善元流わくわくしちゃう総合学習~地域を題材にした授業~(善元幸夫先生) (第7回「学習する空間づくり勉強会」)

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目次

1 はじめに

2016年9月3日(土)に行われた第7回「学習する空間づくり」勉強会(早稲田アカデミーが主催する教師力養成塾)に参加しました。

1部では、東京学芸大学兼任講師の善元幸夫(よしもとゆきお)先生が実践している総合学習についてのお話がありました。

本記事では、第1部の善元先生の授業実践について紹介します。

2部では、善本先生と参加者とのディスカッションと元文部科学省官僚で現在京都造形美術大学教授の寺脇研先生からの次期指導要領改訂についての講演がありました。この内容については、以下の記事をご覧ください。

これまでの教育改革と次期学習指導要領改訂について(寺脇研先生)

次期学習指導要領改訂について対話しよう!(善元幸夫先生・参加者ディスカッション)

勉強会の主催者である牛嶋先生は、早稲田アカデミーに勤務をされ、教師力養成塾チーフインストラクターとして活躍されています。社内の研修はもちろん、小・中学校・高等学校での校内研修や公開授業、現役教師・教員志望者向けの講座なども担当しています。
「教師力養成塾 e-講座」の詳細については、こちらをご覧ください。http://youseijuku.jp/

2 授業実践について

2016年7月7日、久松小学校5年生46人を対象に、「宮古のふるさと発見 −宮古人はどこからきてどこにいくのか—」と題して、自分たちのルーツを探る公開授業が行われました。
 以下に、本勉強会で語られた善元先生の思いや授業映像・資料等を紹介します。

教師は授業で勝負する!授業は学習素材とのつきることのない対話!

○宮古島の授業をしようと思ったきっかけ

宮古島の授業をしようと思ったのは、今年の3月に沖縄に向かっている飛行機にあった機内誌を読んだのがきっかけです。「ただ今、人類発掘中!」という特集で、宮古島で2万年も前の人骨や人の生活の跡が発見されたとあり、沖縄で日本の考古学の歴史がひっくり返るようなことが起こっていると感じました。

幼少年期に「自分がどこから生まれて、どこに行くのか」ということを知ることは、子どもたち一人ひとりの「学びの履歴」をつくるうえで、とても大切なことだと思います。そのため、その機内誌をみたときに、7月に人のルーツを探る宮古島の授業をしようと決めました。

○授業の工夫 ~考古学と昔話のコラボ~

授業テーマの「ルーツを探る」というのは考古学です。授業をするにあたり、考古学に詳しい宮古島市教育委員会文化財係の久貝弥嗣さんに、宮古の歴史について教えてもらいました。授業当日はゲストティーチャーとして考古学の世界から見える宮古の歴史について話してもらいました。

ここからが私のオリジナルなのですが、「徹底した実証主義の考古学と民間伝承の昔話」をコラボさせました。昔話というのは与太話などが多いのですが、そこには人間の中にある深層心理や真理が言い伝えられてきているのではないか、と考えました。それを探るために、1万以上の昔話を選びながらジャンル別に読んで勉強しました。大変な作業でした。当日は、以前授業でお世話になった童話作家さんを呼んで、昔話と人間の歴史について話をしてもらいました。

こうして、実証史学の考古学と、何か人間にとって大切なものが込められている昔話のコラボ授業が生まれました。

(授業映像を見ながら、授業を盛り上げる仕掛けについて説明する善元先生)

○私が大切にしていること

地域の授業と自尊心

子どもたちに自分の地域を好きになってほしいと思います。そのため、地域で授業をつくっていくことを大事にしています。そういう授業を通して、子どもたちに自尊心を持ってもらいたいという願いがあります。

教材との対話・深い対話とは

授業をする前に、教材と徹底的に向き合います。授業作りは「学習素材との対話が9割」です。授業はそのような教材研究の中で生まれてきます。

そして、授業における深い対話とは、技術的な対話ではなく、相手の人生を含めての対話であると考えています。授業というのは、知識のインプットでも表面的な思考でもなく、教師や子どもが感じたこと・疑問などを、徹底的に突き止めていくものです。

子ども時代をたっぷり過ごす

どれだけ時代が変わっても、人がAIに負けると言われても、世界をつくっていくのは人間です。だから、子どもが子ども時代をたっぷり過ごし、痛い・冷たい・怖いなどの人間の感覚を豊かにすることが最も重要だと考えています。私はこのことをルソーから学びました。

○今後の授業アイデア

来年は前回の勉強会でお話した利き水の授業を膨らませて、水の授業を考えています。そこでは、今回の授業で歌ってもらった方に水の歌を作ってもらい、LIVEしてもらおうと思っています。宮古のダムの写真もたくさん撮り、教材と対話しながら授業を考えているところです。
(利き水の授業に関しては、第6回勉強会記事を参考)

(勉強会に持参された教材の一部)

3 授業動画

授業での子どもたちの様子や授業前の打ち合わせ、お話に出てきた歌手のLIVE映像など、約8分の動画にまとめられています。こちらからご覧になれます。

動画はこちら宮古島 2016 夏

4 授業資料(勉強会当日の配布資料)

宮古毎日新聞 HPへリンク

善元先生の実践が新聞にも紹介されています。

2012年6月26日(火) 沖縄人のルーツ学ぶ/久松小

2016年7月8日(金) 「宮古人はどこから来た?」/久松小

5 関連記事

6 善元幸夫先生の紹介

1950年埼玉県生まれ。1973年東京学芸大学卒業後、中国や韓国から引き揚げてきた子どものための「日本語学級」(江戸川区立葛西小学校)に14年勤務。このころから、さまざまな総合学習の授業をつくり始めます。
また「日韓合同授業研究会」をつくり、以後民間レベルでの交流を続けています。
趣味は露天風呂めぐり(「露天風呂友の会」会員)。
現在は東京学芸大学、琉球大学、立教大学、目白大学で講師を務めています。

≪著書≫
・『おもしろくなければ学校じゃない』アドバンテージサーバー
・『カリキュラム改革としての総合学習⑤』地域と結ぶ国際理解(編著)』アドバンテージサーバー
・『国境を越
える子どもたち(共著)』社会評論社
・『生命の出会い』筑摩書房
・『黄花菜よ、いま再び』筑摩書房
・『ひとつの生命』三五館 など

7 編集後記

前回の勉強会と同じく、授業について語る善元先生はとても楽しそうでした。全ての先生が同じように授業準備をする時間があるとは限りませんが、先生の「人間への好奇心」「未知への探求心」が子どもの学びにも火をつけるのだと思いました。
 また、大人への準備期間と捉えられがちな学校で「子ども時代をたっぷり過ごすことの大切さ」を説かれ、いつまでも子どものままの私は不思議な気持ちになりました。
(編集・文責 EDUPEDIA編集部 大和信治)

(12月10日(土)第8回「学習する空間づくり」勉強会の案内)

※以下、主催者より

第7回に引き続き善元幸夫先生をお招きして、前半は「教師は職人~知識・技能はどう継承するのか~」というテーマで、「漢字学習」の授業実践を行って戴きます。後半は参加者の皆さんとのディスカッションを通じて「授業づくり」そして「次期学習指導要領改訂」について共に考えてまいります。

第1部 基調講演

  • 子どもを決して教えこみの対象にしない。学びの主体としての子どもの発見!
  • 善元 幸夫先生(東京学芸大学講師・元琉球大学講師・教育学部兼任講師・元新宿区大久保小学校教諭)

①「教師は職人 知識・技能はどう継承するのか?」
  (漢字学習編)ー腑におちる、わかって納得、楽しい漢字ー

②「次期学習指導要領改訂」について対話しよう(その2)!
  「2030年の未来を見すえる学力・学習指導要領」とは何か、学力とは何か?
   2045年シンギュラリティ問題、学校、学校文化を考える!

第2部 参加者ディスカッション

基調講演を受けての質疑応答と「次期学習指導要領改訂」について、意見交換・協議を行いたいと考えております。

  • 日時:12月10日(土)14:00~16:00(予定)
  • 会場:豊島区立生活産業プラザ(池袋駅東口より徒歩7分)
  • 会費:2,000円(過去に教師力養成塾の講座を受講された方は無料でご参加いただけます。)
  • 懇親会:勉強会の終了後,懇親会の実施を予定しております。(会費3000円程度)
  • お申し込みは、こちらのメールにご返信下さい。⇒ youseijuku@waseda-ac.co.jp
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