1 はじめに
この記事は、2020年4月8日にCo-musubiさんによってNOTEに投稿された『オフラインを活用する小・中学校のオンライン授業検討会』の内容を抜粋して引用、加筆したものです。
以下、引用記事です。
『オフラインを活用する小・中学校のオンライン授業検討会』①
『オフラインを活用する小・中学校のオンライン授業検討会』②
『オフラインを活用する小・中学校のオンライン授業検討会』③
新型コロナウイルスの感染拡大という状況下で教育現場でも日々刻々と状況は変化し、対応に追われているのではないでしょうか。EDUPEDIAでは、必要な情報が教育関係者に届くように、【コロナと向き合う】特集をはじめました。
この記事は、4月5日にZoomで行われた『オフラインを活用する小・中学校のオンライン授業検討会』の内容を2回にわたってまとめています。
オフラインを活用する小・中学校のオンライン授業検討会(後編)【コロナと向き合う】
2 イベント概要
検討会の趣旨
日時:2020/4/5 13:30~16:30 @ZOOM
オンラインでの学習や授業への関心が高まる昨今、オンライン「授業」が開始され、オフラインをできるだけオンラインに横移動させようとする動きを見受けます。しかし、その場合Zoom疲れを起こし早期に新しい課題が生まれるのは明白です。
では、オンラインではどのような「授業」を行えばよいのでしょうか?例えば、学習指導要領を柔軟に解釈し、教科を横断して学習計画をデザインします。Zoomでつなぐ時間は種を蒔き、子どもたちが思考を働かせ始めるために使います。オフラインの時間を有効活用できるデザインとし、各自発表や話し合うためにまたZoomで集まります。
インプット、創造、自主学習、アウトプットをオンライン < オフライン(各自)のバランスで適度に組み合わせデザインする。これにより、これまで以上に豊かな学びも作ることが可能です。この手法について、Co-musubiでのプログラムや、休校中にオンラインで児童と先生をつなぎ学びを続けた小学校の実践を参考にしながら、小学校、中学校では自由な解釈で子どもたちの学びをどのように生み出せるかの検討会をしましょう。
※Co-musubiとは、生きるチカラを親子で育むオンラインコミュニティです。
メインスピーカーの紹介
【パネラー】
■ 井上真祈子(学び合うオンラインコミュニティCo-musubi代表)
https://www.co-musubi.com/
■ 蓑手章吾 (東京都公立小学校教員)
https://note.com/minote4405/n/n868a46d5799a
■ 井久保大介 (東京都公立中学校教諭)
http://ikubodaisuke.blog.fc2.com/
■ 柴田寛文(経産省 サービス政策課・教育産業室の課長補佐)
「未来の教室」プロジェクトに従事
https://project.nikkeibp.co.jp/pc/atcl/19/06/21/00003/032700060/
【モデレーター】
■ 竹村詠美(一般社団法人 FutureEdu 代表理事、一般社団法人 Learn by Creation 代表理事、Peatix.com 共同創設者)
https://learnx.jp/speaker/emitakemura/
※パネラー・モデレーターのプロフィールは4月8日時点のものです。
【参加者】
■ 教員・教育関係者約25名
3 パネルディスカッション概要
Q. (「オンライン教育」が注目される中で)新しい視点だなと思ったのが、オンラインで完結しないオフラインの時間をいかに充実させるかということでした。子どものオフラインの時間を充実させるという点で、何かヒントはありますか?
柴田:蓑手さん、井上さんの実践を聞いても、オンラインのままで画面の前に居続けることを強要することがなく、入りたくなったら入り、出たくなったら出るということが基本の考え方のように思われます。
カタリバの今村さんがやっている事業(※カタリバオンライン)もそうですが、オンラインとオフラインを組み合わせて実践されている事業者の方が多いですね。(休校に合わせて)無償で提供されている多くのデジタル教材も、双方向にやりとりできるような機能があるものが、結果的によく使われているように感じます。
Q. 井久保先生はオンラインでの実践はまだあまりされていないということでしたが、子どもが家にいながら自主的に学ぶ環境はどのようにサポートされているのでしょうか?
井久保:蓑手さん、井上さんの実践を聞いて思ったのが、選択させる余地があるのだな、ということでした。昨今のオンライン教育の事情を見ていると、「コンテンツを与える」という状況が多い中、お二人の実践では、参加するかどうかというところから選択でき、その内容も選択することができます。
そしてその選択について子どもの背中を押す、という役割であることを大事にされていて、子どもは家にいながら先生に背中を押されている気持ちになるというところがすごいなと思います。オンラインとオフライン、どちらも大事なことだと思いました。
Q.柴田さん、未来の教室では5つほどの学校がポートフォリオでの評価を導入されていると聞いたのですが、そのような観点から、評価への考え方、生徒のはみ出した学びへの認め方というところへご意見があればぜひお伺いしたいです。
ポートフォリオ:学習の過程や成果などの記録を、計画的にファイル等にためておくこと
柴田:未来の教室でも探究という要素を大切にしています。教科から入るよりも、個人個人の興味関心から入って、その後学びを広げていくということを重要だと考えています。
生徒がある時点から一年など経過することである状態へと移って行く、そのプロセスを軸に評価をしていくということを、今ちょうど検討していたところでした。今そこを整理していくと、オンラインでの学びの評価の体系を実装できそうな気がしています。
Q. 学びに参加するか選択できたり、コンテンツの自由の幅が広がったりすると、卒業までに基準に到達できるか不安だと思いますが、そのあたりは大丈夫でしょうか?
井久保:不安になりますよね。ただ、我々が基準を設定して、それに対して一斉に知識を提供して、それで基準を達成できるかというと、それはたぶん違うと思います。我々が教えたという事実は残るのですが、それを子どもたちがどう受け止めたかというのは分からないのです。
そのあたりはそんなに心配しなくてもよいというか、そのための形成的な評価であると思うので、やはりプロセスの評価を大事にしていく必要が出てくるのだと思います。
それと同時に、ポートフォリオの話も出ましたが、やはり学びのやり方がこんなに変わっているので、評価の仕方も変わるべきなのだと思います。こんなに学び方が変わっているのに、「A・B・C」、「5・4・3・2・1」と数値で評価するのは、もう本当に有り得ないと思います。
「A・B・C」ではないエビデンスというものをどのように把握していくか、そして「こんなふうに学びましたよ」ということをどう発信していくか、という方法を考えていかないといけないと思います。
Q. 井上さんはCo-musubiで長い間、オンラインとオフラインを組み合わせた実践をされていると思うのですが、オンラインでの励ましを受けて、自らの内発的動機で学びを進めていけるお子さんと、そうではないお子さんがいたとき、そうではないお子さんへのサポートはどのようなかたちでしているのでしょうか?
井上:そのような子どもたちが参加できるようになるためには家庭のサポートがとても重要なので、Co-musubiは最初から親子のコミュニティにしています。子どもが変わるには、保護者である大人が変わることが先に必要なのですね。
したがって、コミュニティにしている理由はどちらかというと大人の変容を目的としています。例えば、運営ミーティングを私が入らずに保護者メンバーのみで行なってもらうということもその一つで、大人が受け身にならないことが大切です。
自分の子どもの教育を誰かにアウトソースするのではなく、もっと言うと自分の子ども以外のコミュニティ内の他の子どものことも可愛く、その子たち全員の成長が大切だと思える環境を醸成しています。子どもたちを取り巻く大人の変容、マインドセットが重要かと考えています。
4 編集後記
オンライン授業において、参加者が参加したいときに入り、コンテンツの幅も広くするという視点を持つことが大切だと分かりました。オンラインのままで画面の前に居続けることを強要することがなく、入りたくなったら入り、出たくなったら出るという考え方が印象に残りました。この記事がオンラインで授業を実践する先生のお役に立てれば幸いです。
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(文責・編集:EDUPEDIA編集部 清川美空)
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