中学歴史〜戦後の占領政策〜(自主学習用教材「こころの窓」第68回)

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目次

1 はじめに

本記事は、東近江市の元中学校校長で現在は小学校講師を務める雁瀬徳彦さんが作成した「こころの窓」の内容を引用・加筆させていただいたものです。「こころの窓」は中学生向けの日本史教材で、不登校の生徒や、学校に登校できても教室に居られず別室で過ごす生徒が一人で勉強できるように作られています。雁瀬さんの取り組みに関しては、こちらの記事もご参照ください。

本記事では、第68回「戦後の占領政策」の内容について紹介しています(教材の本文は編集せずに掲載しております)。ほかの単元の記事をご覧になりたい方はこちら

2 「こころの窓」について

教材の一枚目を見ていただくと分かりますが、教材の文章を読むと歴史の流れがよく分かります。現在使用されている学校の教科書は写真も多くとても見やすいように思いますが、初めて歴史を学ぶ子どもたちにとって、とても難しい写真や資料です。また、教科書の文章には事実が羅列されているだけなので、歴史の事象がドラマティックであることや、当時の武将・リーダーがどんな思いで戦いや政治を行っていたかという感動が伝わってきません。だから、不登校の子どもたちが学校の教科書だけを使って一人で勉強しようと思ってもなかなか続かないのです。

そこで、子どもたちが一人で楽しく歴史の勉強ができるようにプリントを作成しました。また、次のページには復習問題があります。ほかの教材だと、「794年に何がありましたか」という語句を答えさせる問題が主流です。このプリントには語句を答えさせる問題ではなく、「なぜ、都を奈良から京都に移したのですか」という問題が載っており、起こった事実に対して、その原因や結果について子どもたちに考えさせる問いになっています。

解説編

こんにちは。今日も一緒にがんばろう。

今日のお題は「戦後の占領政策」です。

日本が降伏すると、連合国軍総司令部(GHQ)最高司令長官のダグラス・マッカーサーらによる、占領政策がはじまりました。まず、戦争に直接関わった軍隊を解散させ、戦争を指導してきた戦争犯罪人と呼ばれた人々を、極東軍事裁判にかけ東條英機らが死刑になりました。さらに、神様と言われてきた天皇に「人間宣言」をさせて、神様でないことを国民に伝えました。そして、すべての言論の自由(げんろんのじゆう・・・自由にものが言えること)を奪い、国民を恐怖のどん底におとしいれてきた治安維持法(ちあんいじほう)を廃止させました。また、男女の普通選挙が認められ、20歳以上の男女すべてに選挙権が与えられたのです。

このように短い期間にいろいろな政策が行われましたが、その後は、時間をかけて、日本を新しい民主的な国にするための政策が行われていきました。そのひとつが財閥解体(ざいばつかいたい)です。三井、三菱、住友、安田(みつい、みつびし、すみとも、やすだ)といわれる巨大な会社を財閥といいます。この財閥が持っている莫大なお金の力を利用して、国の政治が動いてきました。そのために、あまりにも大きくなりすぎたこの財閥を、小さい規模の会社に解体したのです。

その次に行ったのが、農地改革(のうちかいかく)です。戦前までの日本の農家は、一部の地主(じぬし・・土地を持っている人)が、土地を持たない小作人に土地を貸して高い小作料を取ってきました。そのために、小作人は貧しい生活をさせられてきました。しかし、国民をもっと豊かにするために、地主の土地をいったん安く国が買い上げ、その土地を小作人にさらに安く払い下げたのです。つまり売ったのです。そのため、ほとんどの農民は自分の土地を持つことができるようになったのです。この改革を農地改革といいます。これによって日本の農業は大きく変わり、多くの農民は豊かになったのです。

それから、日本の政府は、新しい憲法の制定に乗り出しました。新しい憲法の原案を政府は何度もつくりましたが、どうしても民主化を徹底できる憲法がつくれなかったのです。そのために、GHQがつくった憲法を日本の政府が訂正をすることで、ようやく新しい憲法が誕生しました。そして、昭和21年11月3日に国民に公布(こうふ・・・知らすこと)され、5月3日から施行(しこう・・・使い始めること)されました。この憲法には三つの大原則があります。一つ目が国民主権(こくみんしゅけん・・・日本の一番強い権利は国民一人一人が持つこと)です。二つ目が、基本的人権の尊重(きほんてきじんけんのそんちょう・・・人間は自由であり平等であること)です。三つ目が平和主義(へいわしゅぎ・・・戦争はしませんということ)です。この憲法を基本に新しい国づくりが行われていったのです。さらに、教育では、教育基本法が制定され、すべての子どもたちが小学校6年間と中学校3年間、しっかりと勉強ができるようになったのです。

いかがでしたか。

では、復習問題に進んでください。

復習問題と解答

1.GHQの占領政策の中で、日本が二度と戦争をさせないために、まずどんな政策が行われましたか。

戦争に直接関わった軍隊を解散させ、戦争を指導してきた戦争犯罪人と呼ばれた人々を、極東軍事裁判にかけ東條英機らが死刑になりました。さらに、神様と言われてきた天皇に「人間宣言」をさせて、神様でないことを国民に伝えました。そして、すべての言論の自由を奪い、国民を恐怖のどん底におとしいれてきた治安維持法を廃止させました。また、男女の普通戦況が認められ、20歳以上の男女すべてに選挙権が与えられたのです。

2.農地改革について、その内容をまとめてください。

戦前までの日本の農家は、一部の地主が、土地を持たない小作人に土地を貸して高い小作料を取ってきました。そのために、小作人は貧しい生活をさせられてきました。しかし、国民をもっと豊かにするために、地主の土地をいったん安く国が買い上げ、その土地を小作人にさらに安く払い下げたのです。つまり売ったのです。そのため、ほとんどの農民は自分の土地を持つことができるようになったのです。この改革を農地改革といいます。これによって日本の農業は大きく変わり、多くの農民は豊かになったのです。

3.新しい日本国憲法について、その内容をまとめてください。

昭和21年11月3日に国民に公布され、5月3日から施行されました。この憲法には三つの大原則があります。一つ目が国民主権です。二つ目が、基本的人権の尊重です。三つ目が平和主義です。この憲法を基本に新しい国づくりが行われていったのです。
いかがでしたか。

3 ダウンロードはこちらから

歴史No.68.docx

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4 おわりに

不登校の子どもたちにとって一番大切なことは、何が何でも学校に登校させることではなく、家であろうが別室であろうが自立の力をつけてあげることだと考えます。誰かに言われて取り組む学習を重ねるのではなく、自分で考えて自分で学習できる力をつけることが大切です。その上で、学力をつけていくことが「生きる力」につながっていくと思います。

この「こころの窓」は、一人で勉強するために作ったプリントです。閉ざした『こころの窓』を開けて、社会に出て行くための勉強をがんばってほしいと考えてこの題名をつけました。

不登校に悩む子ども達の力になることを祈っております。

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