1 はじめに
本記事は、東近江市の元中学校校長で現在は小学校講師を務める雁瀬徳彦さんが作成した「こころの窓」の内容を引用・加筆させていただいたものです。「こころの窓」は中学生向けの日本史教材で、不登校の生徒や、学校に登校できても教室に居られず別室で過ごす生徒が一人で勉強できるように作られています。雁瀬さんの取り組みに関しては、こちらの記事もご参照ください。
本記事では、第60回「社会運動の高まりと大正の文化」の内容について紹介しています(教材の本文は編集せずに掲載しております)。ほかの単元の記事をご覧になりたい方はこちら。
2 「こころの窓」について
教材の一枚目を見ていただくと分かりますが、教材の文章を読むと歴史の流れがよく分かります。現在使用されている学校の教科書は写真も多くとても見やすいように思いますが、初めて歴史を学ぶ子どもたちにとって、とても難しい写真や資料です。また、教科書の文章には事実が羅列されているだけなので、歴史の事象がドラマティックであることや、当時の武将・リーダーがどんな思いで戦いや政治を行っていたかという感動が伝わってきません。だから、不登校の子どもたちが学校の教科書だけを使って一人で勉強しようと思ってもなかなか続かないのです。
そこで、子どもたちが一人で楽しく歴史の勉強ができるようにプリントを作成しました。また、次のページには復習問題があります。ほかの教材だと、「794年に何がありましたか」という語句を答えさせる問題が主流です。このプリントには語句を答えさせる問題ではなく、「なぜ、都を奈良から京都に移したのですか」という問題が載っており、起こった事実に対して、その原因や結果について子どもたちに考えさせる問いになっています。
解説編
こんにちは。今日も一緒にがんばろう。
今日のお題は「社会運動の高まりと大正の文化」です。
大正時代にはさらに工業化が進み、東京の人口も500万人を超えました。また、農村から都市に移り住み、工場で働く若者や女性の労働者も増えていきました。そんななかで、労働者が自分たちの生活を豊かにするために、労働組合が次々につくられ、労働運動が盛んに行われるようになっていきました。
また、就職や結婚で差別されてきた人たちによって、部落解放運動がさかんに行われるようになり、1922(大正11)年には、差別のない社会の実現をめざして、全国水平社がつくられました。
しかし、1923(大正12)年に、関東大震災が起こり、関東地方にものすごい被害をもたらし、この混乱のさなかに朝鮮人や中国人が暴動を起こそうとしているというデマが流れ、多くの朝鮮人や中国人が殺されるという事件も起こりました。
こうしたなかで、大正の天皇が47歳という若さではやく亡くなられたので、大正という時代はわずか15年で終わったのです。
この大正という時代は、一般の民衆にもいろいろな西洋の文化が普及し、演劇や映画などを楽しむという生活も始まりました。野球やテニスという新しいスポーツが始まったのもこの時代ですよ。それではここで、大正を代表する絵画や文学を紹介します。
<文学>
・白樺派(小説家のグループ)・・武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)・・「友情」
・新現実派(小説家のグループ)・・・・・・芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)・・・「羅生門」
・プロレタリア文学(小説家のグループ)・・小林多喜二(こばやしたきじ)・・「蟹工船(かにこうせん)」
<絵画>
・竹下夢二(たけしたゆめじ)・・・・・・「黒船屋」

「蟹工船」という小説は、貧しい労働者たちがカニを捕る船に乗って、休みなく働き続けさせられ病気になったら捨てられるという、ひどい労働を小説にしたものです。しかし、これを書いた小林多喜二は、日本の政府を批判しているということで警察に捕まってしまいます。そして、警察内で想像を超える拷問を受けて殺されるのです。
当時は、まだまだ人々にとって平和な世の中ではなかったのです。多喜二は、この現実の厳しい社会を政府に突きつけて、もっと住みやすい国にしたかったのだろうと思います。
多喜二さんが、現代の日本を見たらどんな風に思うでしょうね。
では、復習問題に行ってください!
復習問題と解答
1.どのような目的で、全国水平社がつくられたかをまとめてください。
就職や結婚で差別されてきた人たちによって、部落解放運動がさかんに行われるようになり、1922(大正11)年には、差別のない社会の実現をめざして、全国水平社がつくられました。
2.大正の文化をまとめてください。
大正という時代は、一般の民衆にもいろいろな西洋の文化が普及し、演劇や映画などを楽しむという生活も始まりました。野球やテニスという新しいスポーツが始まったのもこの時代です。
<文学>
・白樺派・・・・・・・武者小路実篤・・・「友情」
・新現実派・・・・・・芥川龍之介・・・・「羅生門」
・プロレタリア文学・・小林多喜二・・・・「蟹工船」
<絵画>
・竹下夢二・・・・・・「黒船屋」
3.小説「蟹工船」や小林多喜二の考え方について、あなたの感想をまとめてください。
工業化は進んだものの、まだまだひどい労働の上に日本の工業の発展があったのだと思う。そんななかで、小林多喜二は自分の命と引き替えに、日本の労働者の生活を豊かにしようとしたことはすごいことだと思う。こうした人々の努力があって、今の日本があるのだなあと思う。
3 ダウンロードはこちらから
歴史No.60.docx
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4 おわりに
不登校の子どもたちにとって一番大切なことは、何が何でも学校に登校させることではなく、家であろうが別室であろうが自立の力をつけてあげることだと考えます。誰かに言われて取り組む学習を重ねるのではなく、自分で考えて自分で学習できる力をつけることが大切です。その上で、学力をつけていくことが「生きる力」につながっていくと思います。
この「こころの窓」は、一人で勉強するために作ったプリントです。閉ざした『こころの窓』を開けて、社会に出て行くための勉強をがんばってほしいと考えてこの題名をつけました。
不登校に悩む子ども達の力になることを祈っております。

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