戦略的に動かす学級経営(菊池省三先生)

1 はじめに

この記事は、2014年6月8日に行われた、第2回JEES(全国初等教育研究会)教育シンポジウム第2部の菊池省三先生の講演をもとに作成しています。
NHKの「プロフェッショナル~仕事の流儀~」でも取り上げられた、菊池省三先生の学級経営の方法をご紹介します。

JEES「特定非営利活動法人全国初等教育研究会」は、公教育の担い手である教師と連携し、学校教育を支え、子どもたちにより良い教育を提供することを目的とした団体です。公教育の学力実態調査や教材開発による教師のサポート、サークル活動等による全国の教師の指導レベルの向上、地域社会と学校をつなぎ、社会全体で公教育を支える仕組みの構築を実行しています。
 
詳しくは、こちらをご覧ください。 http://www.jees.jp/

2 講演の内容

子どもたちの成長

菊池先生はこれまで何度も厳しい学級を担任されてきました。最初はやんちゃな子どもの多い学級でも、1年間頑張ることで大きな成長が見られるそうです。

菊池先生があるとき担任された学級では、3学期にダンス係とチアダンス係ができました。低位の子どもが多い学級では、自分の良さを発揮でき、それをお互い認め合うような係り活動はそもそも成立しません。この学級でダンスのような係り活動ができたのは、1年間かけて子どもたちが頑張った成果と言えます。この2つの係りは、あるときダンス対決をします。そのときに、ダンスをしていたある女の子の上履きが脱げて飛んでしまいます。翌日、教室の入り口のホワイトボードに「今日一日、上履きを蹴飛ばすぐらい元気な体で、心は落ち着いている一日にしましょう。」と書いてあったそうです。前日の上履きが飛んだ女の子の元気さを取り上げていたのです。菊池先生は子どもたちの1年間を通した変化を感じ、とてもほめたそうです。

このように、今回菊池先生は1年を通していかにして学級をつくっていき、子供たちが成長していくのか、具体的なエピソードを交えながら話してくださいました。

2:6:2の法則

働き蜂の話でよく用いられる法則ですが、学級経営でもよく言われるそうです。どんな集団でも2割の一流、6割の二流、2割の三流に分かれてしまいがちだとよく言われます。クラスで言うと、頑張る子2割、普通の子6割、ちょっと気になる子2割ということです。2:6:2に分かれている子どもたちを、菊池先生はまず、普通の子6割を頑張る子にして、最初の頑張る子2割と足して8割にします。しかし、ちょっと気になる子はそう簡単には動かないので、ちょっと気になる子はそのまま2割です。そこで、8割の中からスーパーA、つまり超一流をつくることが大切になってきます。超一流の子どもが出てくれば、ちょっと気になる2割の子どもたちを引き上げてくれるきっかけになります。厳しい学級を担任する場合、気になる子どもは絶対にいます。それを正面から注意したところで、ただ子どもとぶつかる指導を繰り返すだけになってしまいます。子どもやその保護者との対応でうまくいかないことがあっても、ある時はスルーし、ある時は我慢して、1年間の学級経営をどう戦略的に動かしていくかが重要です。2:6:2から8:2にして、8からスーパーAをつくって、みんなでちょっと気になる2割の子どもを少しずつ上げていくというスタンスが教師には必要です。

1年間の最初の日

菊池先生は1年間の最初の日をとても大切にします。1年間の最初の日だからこそ、何をどうほめるかに対してある程度のエネルギーを使うそうです。

菊池先生は離任式、赴任式、始業式で、気になる子どもたちの些細な行動を観察し、メモして、ほめるところを探します。礼の仕方、話の聞き方、座る様子など細かいところまで観察しています。例えば、式の時にじっとしていなかった子どもが教室の自分の席で前かがみになって座っていると、「先生は話し合いを大事にする授業をしたいのだけれど、○○さんは相手に興味を持って前かがみで話を聞こうとしているね、これが高学年の聞き方だよ」ということを伝え、拍手をしてほめたそうです。また、やんちゃで少し気になる子、先生が最初から名前で呼ぶと「どうせ俺のこと悪いやつだと思っているから名前を知っているのだろう」と思ってしまうかもしれないため、最初は名前を知らないふりをしてその子に近づき、何気なくほめるそうです。

1年間の最初から、何が正しくて、望ましいのかという行動や考え方の基準のようなものを児童たちに伝えていくことが重要です。1日の最初の朝、開口一番何をどう言うのかというところからしっかり考えていくことが教師にとってとても大切だそうです。子どもの変化はすぐには現れないかもしれないけれども、1年間のスパンの中で戦略的にやっていく。そういった考え方と日々の努力が必要だとおっしゃっていました。

お互いの違いが生きる授業

菊池先生は子どもたちが自発的に疑問を持ち、学びを深めていけるような授業を大切にされています。例えば社会の授業で、聖徳太子の十七条憲法について学んだとき、第三条の天皇の命令が絶対だというのはおかしいのではないかという疑問が生まれ、議論をしたそうです。また、奈良の大仏はもっと小さくてもよかったのではないか、なぜ紫式部は源氏物語が書けたのか、といったことも議論したそうです。

確かに、きちんとした知識領域を面白いネタで教授方法を工夫して教えていくのは大事です。しかしそうなると、様々な子どもがいる中で「自分はわからない」という子どもが出てくるおそれがあります。そうはならないように、学級の土台をつくって、必要な知識を教えながらも、様々なバックグラウンドを持つ子どもたちがいる中でお互いの違いが生きるような学びをつくっていくべきだと、菊池先生は考えていらっしゃいます。

教師が教えやすい、伝えていく授業と、違いが生きる、学びあう授業。この両方が必要だとおっしゃっていました。

3 関連イベント情報

スペシャル・セミナー 『地域を再生・活性化する「主体的・対話的で深い学び」とは?』

日時:2018年8月18日(土) 12:30〜16:50

会場:エル・おおさか 南館 南ホール(大阪府大阪市北浜東3-14)

内容
○菊池省三先生による講座「いの町・中津市ほかでの取組の現在」
○南惠介先生による講座「木を見て森を見て、そしてまた木を見る~全ての子供たちに小さな社会を紡ぐAL~」
○隂山英男先生による講座「福岡県飯塚市、田川市等における地域ぐるみの取組」
○講師鼎談「地域・学校を再生・活性化する、今後の教育のカタチを考える」

詳細https://www.kokuchpro.com/event/2d7fd7f0601b587906af123eff0d4aa7

4 講師プロフィール

菊池省三先生;愛媛県出身。山口大学教育学部卒現在は福岡県北九州市立小倉中央小学校教諭。小学生の国語力、コミュニケーション力を高める学習方法を、実践を通して研究している。また、この20年で学級崩壊したクラスを次々と再生。菊池メソッドを見学するために教育関係者に限らず多くの人びとが全国から訪れる。12年7月16日にはNHKプロフェッショナル仕事の流儀に登場。大反響を呼び、コミュ二ケーション教育の第一人者として全国から注目を集めている。

平成15年度 北九州市すぐれた教育実践教員表彰

平成16年度 福岡県市民教育賞受賞


・文部科学省「『熟議』に基づく教育政策形成の在り方に関する懇談会」委員
・全国コミュニケーション教育研究会会長
・全国教室ディベート連盟研究開発委員
・NPO授業づくりネットワーク理事
・九州地区教室ディベート連盟専門委員
・北九州地区の先生方を中心とした研究サークル「実践教育21サークル」代表

メールマガジン「未来を創る学級」連載中。

http://www.mag2.com/m/0001629666.html

5 著書紹介

・「コミュニケーション力あふれる『菊池学級』のつくり方」
菊池省三・菊池道場著 中村堂 2014年

・「小学生が作ったコミュニケーション大事典復刻版」
 北九州市立香月小学校平成17年度6年1組34名著・菊池省三監修 中村堂 2014年

6 編集後記

菊池先生が壇上に上がられた時、会場の空気が変わるのを感じました。話し始めは会場を笑いで誘って、真面目なお話の中に、時折笑いを入れて話してくださりとても引き込まれました。また、先生の子どもに対する愛情がとても伝わってきて、講演が終わった時、鳥肌が立った感覚を今でも覚えています。

講演の中の映像で菊池先生が子どもたちをほめる場面がありました。子どもたちが菊池先生にほめられる姿を見て、私までもが嬉しくなり、改めてほめることの重要性を感じました。また、菊池先生が子どもたちをほめるに至るまでの徹底した観察と準備があることを知り大変感銘を受けました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 本田耕平)

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