私たちのくらしと政治 11 ~訳の分からない憲法前文の読み方~(シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の1つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

「私たちのくらしと政治」の単元の最初は、日本の政治のもとになっている憲法について学びました。

発問1 日本国憲法の前文を読んでみよう。読んで意味が分かりますか?

読むとすぐに「意味が分からない」「訳が分からない」という声があがりました。資料集には原文、教科書には易しくした文が載っていたので、2つを比べながら読むことにしました。

発問2 資料集に出てくる言葉を、教科書の文に照らし合わせてみよう。

原文では、[協和]となっている語句も、教科書では[親しく交わり]と易しい言葉になっています。原文と教科書の文を照らし合わせることで、文をよく読み、憲法の持っている基本理念を知らせたいと願いました。語句が難しく、辞書を使っても大変なものもありましたが、何とか意味を照らし合わせることができました。

次に憲法の条文を見ていくことにしました。「日本国憲法」(小学館)という本があるので、1人に1冊ずつ持たせ、

指示1 日本国憲法(小学館)を読んで、自分が好きな憲法は、第何条か探しましょう。

憲法の条文とともに、素敵な写真がたくさん入っているので、子どもたちはしばし、見入っていました。それでもしばらく眺めていると、好きな条文が見つかりました。好きな条文を写し、それを選んだわけを書かせました。人気のあったものは次のものでした。

  • 1位:第14条(10人):平等
  • 2位:第13条(9人):生命、自由、幸福を追求する権利
  • 3位:第23条(6人):学問の自由
  • 4位:第24条(5人):居住、職業選択の自由
  • 4位:第25条(5人):健康で文化的な生活
  • 6位:第 1条(5人):象徴としての天皇
  • 6位:第 9条(4人):戦争の放棄
  • 6位:第36条(3人):拷問、及び刑罰の禁止
  • 9位:第19条(2人):思想・良心の自由

 
その理由を見ていくと、なるほど納得できるものが多いです。その条文が好きなわけを聞いていると、素直に「日本の憲法は、国民のことを考えたいい憲法だなぁ」という気持ちになれました。憲法の条文の中に、思いやりのようなものを感じました。普段、こんなに素直な気持ちで憲法に接することがないので、すがすがしい気持ちになりました。

  • 第1条:日本国民は、天皇がまとめているからいいと思った。
  • 第9条:戦争をしないことだから、平和を求めているのがいい。
  • 第11条:国民は全ての人が尊重されるのがいい。
  • 第13条:やっぱり個人として尊重されたい。他人に迷惑をかけなければ、自由にしていいよという感じがする。
  • 第13条:人のじゃまをしなければ、幸せになっていいというのはいいと思います。
  • 第14条:差別されないことはいいことだと思う。
  • 第14条:社会的関係において差別されないと言うところに惹かれました。四民平等と似ている。
  • 第16条:請願権。誰でも国へお願いごとができるのがいい。
  • 第19条:考えることはみんな自由だから。
  • 第22条:どの職業についてもよくて、自由だから。
  • 第23条:学問の自由。大学に行くのもいかないもの自由だというのがいい。ぼくは行きたくない。
  • 第25条:健康で文化的な生活。生きていくためのものを与えてくれる。生活の保障をしてくれるのがいい。
  • 第36条:拷問及び刑罰の禁止。拷問とか刑罰を受けないから。
  • 第39条:無罪。無罪であれば、罰を受けることがないから。

指示2 みんなが選んだ条文は、日本国憲法の前文の中にも書かれているのです。ちょっと前文のどの文章が○条に当てはまるか言葉さがしをしてみよう。

教科書の易しく直した文章の方で、条文を当てはめることにしました。どれがどこに当てはまるのか、まるでパズルのように言葉探しをしました。最後はみんなで確認しながら、見ていきました。

  • 国民を幸福にする:第11条、第13条
  • 二度と戦争のおこることのないように:第9条
  • 国の政治のあり方を決めるのは、私たち国民にある:第1条
  • 安全に暮らしていきたいと思います:第36条、第39条
  • 私たちは、世界の人々が平和に、自由に、明るく暮らして:第9条、第22条、第23条、第25条

ここで教科書に戻り、憲法の3つの原則について説明をしました。

発問3 憲法には、3つの原則があります。それは国民主権、基本的人権の尊重、戦争放棄です。みんなが選んだ条文も、この3つの原則に当てはまっています。それぞれどの原則に当てはまると思いますか。

少し難しかったので、アドバイスを入れながら、次のように分類しました。

  • < 国民主権 > 第1条
  • < 基本的人権の尊重 > 第11条、第13条、第14条、第15条、第16条、第23条、第25条、第22条、第36条、第39条
  • < 戦争放棄 > 第9条 

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
(2015年1月時点のものです)

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

日本国の基本原則である憲法。憲法を学んでいく意味は大きいと思います。ただ教科書を読むだけでなく、子どもたちに考えてもらうことで、憲法の考え方が身に付きやすくなると思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 宮嶋隼司)

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