叱るなら、早い時点で

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叱り損ねることを続ければ

関連記事、
叱ることは難しい
怒鳴る(脅す)は三流?
も、ご参照ください。

怒鳴らざるを得ない場合もありますが、注意が必要です。

怒鳴るとなんとかまともに動く → 怒鳴らないとまともな動きができない → 怒鳴ってもまともな動きができない

と、変化していくと、後が大変です。

さて、叱ることは難しいのですが、特に気に留めておかないといけないのが、叱るタイミングです。「叱ることは難しい」に書いたように、叱るタイミングをわざと遅らせる、泳がせるという方法も、うまくやれば子供自身に自分たちの行動について考えさせるよい期待になると思います。

しかし、もしも無意識に叱ることができていないとか、叱るタイミングが遅れているというような状態であっては、まずいです。

「叱るなら、早い時点で」だったのに、叱り損ねることを続ければ、どうなっていくか・・・

最初に叱り損ねて、「この先生は甘い」と思わせてしまった場合です。
気を付けないといけないのは、突如基準を変えることです。つまり、突如、厳しくし始めるということです。これをやってしまうと、低学年なら子供が戸惑うし、高学年なら反発されてしまう場合があります。いずれにせよ、子供との心が離れてしまいます。「何なんだ、あの先生、今までは見逃していたくせに」と、悪いことをしているのに、「指導がぶれる先生が悪い」というように論理をすり替えられる恐れがあります。

さて、下の例を見ながら、子供の現状と対処について考えて、叱り上手を目指してみてください。

ファーストホイッスル

バスケットやサッカーでも、審判が最初にファールをとってホイッスル吹いたときに、その判定が判例となり、試合全体の判定ラインが形作られると言います。ホイッスルを吹くのをためらって、ラフプレーを流してしまうと、その後のラフプレーを取り締まりにくくなり、試合が荒れるそうです。教室で言うなら、最初の1週間、遅くとも4月、が重要です。

値踏み

子供に指示を出すと、わざと反対のことを言ってみたり、従わなかったりして、教師が「値踏み」されるときがあります。特に、年度当初の時点で値踏みをしてきたときに、怯まずに、毅然とした態度を取れるかどうかで、その後、教師側がイニシアティブを取れるかどうかが決まってきます。
子供は教師を値踏みする
をご参照ください。

馬の話

馬は、まさに値踏みをするそうです。馬は人間のことをよく観察していて、「この人には従おう、こいつは馬鹿にしよう。」とか、見定めているそうです。かなり人間の本質的な統治能力を見抜くことができるそうです。つまり、馬に蹴られる人は今ひとつ支配力に欠けているということです。

だからと言って、馬に蹴られる人間が人間として・教師として失格なのかというと、そうでもないと思いたいです。しかし馬に蹴られるタイプの人間は、往々にして子供にも見透かされ、残念ながら指導の場面においてはうまくいかない場合が多くあります。

教師としての指導力というのは、生まれ持っての資質である部分も多く、子供を引っ張るのが上手な人は、新卒でも上手だし、ダメな人は本質的には何年たってもダメなものです。ただ、ダメな人でも努力しだいで少しは改善されます。気力と技術の充実を図りましょう。

犬の話

人間と犬のしつけを同列に述べることには抵抗がおありの方も多いかもしれません。しかし、意外と参考になる事例は多いです。

ドックトレーニングはかなり開発されてきており、どうすれば犬が飼い主に従い、飼い主との良好なコミュニケーションが育つのかがわかってきています。ネット上にたくさんの事例があるので是非ご覧ください。

散歩の途中で犬が違う道を行こうとするときがあります。そんなときはついつい引きずられてはいけません。毅然とした態度で、止まって無視しておきます。あるいはわざと、別な方向へ引っ張るといいそうです。犬の顔色を伺ってはいけません。当然の顔をして、引きずって行きましょう。

これは、子供と教師の関係(あるいは親と子供の関係)にも当てはめることができます。

子供も指示を出すと、反対のことを言ってみたり、従わなかったりして、教師を「値踏み」します。子供の甘えた要求に屈しているうちに子供の要求はさらにエスカレートするようになります。毅然とした態度で、方向を修正する事は必要です。

特に、年度当初の時点で値踏みをしてきたときに、怯まずに、毅然とした態度を取れるかどうかで、その後、教師側がイニシアティブを取れるかどうかが決まってきます。

犬の話2

犬を室内犬として座敷で飼っていたのが、飼い主の何らかの都合で庭とかの土間に下ろすと、犬は混乱してワンワンほえるそうです。自分は家族の一員として優遇されていたはずなのに、なんだこの待遇の改悪は、と、犬の目には映っているのだそうです。

子供も、最初から権利や快楽を与えると、権利を剥奪されたときの混乱や怒りは大きくなります。最初から甘やかさないというのは、当然ですが気をつけるべき点です。

芸人の話

芸人は、普段テレビや舞台でおチャラけをしている分、人になめられやすいです。取引先と営業等での条件を話し合うとき、取引先の交渉係が芸人をなめて、あまりいい条件で話が進まなくなることが多いそうです。
そこで芸人は、取引をするときにはマネージャーや付き人を、相手の交渉係の前でわざと厳しく叱り付けるそうです。

「なんだ、このぬるいお茶は!!馬鹿野郎!何遍行ったら分かるんだ!もう一度もってこい!ボケ!」
とかいう感じです。すると、それを見ていた相手の交渉係は驚いて、なめた目で見ていたイメージを書き換え芸人に人目置くようになります。そして、芸人側にとっていい条件で取引を進められる。・・・といった話を聞いたことがあります。これは「虚喝」と言って、古典的な芸人の交渉手法だそうです。

つまり、子供に対して、初期段階で、怖い顔を見せましょう、と言うことです。例えば、指示したことに対して、「ハアァァ?」と誰かが不満をした時点で、厳しくしかっておくと言うことです。さっきまで笑顔で話していても、子供が失礼な態度を取ったとたんに顔色を変えてガツンと叱れる教師がいます。そういう演技ができる役者にならないといけません。
ただ、最近の子供は怒鳴られたり、怖い顔をされると委縮しすぎて、酷い場合には不登校になるケースもあります。「怒鳴る」は三流です。もし、どうしても怒鳴らなければならないなら、個人を怒鳴るより全体を怒鳴る方が良いと思います。

結局は教師のコミュニケーション力

馬や犬を例にあげましたが、馬や犬を子供と一緒にしては、いけません。人間には人間のしつけがあると思いますので、あくまで上の話は指導方法を考える上でのヒントとしてお読みください。その上で、自分なりの子供への接し方を模索してみてください。

叱るということでなく、見る・聞く・近づく・距離を置く・ほめる・・・、結局のところ、教師の総合的なコミュニケーションの力が子供、子供たちとの関係を作り上げていきます。叱るにしてもほめるにしても、根本に相手を大事にする気持ちと愛情がないといけないことは間違いありません。

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