「小学校外国語教育~次期学習指導要領で必要な指導力~」(第1回EDUPEDIAスペシャルセミナー『誰でもできる!移行期間における小学校英語の実践』)

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目次

1 はじめに

本記事は、2018年5月12日(土)に京都で開催された、『誰でもできる!移行期間における小学校英語の実践(主催:EDUPEDIA)』内で行われた、株式会社学研プラスの浜田さんによる講演を編集・記事化したものです。

小学校での英語教育はなぜ必要なのか、教員にはどのような力が求められているのかについてお話いただきました。

関連記事も合わせてご覧ください。
小学校英語『We can!』10のネタ 〜Small Talkから所見文例まで〜
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2 講演

英語教育の「早期化」

まずは英語教育が早期化している理由、背景についてお話していきたいと思います。

グローバル化という言葉を新聞で見ない日はないと思いますが、具体的なものとしては日本企業の海外進出が挙げられます。海外進出はこの10年で倍増したとも言われますが、海外拠点の増加に伴い、グローバル人材の需要も高まっています。海外拠点を設置しても、そこで事業を推進できる「日本人」がいないことに企業が気付き、危機感を抱くようになってきたのです。

また、暮らしの中のグローバル化という側面もあります。グローバル企業に勤めていなくても、日常生活の中で外国人と接する機会は増えています。コンビニや飲食店の従業員が外国の方である、というのも日常的な風景になってきたのではないかと思います。日本で暮らしているからといって、英語が一切使えませんというのは困る時代になってきています。

日本の学生の現状

しかし、グローバル化が叫ばれる時代にあっても、日本からの留学生は減少しています。先ほども申し上げたように、グローバル人材を必要としている企業による留学支援は拡充されているのにも関わらず、「海外はちょっと……」という学生が多いのが現状です。

「あなたはこれから海外で働きたいと思いますか?」というアンケートに対し、実に63%の学生が「そうは思わない」と回答したというデータもあります。そしてこの回答の割合は、グローバル化に反比例する形で上昇しています

そしてその理由のトップは、「英語が話せないから」なのです。

子どもたちが生きる未来

一昔前までは、テストでいい点を取って一流大学に進学し、大企業に就職するといったキャリアが理想的なものとされていたように思います。

しかし、これからは、変化が激しく不確かな時代になると言われています。

働き方も、時代に合わせて変わってきています。コワーキングスペースという、ベンチャー企業やスタートアップ企業がオフィスをシェアするような仕組みも広まっています。パソコン1台あれば仕事ができる時代に、1人1人が自分の机を持つのではなく、スペースをシェアするというのは合理的な発想です。

AIの発達によって、働く相手が人間とは限らない時代になっていきます。様々な国の人とコミュニケーションをとるだけでなく、人間では無いものともコミュニケーションをとる必要が出てくるのです。

こういう時代を生きる子どもたち、先生方が育った時代とは全く違う世界で暮らす子どもたちを育てていかなければならないのです。

様々なバックグラウンドや価値観を持つ人たちの中で、自分の存在価値を発揮するため、最低限必要になってくるのは、やはり共通言語たる英語を話す力でしょう。社会に出てから英語力を身につけるというのも1つの考え方ですが、「ツール」として考えたときに、早期教育は大事になってきます。

レベルの変化

こうした背景から、今までは中学校で養われていた英語の基礎が、小学校高学年で身につけるべきものになっていきます。

中学校では今まで世界でいうところのA1、英検3級レベルでよかったところが、英検3級~英検準2級レベルが求められるようになってきています。これに伴い、高校卒業時に英検2級レベルだったのが、少し上がって英検2級~準1級レベルの力を持って卒業しましょうという形になっています。英検2級というのは実は結構難しいのですが……。

「英語の壁」と求められる能力

小学校の先生方からは、「英語の壁」という話をよく聞きます。

そもそも英語の壁が高いということと、『We can!』を活用した指導方法、「読む・書く」の発達段階に合わせた指導の仕方、そして研修の不足ですね。小学校の外国語に関する研修の充実化を図らないと、教科化に対応できる先生も増えていかないと思います。

小学校外国語教育のコア・カリキュラムでは「知識・理解」「英語力」「授業研究」の3つの観点から研修を行うことが求められています。外国語教育移行期で使用する新教材の示された昨年10月頃から、先生方の温度が急激に変化したように感じます。「小学校の英語教育が変わるから研修は必要とは感じているが……」といった雰囲気だったのが、新教材が出たとたんに「これを使ってどう教えればいいのか?」という困惑に変わり、研修の要望をいただくことが増えました。

今までは著名な児童英語教育の有識者による、、1日限りのイベントのような形で行われる研修が多かったのですが、これからはそれを踏まえて行われた実践がよかったのかどうかまで検証し、指導助言まで含めての包括的な研修を求められることが増えてきました。

英語教育で著名な琉球大学の大城賢先生も、新学習指導要領において英語を指導するためには、「指導力」「英語力」の両輪の研修が大事だという話をされています。

これまではどう指導すればいいかという「指導力」を上げようという観点が多かったと思うのですが、「英語力」も大事になってきます。この英語力というのは英検取得という話ではなく、アクティビティ中のちょっとした指示の出し方とか、『We can!』で言うところの「small talk」、例えば夏休みの思い出といったテーマについて、簡単な単語、短いセンテンスで、1分くらいで話す力ですね。こういった力が求められてくるのです。

3 プロフィール

浜田麻由子(はまだまゆこ)

現職:学研プラス教育ICT事業部シニアディレクター

前職時代より、10年以上小学校の外国語教育を専門とした営業を担当。現在は自治体や学校向けに、小学校外国語教育の研修を提供している。

4 関連イベント

★小学校外国語教育フォーラム2018 開催決定!★

2020年度外国語教科化に向けた移行期に入りました。新教材も配布され、小学校の先生方からは、新教材の活用方法や指導方法について様々な不安や課題も聞かれるようになりました。

学研では、そのような先生方の不安や課題を少しでも解消できる機会として、「理論と実践」の両方を学んでいただくことのできる小学校教員フォーラム2018を開催いたします。

日時:7/7(土)13:30~17:00

場所:大阪教育大学天王寺キャンパス(JR天王寺駅徒歩10分)

参加費:無料

登壇者:大城賢先生(琉球大学教育学部教授)ほか2名

※詳細、申込方法は以下のチラシをご覧ください※

小学校教員フォーラム2018.pdf

5 編集後記

新学習指導要領の目玉の1つである小学校英語の教科化。今回は「移行期間における小学校英語の実践」というテーマでセミナーを開催させていただきましたが、自治体の研修に加え民間研修も上手く活用し、本格実施に向けて準備を進めていただければと思います。

(取材・編集:EDUPEDIA編集部 中澤歩)

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