歴史学習が変わる「4つの視点」と「人物の木」

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目次

1 6年歴史学習の問題点

 問題解決的な学習を行うことは児童の主体性を引き出すが、調べたことをまとめるだけで終わってしまい、調べたことをもとにして考えたり表現したりする学習まで手が回らないこともある。
 そして、「小学校の歴史は通史ではなく人物中心」と言われて久しいが、人物よりも出来事について調べ考える学習が多くなりがちであった。
 以上のような問題を克服し、「人物中心」の歴史学習を行い、「時間をかけ過ぎず」「自ら調べ考え表現する力を高めること」はできないかと考え、次の2点を工夫して実践した。

①人物を調べる視点の設定
②表現活動「人物の木」の開発

2 人物を調べる視点の設定

 調べる活動を行う際には、学習計画を立てて、調べる内容を決めてから取り組むことが望ましい。例えば、縄文時代や弥生時代の生活について調べる時には「衣服」「食事」「住居」を調べる視点として設定することが多い。
 歴史人物を調べる際にいつでも使える視点はないだろうかと考え、次の4点を示した。

①「時代背景」その人物が登場したのはどんな時代だったか
②「目標」その人物がめざしたことは何か
③「業績」目標を達成するために行ったことは何か
④「結果」その後どうなったか

 聖徳太子について調べたときに、児童の一人は教科書や資料集を参考にしながら次のようにまとめていた。

①時代背景 蘇我氏と物部氏が勢力争いをしていた。
②目標   天皇中心の国づくり
③業績 ・蘇我氏と協力。物部氏をたおす。
    ・遣隋使を隋に送る。進んだ文化を取り入れるため。
    ・冠位十二階という制度を作った。
・仏教を重んじた。四天王寺を建てた。
    ・十七条の憲法を作った。
    ・法隆寺を建立。世界最古の木造建築。
④結果 聖徳太子の死後、再び蘇我氏の力が強くなり、天皇をしのぐほどになった。

 これらの内容は全て教科書や資料集だけで調べることができるので、児童が短時間に自分の力だけで調べることができた。

 戦後の人々については、児童は次のように調べていた。

①時代背景 敗戦してしまい、アメリカに占領されて、食料・衣類・日用品などが不足していた。
②目標 民主的な社会づくり
③業績・さまざまな改革をした。日本国憲法、義務教育、男女平等(以下略)
   ・経済発展をした。アメリカとの結びつきを強めた。
   ・東京オリンピックを開いた。
④結果 日本は独立を回復し、オリンピックなどをきっかけに日本は世界に認められる国となった。また、多くの人の努力で、経済なども発展していった。

 人物を調べる4つの視点を設定したことによって、児童は主体的に調べながら人物の業績や時代の特徴を理解することができた。

3 表現活動「人物の木」の開発

 これまで、調べたことを記録するためには、ノートやワークシートを使うことが一般的だった。調べたあとには、情報を整理し、互いに共有し合いながら比較・検討し、その人物の価値や役割を考えていく。しかし、6年社会科では時間が足りないために、各自が調べて終わりになってしまうこともある。また、資料を丸写ししてしまう児童や、書く活動を億劫がる児童も見られる。
 そこで、調べたことを記録すると同時に、調べたことの関係まで考えることができる方法として、「人物の木」という表現活動を考案した。
 これは、「人物を調べる4つの視点」を木の形に配置したものである。

「時代背景」を地面に書き、「目標」を幹に、「業績」を枝に、「結果」を葉に書くことで、歴史人物の全体像を構造的にとらえることができるようにした。「業績」を書く枝の部分は、マインドマップの手法を取り入れて書かせた。
 初めてこの活動をしたときには、教師が書いた見本を見せて参考にさせた。見本があることで児童はかき方のイメージをもつことができ、自分の力でかき上げることができた。時間のかかる児童には家庭学習で仕上げるようにさせた。

 調べたことを「人物の木」の形で表現させることで、歴史的事実を視覚的に関係づけてとらえることができるようになった。また、できるだけ多くの内容をかきこむために、今まで以上に一生懸命調べようとする姿も随所に見られた。

4 まとめ

 歴史学習を「人物中心」の内容で「時間をかけ過ぎず」「自ら調べ考え表現する力を高めること」を目指して指導してきた。人物を調べる4つの視点と人物の木については、歴史学習だけでなく国語の伝記教材の読み取りにも活用したところ、効果的な読解と記録を行うことができた。調べた人物に対する自分の意見も書き込むようにさせると、よりよい表現活動になっていくだろう。

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