本単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、面積の求め方や面積の単位と既習単位の関係について正しく考えることができる能力を養う。また、基準となる普遍単位の個数を基に考察した過程を振り返り、そのよさに気付き今後の生活や学習に活用しようとする態度を育む。
単元の評価基準
- 知識・技能:面積の求め方と普遍単位の表し方、それらの関係について理解できる。
- 思考・判断・表現:面積の意味や図形の構成要素に着目して、面積の求め方を数学的表現を適切に活用して説明することができる。
- 主体的に取り組む態度:面積の量感を持ち、今後の生活や学習に活用しようとする。
本実践の目的
普遍単位の意味とそれを活用する利点に関しては「長さの たんい」で学んでいるので、既習事項とすり合わせながら丁寧に面積の学習を進めることを目的とする。また、面積の定義にこだわって学びを深めて、定義から公式が導き出せることを体感させたい。そのため、授業の導入はできる限り簡素で、かつ資料を用いた分かりやすい授業展開にする。
スモールステップで学ぶ「面積のくらべ方と表し方」導入実践
1. 導入(復習とゴールの確認)
(1) 小学1年生「どちらがひろい」の振り返り
小学1年「どちらがひろい」授業実践:

ここでは、任意単位による比較のみ児童に考えさせる。

直接比較や任意単位による比較は教員が口頭で補足する。
(2) 小学2年生「長さの たんい」の振り返り
次に普遍単位による比較の確認をするため、長さを3つほど数値(cm)で提示し、どれが一番長いかを質問する。ここでの質問は簡単で良い。

長さも同様に直接比較や任意単位による比較を復習しつつ、普遍単位を活用する利点を振り返る。面積の意味を確認した後、本単元では面積の普遍単位を学ぶことやその意義を伝える。
2. スモールステップで学ぶ「平方センチメートル(㎠)」の学習
面積の表し方について学ぶ際には、長さの任意単位と比較して学ぶのが最も分かりやすいだろう。以下の画像を見せつつ、4ステップに分けて丁寧に学びを進める。
1) 長さの任意単位の確認

2) 「横の長さ」の認識

3) 「たての長さ」の認識

4) 面積の任意単位の学習

あわせて、1㎠の正方形が12個あるのでこの長方形の面積は12㎠であることを教える。
3. 面積を求める演習
(1) 基礎演習
以下の手順で演習を行う。
- いろいろな形の4㎠となる図形をかく
- 提示された様々な図形の面積を数えて求める
指定された面積でいろいろな形の図形をかかせ、正方形や長方形以外の図形でも正方形の組み合わせで表せることに気付かせる。その後、教員が提示する様々な図形の面積を数えさせ、「求めたい面積」=「面積が1㎠の正方形の個数」という認識を強める。
(2) 発展演習【面積の公式の導入へとつながる】
基礎演習にて面積を求めるには1㎠の正方形の個数が重要であると気付いていれば、以下の問題はヒントを参考にして数えることなく解けるだろう。

その後、「たては10個、横は12個だと面積はいくつになりますか?」など、口頭でいくつか出題することにより、児童は正方形の数を数えられないので計算を使うようになる。授業としては教え込むのではなく、ペアワークやグループワークを通して、解き方(立式)が自然と広まっていくようにすると良いだろう。
公式を導入する際には「表し方」の導入でも行った、長さを個数に落とし込める(4cmは1cmが4つ分と表せる)ことを確認するだけですぐに理解できる。あとは演習を繰り返すなかで長さのかけ算に慣れさせていけば良い。
おわりに
中学受験を目指す児童に「長方形の面積はなぜ『たて×横』で求められるのか」と聞いたことがある。ほとんどの児童が答えられなかったが、確かに答えられた児童が確かにいた。中学校高等学校で数学が得意な生徒は、定義に基づいて物事を考えることができる。定義とは、その事象を考える上での最低限使っていいルールのようなものなので、当然だろう。つまり、「解ける(公式をただ使える)」と「理解する(公式を説明・証明することができる)」には大きな乖離があり、算数や数学が得意な児童生徒は「理解する」ところまで落とし込めているのだ。
定義にこだわった授業は退屈で分かりにくくなることもあるが、面積に関しては多くの利点があるので、できる限りそれを生かした授業をすることが望ましいだろう。スモールステップで授業を展開し、算数が得意な児童にはロジカルな、苦手な児童には丁寧な学びを提供する。同じ授業を受けながらも児童によって受ける印象が大きく異なる授業の完成だ。
執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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