に立ち止まり、それらを記述したり、自分の思いや考えを書いて、グループで膨らませ合う。
①・③ワークシートを活用し、場面や人物の様子を表す語句に立ち止まりそれらを記述したり、自分の思いや考えを書いて、グループ内やクラス全体で話し合う。

【叙述の特質に気づかせる支援】

①「むかしむかし~」の語り始めや「~~~だと。」等の省略法・伝聞に見られる文末表現の民話的口述や「とも言われていた」等、未知の恐怖を予感させる婉曲表現・副助詞の働きへの気づき。
「かりっと晴れて」「かあかあした月夜」等、場面の様子を感覚的に表象させる語句への気づき。
会話中に色濃くにじむ、各人物の心情・様子を表す語句「顔見合わせて」「ひたいをよせて」「青くなって」等について、実際にやってみてその心情への類推・気づき。

②「あんじていた」「やっかいをかけた」「~しては、たまらない」「なにしろ~なので…」「やっかいをかける」「まめでくらす」「開いた口がふさがらない」「織物の数量を表す『ひき』」など、古くからの慣用表現の用い方・働きへの気づき。

※それぞれ、別のわかりやすい表現に置き換えさせたり、動作化したり、上の「心模様円グラフ」を活用する等の支援をするとよい。

3、授業指導にあたって

指導観

  • 場面のそれぞれのカット絵をカラーで拡大し、読み取りを補完する視覚支援効果を期する。また、そのカット絵を教室内に連続掲示することで、場面の変移が一連の話として捉えられることを補完する。
  • 円グラフの部分に色を塗らせ、その色の面積の大きさで人物の心情の積極性と消極性を表示させ合い、互いの読み取りを対比させ合う。
  • 場面や人物の様子を表す語句表現、そしてそのセリフを中心に板書するとともに、上段に「あかざばんば」を、また下段に他の人物を板書し、その対比効果を図る。
  • 第2ターム(指導計画参照)において、6時「あかざばんばの決意のうち」を3時の村中の願いに立ち戻って深める。

→中学年としての長い読みを必要とし、この授業の最大のポイントである。

指導計画

【第1ターム】
1~2時 ほかの民話を読み、親しみを持つ。
3時 全文を素読し、第一次感想を交流し合う。
4時 場面わけについて話し合い、学習計画を立てさせる。
5時 新出漢字や難語句について交流し合う。

【第2ターム】
1時 「ちょうふくやま」がどんなところなのかを想像し合い、それに寄せる人々の思いを予想させる。
2時 「ある年の秋」の場面の様子の急な変化とそれに伴う人々の様子や動揺について話し合う。
3時 村中の様子や人々の会話に気づかせ、人々の動揺や心のつもりを読み合う。
4時 だだはち・ねぎそべの心の揺れとあかざばんばの後押しの決心を読む。
5時 3人が山に登る途上の場面の様子の変化とそれに伴う情景の変化について話し合う。
6時 山に登る3人の様子を対比しながら、あかざばんばの決意とそのうちにあるものを読み取る。
7時 あかざばんばとやまんば親子との出会いで、あかざばんばの様子から、その驚きを想像し合う。
8時 やまんばの家にとめおかれた時のあかざばんばの気持ちと、帰ることになったいきさつについて読み合う。
9時 あかざばんばが村に帰る前と後での村人の心の変容を考える。
10時 あかざばんばの人柄について考えながら、人々の暮らしの変化を読む。

【第3ターム】
1時 全文を熟読し、感想をまとめ合う(話の始まりと終わりでの、やまんばと村人の関係など)。
2時 ほかの民話を読み、その本を紹介する。

4、第2ターム6時の授業指導案

 
ここでは、この授業の最大のポイントが示される第2ターム6時の授業の、具体的な指導案を掲載します。

場面の構成要素

(ア)人物・場面・事柄の推移を読む(低学年・「順序性の読み取り」)

a.「いよいよ…登ることになった」
『おらたちもおしまい』→「いつもいばって」→「平気なふうをして出かけたと」

b.「しばらく~と」→「足の下に、村が小さく見えて」「心細く」

c.「まずまずがまんして~と」→「急に、気味の悪い風が」

d.だだはちとねぎそべ:「がたがたと力もぬけて」→「ばんばにしがみついた」⇔「なんのなんの」

e.「しばらくすると」→「さっきの何倍も強い風が」「葉を鳴らして」

f.あかざばんば:「こりゃたいへん」「しがみつき」「風をやりすごし」「後ろをふり返って」

g.だだはちとねぎそべ:「すがたは見えず」「もちを入れたおけが二つ、じゃんと重ねて」

h.あかざばんば:「力もぬけて」「ぺったりすわりこんだまま」「どうすべえと」「考えこんだ」

i.「しかし」「申しわけねえ」→「また、山を登っていったと」

(イ)様子や言動を表す表現から、双方の「前向き」度の違いを対比
〈あかざばんば〉

  • 「あかざばんばが先に立って」
  • 『なんでもねえもんだ』「力をつけて」
  • 「後ろをふり返って」
  • 「力もぬけて」「ぺったりすわりこんだまま」「どうすべえと」「考えこんだ」
  • 「また山を登って」

→前向きであり、2人に逃げられて戸惑うものの前向きな姿勢を崩さなかった。

〈ねぎそべとだだはち〉

  • 「おしまいだ」「食われてしまう」
  • 「平気なふうをして」
  • 「力もぬけて」「あかざばんばにしがみつき」
  • 「すがたは見えず」
  • 「おけが二つ、じゃんと重ねて」

→消極的で、ついには逃げ出した。

(ウ)過去の授業の内容から理由を読み取る(中学年の「長い読み」が可能かどうか
「先に立っ」たあかざばんばは、おけを二つ置いたまま二人が逃げ去ったことで、「力もぬけて」「ぺったりすわりこんだまま」「どうすべえと」「考えこんだ」。
→行くことも、戻ることもできずに進退きわまった。
しかし、「村の人たちに申しわけねえ」「おらが食いころされればすむこんだ」とまで思いつめるあかざばんば。彼女のうちに、一体、何があるのか?

彼女に「また山を登」らせたのは、第2ターム3時に学習したことが理由。
→自分達の食い扶持を減らしてまでも、村中が家ごとに米を分担して「もち」をつき、2つの「おけ」に持たせたこと。その人々の願いの大きさと強さが、「また山を登」らせたのである。

目標

あかざばんばとねぎそべ・だだはちの様子を対比して読み、あかざばんばの決意とそのうちにあるものを読み取る。

展開

【編集後記】

ただ時系列を追っていた低学年の読みから、前に戻って理由を関連付けられる中学年の読みへ。ステップアップのために最適な教材だと言えるでしょう。

民話というジャンルに挑戦することで、普段と違う世界観を楽しんだり、語彙力を増やすこともできます。ぜひ活用してみてください。
(文責:EDUPEDIA編集部 高橋遼)

【プロフィール】

興津洋男(おきつ ひろお)

  • 大阪府島本町立第二小学校 常勤講師。
  • 「読書こそ、国語力の礎」で第60回読売教育賞国語部門優秀賞 受賞。
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