多忙化と戦う~田中まさお先生インタビュー~

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作成者:千葉 菜穂美 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は2018年9月より埼玉県教育委員会を賃金未払いの問題で訴えて今(2019年9月現在)なお戦っている田中まさお先生(プロフィールは後述)にインタビューを行い、そこでのお話をまとめたものです。
 インタビューは2019年9月20日、第5回公判後に実施しました。公務員の中で教師だけに残業代が出ていないこと、教師の仕事というのは文科省、教育委員会、各学校長の裁量でいくらでも増やせてしまうことをみなさんはご存じですか?田中先生はそのような状況と戦うことを決め裁判を起こしました。なお、記事にするにあたり、発言を一部修正させていただいている箇所がございます。

2 インタビュー

裁判を始めたきっかけは何でしょうか

未来のために私は訴訟を起こすことを決めました。次の新しく教師になる世代、これから日本の教育界を担っていく若い世代がよい環境で働くことができれば教育界はよくなるはずだし、子どもによい教育を提供できるはずです。ただ、そこに一番必要になってくるのは時間です。勤務時間内に仕事を終わらせることができれば今まで仕事をしていた時間で教員は自分の教養を深めることができたり、仕事以外の面において自分の生き方を模索することができたりするでしょう。時間外労働をなくすことは僕の夢です。「勤務時間内には仕事を終わらせる」これをやって私は教育界からいなくなりたいと思っています。だから裁判を起こしました。

長時間労働化した原因は何でしょうか

原因は裁判をしながら、私自身考えていますが、それはたくさんあるだろうし一概には言えないと思っています。その中で一つ言うとすれば私は学校長が悪いのではないかと考えています。私は裁判を起こすときに誰を訴えるかと悩みました。私は埼玉県教育委員会の教育長を訴えています。しかし、裁判をやりながら学校長が悪いのではないかと考えるようになりました。学校長がそれぞれの教師のこなせる範囲を超えるような仕事の指示を出してしまっています。ただ、社会でもそうですが、自分の仲間を悪いと訴えられる人はなかなかいません。これが一つの原因だと私は考えています。校長が変われば労働環境は改善されるのではないでしょうか。

実際に校長先生が増やした業務は何でしょうか

それは朝自習のプリント準備や学校指定のドリルの管理・チェック、歯みがきの指導、教室移動の誘導などです。少なくとも僕が教師になった昭和56年にはそのような業務はなく、追加されたものでその業務が負担になります。たとえ1日5分の業務でも1年行えばそれは17時間ほどになってしまいます。(1年の業務日を200日として換算)そう考えると1日あたりの負担は多いように見えなくても毎日行うと相当な負担になってしまって大変です。

長時間労働を減らすために外部委託や変形労働時間制の導入がありますがそれについてはどう思いますか

きっと何も変わらないのではないかと思ってしまいます。外部委託をしたところで学校の施錠を管理するのは内部スタッフである教師のままなのではないでしょうか。また、現行の法律では学校長や教育委員会などは残業代なしで教員をいくらでも働かせることができてしまうので、変形労働時間制を採用しても結局残業の仕組みは残ってしまうのではないだろうかと思います。
残業をしたらその分のお給料を出すという制度を作らないと根本的に何も変わらない気がします。

現場の先生たちが田中先生のようなアクションを起こすにはどうしたらよいでしょうか

おかしいことをおかしいと言えるようになることが重要です。これは相当勇気のいることですが、その勇気がなかったら校内改革はできません。それは普段子どもたちに伝えていることでもあると思います。つまり、校内で学校長にこれはおかしいと言い出せないのはいじめの感覚に似ているのではないでしょうか。私はいつでも教師を辞める覚悟があったからおかしいと言い出すことができました。やめる覚悟はありますが、子どもと関わり成長を見守ることはとてもやりがいのある仕事ですし、この仕事はとても楽しいです。生まれ変わったら私は子どもが大好きだからもう一度教師になりたいと思います。

3 プロフィール

田中まさお先生

埼玉県内の6つの小学校で38年間教えている男性教諭(2019年9月現在)
今年度末で定年退職を迎える前に長時間労働に歯止めをかけなければならないと2018年9月訴訟を起こしました。
田中まさお先生の公式サイトはこちら▷https://trialsaitama.info/
裁判の予定や裁判資料などについても記載されています。

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5 編集後記

この取材を通して教師の本当の忙しさを認識しました。学校現場で働く教師の皆様にもこのように教育委員会を相手取って訴訟を起こして戦っている教師がいるということを知っていただきたいですし、本当に苦しんでいるのなら1度吐き出してみてほしいと強く思いました。また、教師を目指す学生のみなさんにも田中先生の裁判の記録などをご一読いただきたいです。
(文責・編集:EDUPEDIA編集部 千葉)

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