楽しくなければ学校じゃない~「なぜ」に心を向ける教育を!~(善元幸夫先生) (第6回「学習する空間づくり勉強会」)

GOOD!
2041
回閲覧
60
GOOD

作成者:大和 信治 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

2016年3月20日に行われた第6回「学習する空間づくり」勉強会(早稲田アカデミーが主催する教師力養成塾)に参加しました。

勉強会では、東京学芸大学兼任講師の善元幸夫先生から、「~楽しくなければ学校じゃない~「なぜ」に心を向ける教育を!」をメインテーマとして、「子どもたちと創る授業」の実践例や授業づくりで大切にしていることなどを熱く語って頂きました。本記事ではその内容を紹介します。

勉強会の主催者である牛嶋先生は、早稲田アカデミーに勤務をされ、教師力養成塾チーフインストラクターとして活躍されています。社内の研修はもちろん、小・中学校・高等学校での校内研修や公開授業、現役教師・教員志望者向けの講座なども担当しています。

教師力養成塾 e-講座 の詳細については、こちらをご覧ください。http://youseijuku.jp/

2 善元幸夫先生の紹介

1950年埼玉県生まれ。1973年東京学芸大学卒業後、中国や韓国から引き揚げてきた子どものための「日本語学級」(江戸川区立葛西小学校)に14年勤務する。このころから、さまざまな総合学習の授業をつくりはじめた。
また「日韓合同授業研究会」をつくり、以後民間レベルでの交流を続けている。
趣味は露天風呂めぐり(「露天風呂友の会」会員)。
現在は東京学芸大学、琉球大学、立教大学、目白大学で講師を務める。

宮古毎日新聞(2016年7月8日)「宮古人はどこから来た?」/久松小
http://www.miyakomainichi.com/2016/07/90474/
善元先生が「宮古のふるさと発見ー宮古人はどこからきてどこに行くのかー」と題して行った公開授業が紹介されています。

≪著書≫
・『おもしろくなければ学校じゃない』アドバンテージサーバー
・『カリキュラム改革としての総合学習⑤』地域と結ぶ国際理解(編著)』アドバンテージサーバー
・『国境を越
える子どもたち(共著)』社会評論社
・『生命の出会い』筑摩書房
・『黄花菜よ、いま再び』筑摩書房
・『ひとつの生命』三五館 など


3 講義内容

学びはエンドレス 〈なぜ?⇔学び〉の繰り返し

水道局の方を招いて、利き水の授業を行いました。その方は、水のにおいだけでどこの川の水か分かります。子どもたちも利き水をしてみると、「なぜこんなにみおいが違うの?」という疑問が湧きます。そして、においの違いを知るうちに、「川と山の高さの違いはどうなっているんだろう?」と新しい疑問が生まれ、それを調べたくなります。他にも、においに敏感になった子どもたちは、給食室のにおいから、その日の給食のメニュー当てもするようになりました。

このように、既習から新しい疑問が生まれたり、学習が生活と結びついたり、1つの学習がさらなる学びへとつながっていくことがエンドレスな学びだと言えます。

言葉は出すのではない、出てくるもの

作文や日記など書くことが苦手な子が多いとよく耳にしますが、それは書く力がないのではなく、書く内容がないのではないでしょうか。言葉を無理やり出して書かせるのではなく、言葉は子どもの感動から自然と出てくるものです。クラスでアゲハ蝶の成長を見守る中で、子どもの心から出てきた言葉を、エピソードと共に紹介します。

「—大空にはばたけアゲハチョウー生物の命に触れた授業—」

アゲハチョウは不思議だ。誰に教えてもらわなくても青虫からさなぎになるときには、青虫は小枝にのぼり、体をひっくり返すような形で天を仰ぐように、自らの身を小枝に括り付けるのだ。

私はこんな授業をやってみた。アゲハチョウが羽化するまでの授業である。1,2年生の生活科(当時は理科の時間)の授業では植物の観察を丹念に行う。そして中学年になると生物(全国的にはアゲハ蝶)飼育は比較的容易であり、卵から青虫、さなぎそして羽化する変化がわかりやすいからだ。実は私は蝶になるのに失敗したこともある。

事件は朝に起こった。教室に行くと3年生の子どもたちは虫かごの枝にへばりついていたさなぎのアゲハを熱心に観察するために、さなぎを枝から引きはがし丁寧に観察絵を描いていた。私は真っ青になってしまった。
「これ、アゲハ 死んじゃうよ!」
私はそう叫んだ。子どもたちはきょとんとしている。意味が分からないのだ。
「先生、どうして?・・」私はすぐには答えなかった。子どもたちに考えてもらいたかったのである。
元来、自然のアゲハは地球の重力を利用し、枝からぶら下がるような形で、羽を伸ばしていくのだ。
「みんな、キャッチボールしたことある?」
「もしボールを投げて、そのままボールが宇宙まで飛んで行ったらどうする?」みんな大笑いだ。
「そうだよね、すべてのものは地球の重力にひっぱられている。」「ふうんん・・・・」
「だから昨日のこととアゲハのことは関係があるんだ」
みんなは考え込んでいる。するとある子どもが
「先生、さなぎを枝からはがしたことが羽によくないの?」
「うん、いいところに気がついたね」

話はこのように進んだ。答えは決して教えないもの、答えは子どもたちが自ら探し求めるものなのである。この学習で決定的に重要なことは学習があらかじめ評価基準をもってつくられるものではない。重要なことは学習のプロセスでありそこから次の学びを築いていくのである。

私はさらに今回の学習では私は、この子たちに重力、生命の死のことを考えアゲハの羽がまっすぐに伸びて美しいのは地球の重力があること、それができず死ぬであろうということを考えてもらいたかったのである。みんなで「問題発見の学習」を意図した。しかし子どもたちはちがった。見事にアゲハの救出を試みたのだ。誰が言うとなく「センセ!アゲハ助けようよ!」という言葉が出てきた。さなぎを縛っていたのは絹だから接着剤で張り付けるのはだめ、グループごとに救出作戦が始まった。子どもたちの知の形成は現実の課題と向き合った時にこそ形作られていくのだ。

そして運動会の前日、練習から教室に戻った時であった。
「先生!アゲハ、アゲハ、アゲハが飛んでるうっ!・・・」
アゲハは見事に教室に舞っていた。やられた!私の想定した「問題」を、子どもたちは遥かに飛び越えてしまった。私は授業の限界から考えたが、子どもたちは可能性を考え見事にアゲハを救出したのだ。問題が見えてきたらそれを解決したい、子どもたちはアゲハの限りある命から、さらに授業を「自分たちの問題を解決する学習」に導いたのだ。そして授業の最後に子どもたちからこんな俳句が生まれた。

  • 心配し アゲハ飛び立つ 運動会 
  • アゲハチョウ 大きな夢が 生まれるか
  • アゲハチョウ 木の葉の下で 雨宿り
  • 糸が切れ それでも飛べた アゲハチョウ
  • アゲハチョウ 空に飛んでけ アゲハチョウ
  • さなぎさん みんなのために まいあがれ

このように子どもは社会や自然の課題に触れると学習を見事に変える、まさに総合学習の学びのダイナミズムである。この授業で子どもたちは重力について学び、死を考え、そして救出に至ったのだ。これらの言葉は出すものではない。感覚が言葉として出てくるものなのである。

*指導要領(理科・3年)では「身近な動物を興味・関心をもち生物愛護の態度を育て,成長のきまりや体のつくり,生物と環境のかかわり、見方や考え方を養う(要約)」とあり、昆虫の育ち方には「順序があり,観察で周辺の環境を考え、生物は,環境とかかわり生きていること」とある。

総合的な学習を考える上で、大切にしていること

目の前の子どもと学びをつくっていくことが大切です。私は、ワクワクドキドキを大切にしながら授業をしています。教師が想定した通りに授業を進めるのではなく、思いもよらない子どもの発言や発想を楽しみます。「何が起こるか分からない」という不安を楽しむのが総合学習だと思います。

総合的な学習でどんな力をつけるか

「その学びは5年後、50年後の未来にも通用するのか」ということを考えます。短期的はどうか、長期的にはどうか、というように複視眼的に子どもをみる必要があります。その力がどうすれば身につくか、ということですが、「明日も学校に来たくなるような授業をする」それが、教師に求められる資質・能力につながるのだと思っています。

私の原動力

私は「マグロ」です。前に進むだけで、後ろは振り返りません。

それと、私は勉強を人のためにやっているのではなく、自分のためにやっています。自分の知的好奇心から、自分が面白いと思ったことをとことんやる。それを授業にしていますので、自分のためが人のためになるという思いを持っています。いわゆる真面目な勉強も大切ですが、ちょっと視点を変えて世界をみると、面白いものが見えてきます。

教育とは

「学校は人に物を教うる所にあらず、ただその天質の発達を妨げずしてよくこれを発育するための具なり。」

これは福沢諭吉の言葉です。教育というのは、教師が子どもに何かを教えるのではなく、子どもの持っている良さを存分に伸ばすことだと思います。また、学校で子どもだけが学ぶのではなく、教師自身も一緒に学ぶ授業をしていきたいです。

4 編集後記

「自分のためが人のためになる」という言葉が印象に残っています。勉強会のテーマに「楽しくなければ学校じゃない」とあるように、善元先生自身が誰よりも学ぶことを楽しんでいらっしゃるように思いました。

また、文章だけでは伝わらない先生のパワフルな姿は、まさに「学習したくなる空間」をつくっているのだと感じました。ライブでしか伝わらない先生の力を感じることは勉強会に参加しての大きな学びです。貴重なお話をありがとうございました。
(編集・文責 EDUPEDIA編集部 大和信治)

2016年9/3(土)開催 第7回「学習する空間づくり」勉強会の案内

(以下、主催者より)
「~善元流わくわくしちゃう総合学習~ 子どもを決して教えこみの対象にしない。学びの主体としての子どもの発見! 」をテーマに,初回(9月)は今夏善元先生が宮古島の小学校5年生を対象に行った総合学習の実践事例についてご紹介。
 合わせて,参加者の皆様と子どもたちと創る授業や次期学習指導要領改訂について,意見交換・協議を行いたいと考えております。参加者の問いに答える,一緒に創る勉強会にしたい!と考えています。
 学習する空間づくり(学習意欲を引き出す授業の空間づくり)から一歩踏み込み,児童生徒が主体的協働的に深く学びに取り組める授業づくりのヒントとなる勉強会を目指して参ります。
 現職の先生方はもちろん,これから教師を目指される方や教育に携わる皆様に広くご参加戴ければと思います。

****************
 日本の学校は 40 年間、不登校の子どもが増え続けています。教師と子どもの関係が揺らいでいます。教師は授業で勝負!「学ぶということ、分からないことが分かる」ということでとても楽しいことなのです。毎日がぞくぞくワクワクする学校、明日も来たくなる学校、それは「授業づくり」。
 そんなことを考えながら、前半はたっぷりと宮古島の 小学校 5 年生を対象に行った総合学習について善元先生に語っていただきます。後半は 参加者の皆さんとのディスカッションを通じて「授業づくり」そして「学習指導要領」 の改訂について共に考えてまいります。

【プログラム】

*基調講演
 ~善元流わくわくしちゃう総合学習~
 子どもを決して教えこみの対象にしない。学びの主体としての子どもの発見!
 講師 善元幸夫先生(東京学芸大学講師・元琉球大学講師教育学部兼任講師・元新宿区大久保小学校教諭)

*参加者ディスカッション
 参加者の皆様と、子どもたちと創る授業や次期学習指導要領改訂について、意見交換・協議を行いたいと考えております。
 【参考】善元先生より皆様への投げかけ 
投げかけ①【教育内容から教育方法への転換への戸惑い】

投げかけ②【アクティブ・ラーニング提唱への戸惑い】

投げかけ③【「子どもたちは筋肉モリモリ,力瘤だらけのやせ細った人間」になるのでは?】

[日 時]  9月3日(土)14:00~16:00(予定)
[会 場]  林野会館(地下鉄丸ノ内線「茗荷谷駅」徒歩7分)
[会 費]  2,000円(過去に教師力養成塾の講座を受講された方は無料でご参加いただけます)
[懇親会]  勉強会の終了後,懇親会の実施を予定しております。(会費3000円程度)

参加希望の方は、お問い合わせフォームより,お申し込み下さい。

こちら

*お問い合わせ内容は「勉強会のお申し込み」を選択して下さい。
*勉強会の終了後,懇親会の実施を予定しております。是非ご参加下さい。
 お申し込みの際に,懇親会の参加予定についてもご記入下さい。(懇親会参加/懇親会不参加,等)

コメント

コメントはまだありません

    より良い実践のためには、あなたの励ましや建設的な対案が欠かせません。
    ログインして、ぜひコメント欄をご活用ください。