1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
最初の人類であるジャワ原人からより現代人に近づいたホモサピエンスの時代について学習をした。まずは次の写真を見せた。「人類その誕生まで」(佑学社)より
発問1 ホモサピエンスがジャワ原人と違うところを探そう
本を教卓で広げて子どもたちに見せた。一つ違いを見つけるごとに席に戻ってノートに記録させていった。たくさんの違いを見つけることができたが、大きく分けると、道具・服装・体型・そのほかの4つに分けられた。
< 道具が違う >
- 武器がジャワ原人の頃よりも発達している
- ジャワ原人は棒とか石しかなかったけれど、2つ以上の道具を持っている。
- ジャワ原人は石なら石だけ、木なら木だけを道具として使っていたけれど、ホモサピエンスは石と木を組み合わせて道具を作っている。
- 弓の道具を使うようになった
< 服装が違う >
- 服を着ている
- 毛皮じゃないの?
- 動物をとったんだよ
- 首とかに飾りをしている
< 体型が違う >
- 目の上の骨が、ジャワ原人は出ていたけれど、ホモサピエンスは出ていない。
- ホモサピエンスは、背骨が曲がっていない。
< その他 >
- 動物を取るときに、罠を作っている。
- 草原に住んでいる。
- 自分たちが住む家を作っている。
たくさんの違いが出てきたところで、服装や道具について注目した。
発問2 飾りの道具は何からできていますか
- 骨や牙
すぐにこんな返事が返ってきた。骨や牙を使うためには、動物を捕まえなくてはならない。この時代にはマンモスがいたことを話した。そこで、
発問3 ホモサピエンスは、どうやってマンモスを捕らえたのでしょう。ただしマンモスは象のように集団で行動する動物です。
「集団で行動する動物」と聞いて「えっ!?」という声が聞こえてきた。とても捕まえることは無理だと感じたのだろう。それでもいつくかの取り方が出された。
- 遠くから弓矢でねらう。
- 崖に追い込んで落とす。
- 群れで動いているので、群れごと落として一匹を攻撃する。
- 落とし穴に落としてしとめる
- 最初5~6人で一匹のマンモスを誘い出し、それを仕留める。
- 穴に落として、弓矢でねらったり、火をつけたんじゃないかな
< 数人で捕まえる > という考えに対して、「ええー、そうかなあ?」という声があがった。マンモスは何人で捕っていかが討論になった。
発問4 マンモスを一人で捕まえることはできるだろうか
この問いに対しては、 < できる > < できない > の両方の考えが出された。
< 一人でもできる > 4人
- マンモスは集団で動いているので、一番最後の一匹が落とし穴に落ちるようにわなを仕掛ければいい
- 昔の人はマンモスの通る道を知っていて、そこに穴を掘っておく。
- 罠を使えば一人でも捕まえることができる
- 穴の中に槍とかを立てておけば、マンモスが落ちてきて体に刺さる
< 一人ではできない > 30人
- マンモスは集団で動いているから、一人では捕まえることができない。
- マンモスは人間の何倍も大きいから、協力しないとできない。
- 一人だと踏みつぶされてしまうのではないか。
- マンモスは大きいし、穴に落ちても生きているんじゃないか
- 何人も集まらないと大変。穴を掘るところから一人でやるのは大変。
このように両方からの意見が出た。 < ひとりでもできる > 派も、なかなか考えを変えようとはしない。そこで実際に、原始の人々の道具を作ってみることにした。
指示1 では実際に原始の人たちのように、学校の中にある材料を使って道具を作ってみよう
「やったぁ!」という大歓声と共に、運動場へ出ていって道具を作り始めた。
子どもたちは、作る道具がなくても結構作るものである。木や石、蔓を使って器用に作っている。私が水を使って石を研いでいると子どもたちがそれを見て寄ってきた。自分でもやってみて「うぉー、すげー」「よく削れる」と叫んでいた。木と蔓を組み合わせて、弓矢を作っていた。飛び具合はいまひとつと言ったところであった。
このように道具を作った後にもう一度尋ねてみた。
発問5 作ってみてどうですか。一人でマンモスを捕まえることができそうですか?
- できないよぉ
こんな返事が返ってきた。道具は作れても、一人でマンモスを倒すことができそうもないことがわかったようである。
3 参考資料
ヨゼフ・クライブル『人類、その誕生まで』(1978,佑学社)
4 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
5 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
6 編集後記
前時の学習では、人とサルとの違いを学習しましたが(原始の人々~サルと人の違いは~(シリウス))、今回は我々ホモ・サピエンスとジャワ原人の違いということで新人と原人の比較になってきます。違いという点で、道具が高度のなったこと、つまりは技術力の進歩と、集団での行動が取れるようになったことが理解できます。これらは言語の発展、文化の発展と繋がっていき、教育の必要性にも関わる内容ですね。
シリウスの森竹高裕先生の実践は、子どもたちが本当に生き生きと歴史の学習を行えていることが伝わってきます。道具作りの際の子どもたちの反応は、教える側にとってはとても嬉しいことではないでしょうか。学習の理解が楽しみになることで、学習の理解も深まり、今後の学習にもその姿勢が活かされていく。そんな様子が目に浮かびます。そのような授業からクラス運営ができる教員になりたいと思わされました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 坂本一途)
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