1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
裁判所のしくみについて、クイズ形式で学習をしました。
発問1:「今から裁判所についてのクイズを出します。罪になるか・罪にならないか、予想の答えをノートに書いていきましょう。」
- 第1問:親は子どもを学校に行かせないと
罪になる 罪にならない
- 第2問:プロレスの試合で,ラリアートをやり相手を殺してしまった。
罪になる 罪にならない
- 第3問:駅前にある他人の自転車を,ちょっと借りて乗り,また元に戻しておいた。盗むつもりは全然なかった。
罪になる 罪にならない
- 第4問:買い物に行って,五千円札で,チョコレートを買ったら,九千九百円のおつりをくれた。気がついたが,向こうのミスだと思いそのまま何も言わないで,帰ってきてしまった。
罪になる 罪にならない
- 第5問:けんかを見ていて,「やっちまえ!」「もっとやれやれ」と,けしかけた。相手はけがをしたが,自分は手を出していないので
罪になる 罪にならない
- 第6問:船が遭難。二人の船員が,一枚の小さな板切れにしがみつこうと争った。しかし,小さい板なので,二人がつかまったら二人とも溺れる。その時,力の強い船員が,もう一人の船員を押しのけ一命をとりとめた。だが,あとの一人は溺れて死んでしまった。
罪になる 罪にならない
- 第7問:みなさんは来年中学生です。では,中学生ぐらいから,自分でやったことの責任は自分がとらなければならない。たとえば,キャッチボールをしていて,誤って,近くにあった外車をへこませてしまった。それで,五万円払えと言われている。責任は子どもにあるか,親にあるか。
子ども 親
一問一問答えを発表していきました。
- Q1.( 罪になる19人 罪にならない10人 )
なる・義務教育だから
正解は罪になります。子どもを学校に行かせないと千円以下の罰金です。
- Q2.( 罪になる4人 罪にならない25人 )
正解は罪になりません。
- Q3.( 罪になる16人 罪にならない13人 )
ない・返したらいいんじゃないの
正解は罪になります。窃盗罪で十年以下の懲役だというと「ひえー!」の声があがりました。
- Q4.( 罪になる7人 罪にならない22人 )
ない・店の人がまちがったから
ない・50円くらいなら大丈夫なんじゃないの
正解は罪になります。詐欺罪で十年以下の懲役だというと「ウソー!」の声があがりました。
- Q5.( 罪になる14人 罪にならない15人 )
正解は罪になります。傷害助成罪で1年以下の懲役、または1万円以下の罰金です。
「いつも○○が言っているぞ」
- Q6.( 罪になる16人 罪にならない13人 )
なる・力強く板を押したから、力強く押す心があったんだから罪になる
ない・二人とも死んでしまうから仕方なかった。身を守るための正当防衛で罪はない。
正解は罪になりません。「そんなのヒドイ」と一問一問するごとに大騒ぎとなりました。
Q6.についてもう少し深く考えることにしました。
発問2:「もしあなたが溺れた側の家族だったら、この裁判に納得できますか。」
ほとんどの子が < 納得できない > という考えでした。そこで、日本では、地方裁判所→高等裁判所→最高裁判所と三回裁判ができる三審制について話をしました。
- Q7.( 罪になる6人 罪にならない23人 )
正解は罪になります。「エー!?そんなの罪になるの」ギャハハと笑いながら叫んでいました。
- Q8.( 罪になる29人 罪にならない6人 )
なる・人の名前を勝手に使っているからじゃないの
正解は罪になります。
最後に、身近なところで起こりそうな問題について考えてみました。
発問3:「道路でキャッチボールをしていたら誤って外車にボールをぶつけてしまった。車の人がやってきて修理代として5万円払ってほしい、と言ったとき責任はあると思いますか。」
ほとんどの子どもは < 責任はない > という考えでした。
< 責任はない >
・子どもだから5万円も払えない
・場所の選び方が悪いから責任はある。
「正解は、12、3才ころから責任を認めています。ですから、弁償しなくてはいけないときもあります」と話すと神妙な顔をして聞いていました。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
社会科の実践です。各罪の成立の有無やその重さ、裁判所の仕組みについて学びます。身近な例を使うことによって、難しいイメージを持たれがちな裁判所についても、より容易に理解を深めることができるかと思います。ぜひご活用ください。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 佐藤光紘)
コメント