毛筆指導小学3年生 ~初期段階がその後の毛筆を楽しめるかどうかの分かれ目

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なかなか上手くならない

書写の時間が上手くいかないと感じることはないでしょうか。
集中が続かず、雑で、早く書いてしまい、「できたできた」「これ、どう」「あー、失敗した」など人に話しかけてしまう子供っていますよね。それが複数人いると、教室がザワついて全体の集中力もどんどん落ちてきます。何度指導してもかすれている、汚している、大きすぎ、小さすぎ、細すぎ、形が取れていない・・・本人も自分が上手に書けていないことは分かっており、残念なムードが漂います。
汚すことについては、汚れが落ちやすい墨を学校で購入して配ってもよいのではないかと思います。または、初期の毛筆指導に関しては、水でいいのではないかとも思います。クラス人数分(40セット)ぐらいは揃えておいてもいいのでは。例えば、下記↓↓↓リンクのような。

『水でお習字/半紙』水書き【呉竹製】

大切な初期段階

6年生までの学習で、40個ぐらいの毛筆教材があります。たとえば3年生日本文教出版の教科書では、「一二」「川」「日」「人」「小」「ビル」「式」「つり」「水玉」に加えて書初め「正月」「生きる力」があります。それぞれの教材の文字には発達段階に合わせた課題(目標)があり、注意を要するポイントがいくつかあります。3年生で習う各ポイントをきっちりと身に着けさせることができれば、その後の毛筆練習は楽しい時間になります。初期段階のポイントは後々の出来不出来にとても影響してきます。もし初期の指導を誤るとと毛筆の時間はただの苦行になってしまうかもしれません。嫌いにさせてしまわないことが大切です。子供にとって3年生の初期段階はたいへん重要です。
たとえば、「日」の目標は「折れ」です。①横画から縦画に入る際、一旦力を入れなおします。②縦画の方が力を入れて太くしなくてはなりません。③これだけでも十分に難しいのですが、さらに横画三本の2つ間を同じにして、④下二角は、少し下方向にはみ出します。⑤少し右上がりとか、⑥始筆⑦終筆のことまで言い出すと、子供はアレルギーを起こしてしまいます。
特に3年生は毎回のように基本となるポイントを含んだ字が出てきます。横画・縦画・はらい・はね・とめ・点・折れ・曲がり等々。3年生時にしっかりとこれらを身につけさせ、「集中したら上手く書けた」「なんだか楽しい」と、子供たちに思わせることがそれ以降の毛筆の時間に大きく影響してくると思います。
基本的に手本をよく見て練習するというのが小学校書写のパターンです。ところが、何故か長年、書写の教科書は手本がB5判のままです。そうすると、子供はB5の手本を拡大してB4の半紙に書き写していることになります。それでは、ついつい字が小さくなりがちですし、不器用な子供は拡大する際に字形が崩れてしまいます。特に3年生の子供は、のびのびとした字を書いてほしいので、手本が小さいのは論外であると思っています。机の面積が狭すぎるという問題はあるものの、なぜ、見開きでB4判の手本にしないのかが不思議です。

白抜き文字で

そこで、手本を白抜き文字にしてそれをなぞるという原始的な方法を試してみました。一応、指導書には白抜き文字の手本が付録でついています。これに手を加えてゆきます。

◆ 文字の枠線を太くする・・・指導書の白抜き文字は枠線が細いです。
◆ パーツごとに分ける・・・すぐに一文字(~4文字)を全部書かせるのではなく、ポイントをパーツに分けて何度も練習させます。パーツの分け方は、習熟加減によります。下図では「ビル」を「ビ」と「ノ」と「レ」に分けています。場合によっては「ヒ」の二画を2つに分けてもいいかもしれません。

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◆ 紙に指示を書いておく・・・雑な子供もさすがに少しは注意するようになります。穂先の向きも結構大事なので、書いておきます。
◆ 何枚も書かせる・・・1枚だけ書かせる教師はよくいると思いますが、清書をするまでほとんど白抜き文字で練習笹ます。

意外とこれは効果があり、字も説明も下手な私が指導しても、けっこう良い効果が生まれました。何と言っても、子供の字が太く大きくなります。

最初のうち(「一二」~「人」)

始筆と終筆をどれだけしっかりと意識させることができるのかがポイントになります。これがきちんと(斜めに点を打つところから始める~最後に点を打つところで終わる)できるか否かで、今後の書写が心地よい時間になるかどうかが決まってきます。

1つの教材にだいたい2時間かけて取り組むぐらいのペースがいいと思います。始筆と終筆を意識させるには3時間ずつかけてもいいと思います。30人学級であれば、

1日目に
  (2枚×30人+20枚(予備))×パーツごと=80枚×パーツごと
  これに、白い半紙に2枚ほど書かせます。
2日目も同じ枚数書かせるといいと思います。
2日目は納得がいかなければさらに白紙の半紙に1~2枚書かせてもいいでしょう。3年生なら、よっぽどの集中力がない限り、白い半紙に5枚が限度かなと思います・

「小」以降、慣れてきたら

1日目に  2枚×30人+20枚(予備)=80枚   
2日目で1枚×30人+10枚(予備)=40枚1日目は白紙の半紙を1人1日に2枚程度
2日目は白紙の半紙を3枚にして納得がいかなければさらに1~2枚書かせてもいいでしょう
こんなに印刷するのは紙がもったいないというご意見もあると思います。紙は、基本的に印刷を失敗したプリントの裏を使っています。あるいは、半紙に直接印刷することも可能です(印刷機によるかもしれませんが)。

早く書いても先に進ませない

予備の20枚は、早くできた子供に渡します。早くできて暇を持て余す子供がとてもやりづらいです。早くできた子供には、
「黙って手を挙げてください。先生が渡しに行きます。すごく早い人には2枚、ちょっと早い目の人には1枚渡します。」
と、説明します。
「速く書く競争をしているわけではありません。毛筆は、ゆっくり書く練習です。」
と、釘を刺しておきましょう。予備がなくなったら、「おかわりは無くなりました。次に進みます」で、次のパーツに進んでいいことにしましょう。
2日目は、1日目より少し早く進ませてもいいと思います。
とにかく早く終わりたいという子供も、速く書いても早く終われるわけではないことを悟り、少しは丁寧に書くようになります。早く書く子供が「テキトー」に書いてしまい、片付けさせると喋るは音を立てるわで周囲に迷惑ばかりかけてしまうケースは毛筆あるあるです。そんな場合は、毛筆セットを墨をこぼさない程度まで片付けさせて、延々と硬筆の練習をさせるのもよいと思います。これも、裏紙でいいので、硬筆練習プリントをどさっと印刷してストックしておくといいと思います。↓リンク先の教材を刷っておいて、果てしなく練習できるようにしておいてもいいでしょう。
点つなぎ文字練習 ~大きく丁寧に文字(ひらがな・カタカナ・漢字)が書けるように【教材】 | EDUPEDIA
片付け始めるのはチャイムが鳴る10分前というように設定しておき、それまでは毛筆を早く終わっても楽ができるわけではないことを宣言しておきます。半ば嫌がらせせすが(笑)、「早く書くのがよい、早く書ければ楽になれる」と思い込んでいる思考回路を変えさせないと、いつまでたっても手本をよく見て丁寧に書くという意識が生まれません。

自己採点

振り返りのために、自己採点をさせるのもいいと思います。
例えば、「日」の振り返りポイントは、

① 始筆
② 右上がり
③ 最後の画が太くしっかり書けているか
④ 全体的な字の太さ
⑤ 全体的な字の大きさ
⑥ 横画の間隔
⑦ 縦画が少し下にはみ出している

ぐらいに絞ってミニプリントを作り自己採点させればいいと思います。1回目の終わりか2回目のはじめに、各ポイントの出来不出来について、マジックペンで◎〇△の三段階で自己採点させてみましょう。手本と共に机上に置かせて、各ポイントを意識しながら練習させるといいですね。

できるまでやらせる。

特に、「この時間にここは修得させたい!」というポイントがあれば、できるまでやらせる機会を設けるのもいいと思います。
例えば「人」は右・左に「はらい」ます。左右どちらも難しく、特に右側のはらいは、だんだんと力を入れて、MAXに太くした後に、ゆっくりやや横方向に筆を上げてゆかねばなりません。適当に書くと鼻の下の髭のようになります。↓こんな感じで、とても残念です。


「右ばらい」のような重要かつ難しいポイントは、合格するまでやらせてもいいと思います。「手本とそっくりに書けたら、先生の方に半紙を向けて、見せなさい」と、指示して、上手くできていたら手で〇印を出してあげる、ダメなら×印でやり直しです。70%ぐらいの子供は容赦のないダメ出しを乗り越えて、上手く書けるようになります。1時間や2時間ではなかなか上手にできない子供もいますから、少々のお目こぼしはしてあげてください。毛筆が嫌いにならない程度に頑張らせましょう。

基本は褒める

何か厳しいことばかり書いてきましたが、

◆◆◆ 基本は「頑張らせ」「乗り越えさせて」「上達させて」、「褒めてあげる」 ◆◆◆

です。少々苦しい思いをしても、自分が上手になったと得心するものがあれば、子供はついてきますし、それは他の教科にも波及効果があります。もちろん、その逆もあり、「苦労させられた割には伸びずに叱られてがっかり」にならないように気を付けなければなりません。「よく書けたね。これ、あなたの最高傑作だよ。汚さないように残しておくんだよ!」と、上手く書けた瞬間を逃さずに声をかけてあげるようにすると、とても嬉しそうにします。
毛筆指導を通して、集中力や我慢する力(我慢の末に光が見えてくることへの理解)が生まれてくるのであれば、それは幸せなのではないかと思います。時々は、ご褒美タイムも取りながら進められるといいですね。

毛筆で、一文字を書かせる | EDUPEDIA

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