よりよい学校図書館づくり~「文化の切れ目」から考える読書~

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作成者: miyu (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、児童文学評論家の赤木かん子先生を取材し執筆したものです。赤木かん子先生は、学校図書館の改装に携わっているほか、子どもの頃に読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」としても活躍していらっしゃいます。
今回の取材では、小学校の学校図書館を中心に近年の読書傾向や図書館づくりについて伺いました。

2 今の読書状況について

今の読書状況について考えるとき、私たちはまず「文化の切れ目」がどこにあるかを考えなければなりません。なぜなら、文化の違いは読まれる本の違いに直結するからです。
文化というのはその時代を生きている人たちの無意識の集合体。したがって、文化の変化は「みんなの意識」の変化をもたらし、人々の読む本の種類にまで影響を及ぼしているのです。

最新の文化の切れ目は、今の小学4年生と小学5年生の間にあります。この切れ目はスマホの登場によって生まれました。例えば5年生から上の学年では「給食番長」や「小人図鑑」を読む子が多く、4年生から下では「世界一美しい元素図鑑」がよく読まれています。
もうひとつ前の切れ目はwindows95の広まりに影響を受けた、現在21,22歳の人の間にあります。

こうした文化の断裂は、学校図書館で知ることができます。ですが、教師や学校司書でそういったことを意識している人はほとんどいません。そのため「文化は変わる」ということが頭になく、若いときに手にしたノウハウでずっと仕事をしてしまう方が多いです。また、司書が間違ったことをしていても図書館はつぶれず、司書もクビになりません。結果として、平然と間違ったことができてしまいます。

3 よりよい図書館づくりのために

——図書館とは

本は、解説文や生活文などのリアル系と、小説や絵本などの空想系の大きく2つに分けることができます。例えば自然科学の本はリアル系、文学は空想系の本となります。
NDC(日本十進分類法)というのをご存知でしょうか。日本の公共図書館と学校図書館の採用している分類法なのですが、0~9までの10個の数字を使っているうち文学は9のみで、残りの0~8はリアル系の本になっています。つまり、図書館はリアル系の場所なのです。図書館は自分に必要な情報を引っ張り出しに行く場所であり、多くの人が勘違いしているような小説を読む場所ではありません。まずこの認識を改める必要があります。

 

ここで、学校の図書館を担当している教師を思い出してみてください。国語教師が多いのではないでしょうか。彼らの中には文学が好きで、「読書指導と言ったら物語や小説を読むこと」と考えてしまう方が多くいます。ですが、生徒の中に根っからの文学好きは何人もいないのです。したがって文学に寄った図書館を作ってしまうとほとんどの生徒はあぶれてしまい、その結果「僕/私が読める本はない」と感じて図書館に足を運びにくくなる生徒が増えてしまいます
公共図書館と学校図書館は幅広い人に開かれるべき場所です。だからどんな人に対しても、「ここには僕/私の読める本はない」と言わせてはいけないのです。

——子どもたちに今勧めるべき本は何ですか

自然科学です。自然科学はコンピュータの出現以降急激に発展し、今も進歩し続けている分野です。
実は1970年代までは文学の方が自然科学よりも人気があったのですが、新しいことが毎日分かってわくわくする自然科学の本が徐々に追い上げ、1990年代には逆転するまでになったんですね。

こうした自然科学の中でも、今の4年生から下の子どもたちは天文学元素に惹かれています。初めにも述べましたが「世界一美しい元素図鑑」が今、低学年にとても人気があります。一昔前まで主流であった恐竜や昆虫など生物の図鑑に興味を示す生徒は、以前よりも少なくなりました。それらを好むピークの年齢は今や4歳程度にまで下がっています。
また、彼らは子どもっぽいものを嫌う傾向があります。好みが大人なのです。ですから、司書はアプローチを大人用に変えて「昆虫とは何か」という本を勧めたり、図鑑でも児童向けのものではなく、DK社の図鑑を選んだりする必要があります。

——図書館をよりよい場所とするため、どういった工夫が必要でしょうか

図書館にきちんと分類した棚を作ることです。
例えば司書が自然科学の分類を覚えておらず、動物関連の本を一段に収めてしまっている図書館があります。つまり、ミミズとカエルと鳥を一緒に並べてしまっているのです。これは図書館の棚として決して良いものとは言えません。それを指摘すると「子どもたちはそんな難しい分類覚えられない」と言う方がいるのですが、生徒は「かぶとむしとちょうちょは同じ棚に入れたくない」と言います。実は大人と違って、3歳から8歳の子どもは分類が好きで、とても得意なのです。ですからきちんと分類した棚を作る、という本当に小さな工夫をするだけで彼らは有頂天になって喜んでくれます。

4年生から下の子どもたちは、情報を外から取るのではなく、情報のど真ん中にいます。ですから、私たちが考えている以上に情報との距離の取り方を心得ているのです。そしてそうした情報のやり取りも何年も続けるうちに習熟してきます。今年の1年生は「スマホは思考するには役に立たない。考えるなら本だよね」というように、本に回帰してきています。ですが、それに気が付いている教師と学校司書はほとんどいません。まだ子どもは子どもだと思っているのです。

4 今後の子どもたちの読書について

今後、子どもたちの読書がどうなっていくかは分かりません。何がどうなって文化が変わるかは私たちが知り得ることではありません。ですが、この次文化が変わるとしたらIoT(Internet of Things)が本格的になるときだと思います。すなわち話す冷蔵庫など、インターネットにつながれたあらゆるものが普及するときです。これが現実となれば、私たちの生活は大きく変化し、情報に対する皮膚感覚がまた全部変わります。そしてそのとき、子どもたちの読む本も変化することでしょう。

5 プロフィール

 赤木かん子先生

児童文学評論家。長野県松本市生まれ、千葉育ち。法政大学英文学科卒業。1984年に、子どもの頃に読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介・書評などで活躍している。(2017年11月24日時点のものです)

6 著書紹介




7 おすすめ本紹介

自然科学に関する、赤木先生のおすすめ本です。
・スミソニアン協会(監修)、デイヴィット・バーニー(編)『地球博物館大図鑑』東京書籍
・トーマス・マレント『蝶』ネコ・パブリッシング


8 編集後記

読書について考えるときは、「文化の切れ目」について考えなければいけないというお話が新鮮でした。よりよい図書館づくりのためには、今の子どもたちの姿を正しく捉えることが必要だと改めて強く感じました。学校司書の方のみならず教員の方にもぜひこの記事を参考にしていただきたいです。(編集・文責 EDUPEDIA編集部 粒來珠佑)

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