教育ICTでワクワクした授業づくりを~第2回 教育とICTの関係~(NPO法人iTeachersAcademy小池幸司さん)

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目次

1 はじめに

本記事は、NPO法人 iTeachers Academy事務局長であり、教育ICTコンサルタントの小池幸司さんへの取材をもとに執筆した連載記事です。

ICT機器を用いた教育のあり方、実践方法について全3回の連載記事を通して紹介しております。

第2回での記事では、ICT教育の必要性や、メリット・デメリットについてお話頂いた内容をご紹介しています。

第1回第3回の記事も併せてご覧ください。

2 NPO法人 iTeachers Academyとは

NPO法人 iTeachers Academyは、「これからの教育を担う教員志望者や教員のため、ICT活用をベースとした“新しい学び”を実現する力を養成するための場をつくり、日本の教育の発展と革新に寄与する」をミッションに掲げ活動している特定非営利活動法人です。ICTを活用した生徒主体の“新しい学び”を学校現場で実現するため、先生方に向けて教育現場におけるICT活用事例を提供するセミナー・イベントを実施されています。
NPO法人 iTeachers Academyのホームページはこちらよりご覧ください。

3 インタビュー

〇そもそもICT教育とはどのようなものなのでしょうか?

実は、「ICT教育」という言葉を私たちはあまり使わないようにしています。その代わり、「教育現場におけるICT活用」を短縮して「教育ICT」と呼んでいます。○○教育と言われる時点で、それが目的になってしまうからです。例えば、iTeachersで毎年行なっているイベントのトークセッションの中で、以前、大阪大学の岩居弘樹先生(NPO法人 iTeachers Academy代表理事)が、「ICT教育の目指すものとは何か」という質問に対して、「ICT教育という言葉をなくすこと」と答えたんですよね。これからの時代、ICTを使うのは当たり前。「ICT教育」という言葉自体、ICTが使われていないことの証明だと。ICTは使って当たり前のものになることがこれから目指すところだという思いから、ICT教育という言葉を極力使わないようにしています。

〇そもそもICT教育がなぜ今後の先生方に必要なのでしょうか。

これからは「主体的・対話的で深い学び」(アウトプット)が必須になってきます。だからといって、これまでの学び(インプット)をすべてなくすわけにはいきません。今まで45分の授業で指導してきた内容の中で削ることのできる部分はほとんどないのです。しかし、例えば板書やノートテイキングであればもっと圧縮することが可能です。板書をノートに写すときには、クラス全員が書き終えるまで待ったりといったロスタイムがあります。ICTをうまく使うことで、こういったロスタイムを減らすことができるとのです。

そのうえで、削減できた時間を「生徒主体の学び」に充てていくことができます。この「生徒主体の学び」には、さらにICTを活用することができます。子どもたちは楽しいからこそ主体的に学ぶのです。これまでも、授業で工作をしたり絵本を作ったりしていた先生は多くいましたが、それには準備に多くの手間がかかります。ICTを活用すればそういったアクティビティを容易に実現することが可能です。また、例えば動画制作をさせたら、いまの子たちは授業中だけではなく、休み時間や朝の時間まで使って勝手にやりはじめます。ICT を使う必要があるというよりは、ICTくらい使わないとこれから求められる学びを実現することはむずかしいと感じています。

〇ICTを使うデメリットはあるのでしょうか。

お金がかかることです。特に公立の学校では、予算の問題がネックとなって導入が進んでいない現状があります。そんな中、私立の学校を中心に広まってきているのが、タブレットなどの端末を家庭負担で購入する、いわゆるBYOD(=Bring Your Own Device)方式です。Wi-Fiや先生用の端末など費用は学校側で負担する必要がありますが、予算の問題を解決する上での効果は大きいと思います。

〇ICTを従来の授業に融合させる上でのアドバイスをお願いします。

ICTを活用したこれからの学びを実現するにあたって、一斉授業形式がダメというわけではなく、段階的に変えていく必要があります。例えば、板書を圧縮したり、生徒の解答を一斉に表示するアプリを使用したりするなど、従来型の授業の中でプラスアルファとしてICTを使用してみる。「ICTを使えばこういうことができるんだ」というのを感じてもらった後で、段階的に生徒主体の授業に移していくことが大切です。授業時間を圧縮しつつ、残った5分でアプリを使って遊んでみようかでもいいと思うんですよね。

〇先生方に求められることとは何ですか。

「教える」ということからの脱却ですね。従来の先生は、教えたいから先生になったという方が多いと思いますが、これからの教育では厳しいところがあると思います。いかに教えないで生徒たちに学ばせるか、そのための下準備ができるかどうか、というところが先生の役割になってきます。

「教える」ことよりも「生徒が学ぶ」ということに喜びが見いだせるか。そんな意識の転換が、これからの先生には必要になってくると思います。
これまでの学びでは「先生は知っている人、生徒は知らない人」だったわけですが、むしろ生徒の方が先生より知っているということがあってもいいわけです。生徒が知っていることを褒めること、知らないと言うことは先生にとってすごく怖いことだと思います。しかし、これからの先生たちは知らないと言えることが大切です。例えば、タブレットの使い方でわからないことがあれば「それ知らないから教えて」と言うと、生徒は喜んで先生に教えようと思って頑張ります。また、「先生はわからないから友達に聞いてみて」と促すと、生徒同士の主体的で協同的な学びが生まれます。これからの先生には、生徒との間でそのようなことを言える関係を作ったり、生徒同士の関係をうまくコーディネートしたりすることが求められるようになるはずです。

4 プロフィール

小池幸司さん(NPO法人iTeachers Academy 理事・事務局長)

2011年3月、他の学習塾に先駆けてiPad導入を実現。教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて自社のiPad導入事例やノウハウを発信。2013年3月にはiPad×教育をテーマにした初の実践的書籍「iPad教育活用7つの秘訣」を出版する。YouTube チャンネル「iTeachers TV 〜教育ICTの実践者たち〜」の番組プロデューサー。オンラインショップ「先生のためのICT活用塾」(https://www.manabi-media.com)を運営(プロフィールは2019年3月29日時点のものです。)

5 編集後記

この取材に関わることで、ICTを教育に取り入れるというのは私が思っていた以上にあまりハードルの高くないことで、身近なところから実践できることなんだと知ることができました。その一方で、ICTを用いることと、これからの時代の教育にも求められる理想像は密接に結びついていることを実感しました。
(取材・編集:EDUPEDIA編集部 出井めぐみ・安藝航・大森友暁)

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