掃除を「子どもを伸ばす場」に (岡 篤先生)

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作成者: 岡 篤さん

はじめに

この記事は、岡篤先生が運営されているメールマガジンから引用、加筆させて頂いたものです。
岡先生のメールマガジンはこちらです。
http://www.mag2.com/w/0001346435.html
「掃除」をただやるのではなく、子どもの成長の場とするための試みとして、ここでは2つのパターン(雑巾の使い方、ほうきの使い方)について詳しく取り上げます。
姉妹記事、
掃除を「子どもを伸ばす場」に 2
も、ありますので是非ご参照ください。
また、雑巾・ほうき・傘などをきれいに収納させるのも大事な指導であると思います↓。
ユニバーサルデザインな掲示 ~ 百聞は一見にしかず

Case1 黒板を雑巾でふく

■雑巾は2回たたんで使う

黒板は、雑巾の使い方を指導するのに絶好の場でもあります。

特に低学年を担任しているときは、くり返しその手順を教えていきます。

まず、雑巾をたたむことを知らない子がいます。知っていても実際にはやっていない子がほとんどです。

さらに、せっかくたたんでも順番にひっくり返したり、折り返したりして8面使えることが理解できていません。

黒板はそれを指導するのに最適です。最初の面で5回ふいたら雑巾をひっくり返すように言います。また5回拭いたら折り直して内側の2面を順番に使います。4面が終わったら一度全部広げて反対側が表になるようにして、また4面使います。

黒板は広いので、順に面を使っていく方法を一連の動きで指導することができます。

「5回拭いたらどうするんだった?」「そうそう、その次、わかるかな」と最初のうちは付きっきりでの指導になります。

■拭き方は端から順に

端から拭くことも教えないと、何となくぐるぐると雑巾を動かして「できた」気になってしまいます。

一番端に雑巾を合わせて上から下へまっすぐ動かすように言っています。濡れて拭いた後が残るので、そこにまた端をきっちり合わせて上から下へ拭かせます。

「1、2~」と数えながら拭き、5回これをやったら雑巾の面を変えるというのが私のクラスのきまりです。黒板は2人で担当しているので、5回ずつなら8面で何とか全部掃除することが出来ます。

■乾いた後を眺めさせる

これが大事なポイントです。掃除が終わった後、5時間目の始まりにときどき、黒板を確認させます。きちんとできていれば本当にきれいな黒板になっているはずです。見ていて気持ちよくなります。

しかし、なかなかそうはいきません。隙間を空けてしまったり、たたむことを忘れてぐちゃぐちゃにつかんで拭いていたりすると、たいていチョークの跡が残ってしまいます。

「ほら、ここはきれいになっているでしょう。ちゃんとたたんで順番に使えば、チョークの粉が残りません。明日は気をつけて全部きれいになるようにしようね。」と当番の子に声をかけます。これは全員への指導でもあります。

Case2 ほうきの指導

■へび型の指導

何も言わずに子どもにほうきを使わせると、ごみを追って進んでいく子が少なからずいます。(図1)しかし、ごみを残さず掃こうするとき、教室の後ろの方へごみを掃くとすれば、体の動きとしては横に進むことが必要です。(下図参照*)

この動きを私は「へび型」とよんでいます。へびが体を左右にふりながら進む動きと似ているからです。(図2)

この動きは、高学年ならある程度説明すればできる子が多いはずです。中学年では、一緒に動いてみせることが必要ではないでしょうか。私は、自分が先頭になって動き、後ろについてこさせて一通り掃いた後、「こんな風にやりなさい。」と子どもたちに言うようにしています。

■徹底 ~へび型が合格するまでろうかはできない

1年生ではそれでもなかなかできません。私が先頭で動き、「じゃあ、次は自分でやってごらん」と言うと途端にまっすぐごみを追って後ろに動き出します。
「ほらほら、へび型で!」と指で動きを示すと、少し横に動きますが、いつのまにか少しずつ斜めになり、ついには後ろの方へ進んでいます。

つまり、全然きれいに掃けていません。掃除としては、教室掃除だけでなく、ろうか掃除もあり、雑巾がけもあります。

しかし、このへび型でないほうきの掃き方では、いくらやってもごみを残したままになってしまいます。

そこで思い切って、へび型ができるまでは、教室のほうき掃除だけをさせることにしました。1年生だったので、担当場所は、教室以外はろうかだけです。それだけなら、私が1人でやってもすぐにできます。

3日ほど、私が先頭になって掃き、後半は子どもたちだけでやらせるという流れでほうきの指導を続けました。
 
その後は、子どもだけでやらせました。へび型の動きができる子どもを私の代わりに先頭にして、1列で掃かせます。

最初のうちは、自分ではできているつもりになっている子どもでもなかなか実際にはできていない、という状態が続きました。

そのうちに、隣の2年生はろうかも掃いていることに気づいた子どもが出てきました。
「先生、ろうかを掃きたい」これを活用することにしました。
「だめです。教室でちゃんとへび型ができた人だけ、ろうかをやってもらいます!」

1日目は、1人も合格はでませんでした。2日目は1人合格にしました。「○○さん、じゃあ、ろうかやって」というと、呼ばれた子は「やったあー!」と大喜びです。「ええ、なんで。わたしもできてるのに。」と不満をもらす子もいました。自分の動きがわかっていないということです。

2日目も、1人合格です。私からすると、1年生にとってへび型の動きがいかに難しいかということを再認識できました。

■段階 ~ろうかが合格するまでぞうきんはできない

ろうかは、へび型が合格になった子がやっているので、簡単かと思いきや、せまいろうかをへび型ではくというのは、また違った難しさがあるようです。何度か、「へび型忘れているよ」などと声をかける必要がありました。

数日すると、また教室を合格する子が出てきました。せまい廊下に何人もいてもやることがありません。

今度は、最初からろうかを掃除していた子たちにぞうきんをさせることにしました。これで、やっとひと通りの掃除分担ができることになりました。
ほうきの使い方という一見すると簡単そうなことでも、子どもにとっては難しい場合もあります。そういうことを指導するときは、集中して指導すると効果があることが多いといえます。

まとめ

■どうせやるなら子どもを伸ばす場に

国によっては、子どもが掃除をしないところもあるそうです。
学校の中心はもちろん、授業であって、掃除ではありません。
教室や学校をきれいにするだけなら、業者に委託しても教師がやってもいいわけです。

とはいえ、掃除を子どもに指導するのであれば、少しでも子どもが伸びる場にできれば、それにこしたことはありません。

学校の観劇会である劇団にきてもらいました。前日の放課後、体育館で準備しているところを担当の教師が見に行きました。

すると、劇団員全員で体育館の床前面を雑巾がけをしていたということです。それを見た教師は、床がよごれていたのでやってくれているのだと思い、近くの劇団員に声をかけました。「準備で忙しいのにすみません。明日、子どもたちに掃除させますので、おいといてください」

すると、雑巾掛けをしていた劇団員の1人が立ち上がり、「これは、私たちの修行です。いつも劇をさせてもらう場所を全員で雑巾掛けすることにしているんです。ぜひ、私たちにやらせてください。」と笑顔でいうと、雑巾掛けにもどったそうです。

掃除にはそういう面もあるような気がします。

■技術・知識を教える 

子どもに掃除をさせようとしても、精神的な面ばかりを強調して、「がんばれ」「まじめにやれ」というだけでは、なかなか子どもが進んで掃除をするようにはなりません。

掃除に関する技術や知識を教えていく必要があります。雑巾を8面使うことや、 ほうきがけをへび型で行うなどの実践は、これにあたります。
「ちゃんと掃除しろ」と注意しただけでは、すぐにさぼってふざけてしまう子どもにも、雑巾の隅を使って窓のサンを拭くことを教え「ほら、こんなに雑巾が汚れただろ。それだけ教室がきれいになったということだよ。」と声をかけると、それから熱心に取り組むこともあります。

子どもたちにとっては、新たに身につけた技術や知識を使うことで掃除がおもしろくなったわけです。

■気持ちよさを感じさせる

大人も含めて、人間が続けて頑張ることが出来るのは、楽しいことか得することではないでしょうか。(あと、習慣もありますが、これは少し別のことになります。)

いくら掃除の技術・知識を教えて、「がんばれ、がんばれ。」と声をかけてもそれだけではなかなか続かない子どももいます。
これは、掃除が「やらなくてはいけないから、仕方なくやる。」ことになっているからです。

もし、掃除をして「一生懸命やったらすっきりした。」「きれいになった教室をみたら気持ちいい」という感覚があれば、教師がいるからでも、決められているからでもなく、進んで取り組める子どもになるでしょう。

編集後記

子どもたちにとって学校というのは長い時間過ごす生活の場であり、勉強だけでなく、うまく人との関係を築くことや、規範を守ることを初めとし、生活していく上で大事なことを学ぶ場でもあると思います。その中でも掃除というのは身近で日々のルーティンになりがちなものです。何も工夫がなければ、掃除をする意味も分からず、やらなければいけないという義務感から「つまらない」、「面倒くさい」というイメージがつきます。そして、子どもたちにとって掃除の時間はただの無駄な時間になってしまいます。

しかし、逆に考えるとこの掃除の時間をうまく生かせれば、子どもたちの大きな成長の機会にもできると思います。多くの人が当たり前にこなしていくことを、意義をもって子どもたちに伝えることで、掃除の時間が子どもたちにとって有意義な時間になれば、と思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 杉田彩)

講師プロフィール

岡 篤

神戸市立好徳小学校教諭。
漢字と俳句の実践に力を入れている。
学力研という研究会に所属。
●主な著書
『読み書き計算を豊かな学力へ』、『書きの力を確実につける』、
『これならできる!漢字指導法』、『字源・さかのぼりくり返しの指導法』、
『教室俳句で言語活動を活性化する』など
●HP
教師の基礎技術~若い先生へ
http://blogs.dion.ne.jp/aoka5/

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